2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧
桐壺147:おぼしまぎるとはなけれど、おのづから御心うつろひて、こよなうおぼし慰むやうなるも、あはれなるわざなりけり。 かくて帝は桐壺を失った悲しみをすっかり忘れるというわけでもなかったのだが、しかしいつしか気持ちに変化が生まれ、藤壺と語らっ…
桐壺146:かれは人の許し聞こえざりしに、御こころざしあやにくなりしぞかし。 桐壺更衣はもともとの出自からして他の后たちが見許すことができない者であったのに、あいにくと帝の御寵愛がむやみに深かったのが不幸のもとであった。 N君:Apart from the La…
桐壺145:これは、人の御きはまさりて、思ひなしめでたく、人もえおとしめ聞こえ給はねば、うけばりてあかぬことなし。 しかもこちらは桐壺更衣とは異なり、もともとが先帝の姫御子であるから身分も段違いに高い。そんなふうに思って見るせいか、むしろ桐壺…
桐壺144:げに御かたちありさま、あやしきまでぞおぼえ給へる。 なるほどその姿形といい、怪しいほどに桐壺更衣に似ている。 N君: whose figure was just like that of the late Kiritsubo. S先生:Her figure and manners were astonishingly like those o…
桐壺143:ふぢつぼと聞こゆ。 この方が藤壺の女御である。 N君:やっと登場しました。現帝に輿入れした先帝第4皇女=藤壺 こそが近い将来、光源氏=現帝第2皇子=現帝と故桐壺との間に生まれた男子 と不義密通してしまうのです。昔お昼の時間帯にTVでやって…
桐壺142:さぶらふ人々、御後ろみたち、御せうとの兵部卿のみこなど、「かく心細くておはしまさむよりは、内住みせさせ給ひて御心も慰むべく」などおぼしなりて、参らせ給へり。 これには御母后の御殿にお仕えしている女房たちも、また四の宮の兄君の兵部卿…
桐壺141:心細きさまにておはしますに、(帝)「ただわが女みこたちの同じ列(つら)に思ひ聞こえむ」と、いとねんごろに聞こえさせ給ふ。 こうして四の宮も後ろ盾を失って心細い身の上にならざるを得ない。そこで帝は「それならばただ私の女御子(おんなみこ)た…
桐壺140:(母后の言葉つづき)東宮の女御のいとさがなくて、桐壺の更衣のあらはにはかなくもてなされにしためしもゆゆしう」とおぼしつつみて、すがすがしうもおぼしたたざりけるほどに、后もうせ給ひぬ。 あの東宮の母親の弘徽殿という人はひどく意地悪で、…
桐壺139:母后(ははぎさき),「あな恐ろしや。 これを聞いて御母后は胆をつぶす。「まあとんでもない。くわばらくわばら。 N君:The mother was startled at the Emperor's plea for her daughter and said, "I will never accept His offer. It's terrible !…
桐壺138:(典侍から帝への言葉つづき)ありがたき御かたち人になむ」と奏しけるに、「まことにや」と御心とまりて、ねんごろに聞こえさせ給ひけり。 本当に世にも珍らかなほどの美しい方でございますもの」と申し上げると、帝も「本当だろうか」と御心を留め…
桐壺137:母后(ははぎさき)、よになくかしづき聞こえ給ふを、うへに侍ふ内侍(ないし)のすけは、先帝の御時の人にて、かの宮にも親しう参り慣れたりければ、いはけなくおはしましし時より見奉り、今もほの見奉りて、(典侍)「うせ給ひにし御息所の御かたちに似…
桐壺136:慰むやと、さるべき人々参らせ給へど「なづらひにおぼさるるだにいとかたき世かな」と、うとましうのみよろづにおぼしなりぬるに、先帝の四の宮の御かたちすぐれ給へる聞こえ、高くおはします。 お慰めになるかもしれぬと、それなりの姫君たちを入…
桐壺135:年月にそへて、御息所の御ことをおぼし忘るる折りなし。 何年経っても帝は亡き桐壺更衣のことをお忘れになる時がない。 N君:No matter how many years has passed, He never forgot the matters about the late Kiritsubo. S先生:短い作文ですが…
桐壺134:きはことに賢くて、ただ人にはいとあたらしけれど、親王となり給ひなば、世の疑ひ負ひ給ひぬべくものし給へば、宿曜の賢き道にかんがへさせ給ふにも、同じさまに申せば、源氏になし奉るべく、おぼしおきてたり。 若宮は何をさせても抜群の才覚で、…
