2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧
百人一首No.51. 藤原実方朝臣:かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを せめて、私がこんなにも恋い慕っていることだけでもあなたに言いたいのですが、言うことができません。伊吹山のさしも草ではないが、それほどまでとは御存知ないで…
百人一首No.50. 藤原義孝:君がため惜しからざりし命さへ 長くもがなと思ひけるかな あなたのためにはたとえ捨てても惜しくないと思っていた私の命ですが、(逢瀬を遂げた今となっては)、長くありたいと願うようになりました。 N君:歌全体の意味は、なんか分…
百人一首No.49. 大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ):御垣守(みかきもり)衛士(えじ)の焚く火の夜は燃え 昼は消えつつものをこそ思へ 衛士(宮中の門を警護する兵士)の焚く火が夜燃えて昼消えるように、私の恋心も夜に燃え昼に消え入るように沈んで、こういう…
百人一首No.48. 源重之:風をいたみ岩打つ波のおのれのみ くだけてものを思ふころかな 風が激しいので岩に打ち当たる波がひとりだけで砕け散るように、(彼女は平気なのに)私だけが心も砕けるばかりに物事を思い悩む今日この頃であるなあ。 N君:「名詞+を+…
百人一首No.47. 恵慶法師(えぎょうほうし):八重葎(やえむぐら)茂れる宿のさびしきに 人こそ見えね秋は来にけり 幾重にも蔓草が生い茂っている家の寂しい所に訪ねて来る人はいないが、秋はやってきていたのだった。 N君:係り結びがそこでおわらずに文が続い…
百人一首No.46. 曾根好忠(そねのよしただ):由良のとを渡る舟人かぢを絶え 行くえも知らぬ恋の道かな 由良の瀬戸を漕ぎ渡る舟人が、舵がなくなって行く先も分からず漂うように、これから行く先の分からない恋の道だなあ。 N君:由良川は京都府の真ん中あたり…
百人一首No.45. 謙徳公:あはれともいふべき人は思ほえで 身のいたずらになりぬべきかな 私のことをかわいそうだと言ってくれそうな人は思い浮かばず、きっと私はひとり虚しく死んでいくに違いないのだなあ。 N君:えらく negative な歌です。作者は何か悲し…
百人一首No.44. 中納言朝忠:逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし もしも逢うことが絶対にないのであればかえってその方が、あの人のつれなさも我が身の拙い運命も恨むことがなくていいのになあ。(実際には稀ながら逢うチャンスが…
百人一首No.43. 権中納言敦忠(ごんちゅうなごんあつただ):逢ひ見てののちの心に比ぶれば 昔はものを思はざりけり 遂にあの人と逢瀬を遂げたが、その後の恋しい気持ちに比べれば以前の恋心などは何も思っていなかったのと同じであったなあ。 N君:「逢ひ見る…
百人一首No.42. 清原元輔(きよはらのもとすけ):契りきなかたみに袖をしぼりつつ 末の松山波越さじとは 約束したなあ。お互いに涙で濡れた袖をしぼっては、末の松山を波が越さないのと同様に、二人の心が変わらないことを。 N君:「末の松山」について調べま…
百人一首No.41. 壬生忠見(みぶのただみ):恋すてふわが名はまだき立ちにけり 人しれずこそ思ひそめしか 恋をしているという私の噂が早くも立ってしまった。誰にも知られないように心ひそかに思い初めていたのに。 N君:「まだき」は副詞で「早くも」「もう」…
百人一首No.40. 平兼盛(たいらのかねもり):しのぶれど色に出でにけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで 心の中にこらえてきたけれどついつい私の顔色に出てしまった。私の恋は「恋のもの思いでもしているのですか?」と他人が私に問いかけるほどになってい…
百人一首No.39. 参議等:浅芽生(あさじふ)の小野の篠原しのぶれど あまりてなどか人の恋しき 浅芽の生えている小野の篠原のしののように、忍び続けて我慢してはきたけれども、どうしてあの人のことがこんなにも恋しいのだろうか。 N君:「篠原」までが序詞で…
百人一首No.38. 右近:忘らるる身をば思はず誓ひてし 人の命の惜しくもあるかな 忘れ去られる私自身のことは何とも思わない。ただ「いつまでも愛しているよ」と神かけて私に誓ったあの人が、その誓いを破ったことで神罰を受けて命を落とすことになろうとは。…
百人一首No.37. 文屋朝康(ふんやのあさやす):白露に風の吹き頻(し)く秋の野は 貫き止めぬ玉ぞ散りける 白露に風がしきりに吹き付ける秋の野は、緒で貫き止めていない玉が散り乱れているようであったなあ。 N君:第458回で出てきた「打消助動詞ず連体形ぬ」…
百人一首No.36. 清原深養父(きよはらのふかやぶ):夏の世はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいづこに月やどるらむ 夏の夜はまだ宵の口と思っている間に明けてしまったので、いったい雲のどのあたりに月は宿をとっているのだろうか。 N君:あまりにも短い夏の夜を…
百人一首No.35. 紀貫之:人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける 人というものはねえ、さあ、心なんかわかりゃしませんよ。昔馴染みの土地(長谷寺)では梅の花だけが変わらず同じ香りで匂うのですけれどねえ。 N君:ニヒルな男紀貫之の登場です…
百人一首No.34. 藤原興風(ふじわらおきかぜ):誰をかも知る人にせむ高砂の 松も昔の友ならなくに いったい誰を親しい友人にしようか、長寿の高砂の松も昔の友ではないのだから。 N君:「ならなくに」は「~ではないのに」という言い訳めいた言い方で、No.14 …
百人一首No.33. 紀友則(きのとものり):ひさかたの光のどけき春の日に 静心(しずこころ)なく花の散るらむ 陽がのどかにさす春の日だというのに、桜の花は落ち着いた心がないから次々と散っているのだろう。 N君:枕詞「ひさかたの」が「光」にかかっています…
百人一首No.32. 春道列樹(はるみちのつらき):山川(やまがわ)に風のかけたるしがらみは 流れもあへぬ紅葉なりけり 谷川に風が掛けた柵とは、実は完全には流れ去ることができないでいる紅葉だったのだなあ。 N君:「あふ+打消し」は「完全には~しきれない」…
百人一首No.31. 坂上是則(さかのうえのこれのり):朝ぼらけ有明の月とみるまでに 吉野の里にふれる白雪 夜がほのかに明るくなり、有明の月かと思うくらいに、吉野の里に白々と降っている雪だなあ。 N君:本歌作者是則さんの5代前の御先祖が有名な坂上田村麻…
百人一首No.30. 壬生忠岑(みぶのただみね):有明のつれなく見えし別れより あかつきばかり憂きものはなし 明け方の月が素っ気なく見えた、その素っ気ない別れ以降、私は「(宵闇よりも)明け方こそが最も辛い」と思うようになった。 N君:「つれなく見えし別れ…
百人一首No.29. 凡河内躬恒(おほしこうちのみつね):心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花 あて推量でもし折れるものならば折ってみようか、初霜で見分けがつかなくなった白菊の花を。 N君:第444回に登場した文屋康秀は三河国掾でしたが、…
百人一首No.28. 源宗干朝臣(みなもとのむねゆきあそん):山里は冬ぞさびしさまさりける 人目も草もかれぬと思えば 山里は冬が特に寂しさが勝るものだったなあ。人目も離(か)れ草も枯れてしまうと思うので。 N君:「かれ」のシャレですね、こういうのを掛詞(…