桐壺133:(帝の心の声続き)我が世もいと定めなきを、ただ人にて、おほやけの御うしろみをするなむ、行くさきも頼もしげなめる事」とおぼし定めて、いよいよみちみちのざえを習はさせ給ふ。 自分が天皇の位にあるのだっていつまでと定め難いのだから、いっそ…
桐壺132:みかど、かしこき御心にやまと相をおほせて、おぼしよりにける筋なれば、今までこの君をみこにもなさせ給はざりけるを「相人はまことにかしこかりけり」とおぼして (帝の言葉)「無品の親王の外戚のよせなきにては、ただよはさじ。 しかし帝はご自身…
桐壺131:おのづから事ひろごりて、もらさせ給はねど、東宮のおほぢおとどなど「いかなることにか」と、おぼし疑ひてなむありける。 そんな大袈裟なことになって、結局この事実は誰もが知るところとなった。帝ご自身は何も漏らされなかったにもかかわらず、…
桐壺130:おほやけよりも、おほくもの賜はす。 これに対して、帝のほうからも、この人相見の高麗人にたくさんの褒美が下された。 N君:Hearing the auspicious event, the Emperor, too, gave a lot of gifts to the foreign master from Kohrai. S先生:the…
桐壺129:ふみなど作りかはして、けふあす帰り去りなむとするに、かくありがたき人に対面したる喜び、帰りては悲しかるべき心ばへを、おもしろく作りたるに、御子もあはれなる句を作り給へるを、かぎりなうめで奉りて、いみじき贈り物どもささげ奉る。 かく…
桐壺128:弁もいと才(ざえ)かしこき博士にて、言ひかはしたることどもなむ、いと興ありける。 右大弁ももとより才覚高い博士なので、この人相見の高麗人とかれこれ言い交わしたことは、いかにも興味深いことであった。 N君:Utaiben, too, was an expert com…
桐壺127:(相人の言葉続き)おほやけの固めとなりて、天下を輔(たす)くるかたにて見れば、またその相たがふべし」と言ふ。 さりながら、帝王ではなくて輔弼(ほひつ)の臣として判じて見ますと、それもまた違う、と、こう占なわれますなあ」と言う。 N君:When …
桐壺126:(相人)「国の親となりて、帝王の上(かみ)なき位に昇るべき相おはします人の、そなたにて見れば、乱れ憂ふることやあらむ。 「このお方は国の親ともなり、帝王の位に昇るという相がございますが、といって、そういう方として見ますと、国は乱れ民は…
桐壺125:御うしろみだちて仕(つこ)うまつる右大弁の子のやうに思はせて、ゐて奉るに、相人驚きて、あまたたびかたぶきあやしぶ。 後見人のような形でお世話している右大弁という臣下の子というように見せかけて連れていったところ、この人相見の名人はたい…
桐壺124:そのころ高麗人(こまうど)の参れるなかに、かしこき相人ありけるを聞こしめして、宮のうちに召さむことは宇多のみかどの御いましめあれば、いみじうしのびて、この御子を鴻臚館(こうろかん)につかはしたり。 その時分に高麗人が来朝したことがあっ…
桐壺123:わざとの御学問はさるものにて、ことふえのねにも雲居をひびかし、すべて言い続けば、ことごとしううたてぞなりぬべき人の御さまなりける。 若宮が漢学などの本格的な学問に優れていたのは当然のこととして、その他の優艶な技芸の方面、琴や笛など…
桐壺122:今よりなまめかしう恥づかしげにおはすれば、いとおかしう、うちとけぬ遊び草に、誰もだれも思ひ聞こえ給へり。 この若宮が子供ながらすでに美男の色気のようなものを漂わせて、見るのもこちらが恥づかしくなるほどの容姿であったので、女たちは見…
桐壺121:御かたがたも隠れ給はず。 この他の妃たちもまだ幼い若宮から身を隠すということをせずにいた。 N君:この部分はどういう意味なのか考えてみました。平安時代の王朝の女性たちは、扇子とか几帳とかを使ってやたらと男の視線から身を隠すのが普通だ…
桐壺120:をんな御子たちふとところ、この御はらにおはしませど、なずらひ給ふべきだにぞなかりける。 この弘徽殿女御の腹には、一の宮の他に女の御子が二人あったが、いずれも若宮の美しさの前にはまるで比較にもならなかった。 N君:She had two other dau…
桐壺119:いみじきもののふ、あたかたきなりとも、見てはうちゑまれぬべきさまのし給へれば、えさし放ち給はず。 さすがに荒くれの武士でも、仇敵であったとしても、この君を見ては、ついつい口元が綻ぶというほどのかわいらしさゆえ、さしもの弘徽殿女御ま…
桐壺118:(帝)「今は誰も誰もえ憎み給はじ、母君なくてだにらうたうし給へ」とて、弘徽殿などにも、わたらせ給ふ御ともには、やがて御簾のうちに入れ奉り給ふ。 「こうも美しく聡明な若宮をもはや誰も憎むということはあるまい。なにしろ母君を亡くされてい…