2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧
帚木148・149・150・151・152・153:(左馬頭の言葉続き)今、さりとも、ななとせ余りが程におぼし知り侍りなむ。なにがしが賤しき諫(いさ)めにて、すきたわめらむ女に心おかせ給へ。あやまちして、見む人のかたくななる名をも立てつべきものなり」と戒(いまし…
帚木145・146・147:(左馬頭の言葉続き)このふたつの事を思う給へ合はするに、若き時の心にだに、なほさやうにもて出でたることは、いとあやしく頼もしげなく、おぼえ侍りき。今よりのちは、ましてさのみ思ひ給へらるべき。御心のままに、折らば落ちぬべき萩…
帚木143・144:(左馬頭の言葉続き)ただ時々うち語らふ宮仕へ人などの、あくまでざればみ好きたるは、さても見る限りはをかしくもありぬべし。時々にてもさる所にて忘れぬよすがと思う給へむには、頼もしげなくさしすぐいたり、と心おかれて、その夜の琴にこ…
帚木142続き:(左馬頭の言葉続き)女いたう声つくろひて、(女)『木枯らしに吹きあはすめる笛の音を 引きとどむべき言の葉ぞなき』と、なまめきかはすに、憎くなるをも知らで、また筝の琴を盤渉調に調べて、今めかしく掻いひきたる爪音、かどなきにはあらねど…
帚木140・141・142:(左馬頭の言葉続き)男いたくめでて簾(すだれ)のもとに歩み来て、(男=殿上人)『庭の紅葉こそ踏み分けたる跡もなけれ』などねたます。菊を折りて(男)『琴の音も月もえならぬ宿ながら つれなき人をひきやとめける、わろかめり』など言ひて…
帚木138・139:(左馬頭の言葉続き)懐なりける笛取り出でて吹き鳴らし『影も良し』など、つづりし謡ふほどに、よくなる和琴を調べ整へたりける、うるはしく掻き合はせたりしほど、けしうはあらずかし。律の調べは、女のものやはらかに掻き鳴らして、簾の内よ…
帚木136・137:(左馬頭の言葉続き)もとよりさる心をかはせるにやありけむ、この男いたくすずろぎて、門近き廊の簀の子(すのこ)だつものに尻かけて、とばかり月を見る。菊いと面白くうつろひわたり、風にきほへる紅葉の乱れなど、あはれと、げに見えたり。 す…
帚木135:(左馬頭の言葉続き)神無月の頃ほひ、月おもしろかりし夜、うちよりまかで侍るに、ある上人(うへひと)きあひて、この車に合ひ乗りて侍れば、大納言の家にまかりとまらむとするに、この人言ふやう、(この殿上人)『こよひ人待つらむ宿なむ、あやしく心…
帚木134:(左馬頭の言葉続き)この人失せて後、いかがはせむ、あはれながらも過ぎぬるはかひなくて、しばしばまかり慣るるには、少しまばゆく、艶に好ましきことは、目につかぬ所あるに、うち頼むべくには見えず、かれがれにのみ見せ侍るほどに、しのびて心か…
帚木132・133:(左馬頭)「さてまた同じ頃、まかりかなひし所は、人もたちまさり、心ばせ、まことにゆゑありと見えぬべく、うち読み走り書きかいひく爪音手つき口つき、皆たどたどしからず、見聞きわたり侍りき。見る目も事もなく侍りしかば、このさがな者を…
帚木128・129・130・131:中将、「そのたなばたの裁ち縫ふかたをのどめて、長き契りにぞあえまし。げにその竜田姫の錦には、またしくものあらじ。はかなき花紅葉と言ふも、をりふしの色あひつきなく、はかばかしからぬは、露のはえなく、消えぬるわざなり。…
帚木126・127:(左馬頭の言葉続き)ひとへにうち頼みたらむ方は、さばかりにてありぬべくなむ思う給へ出でらるる。はかなきあだごとをも、まことの大事をも、言ひ合はせたるに、かひなからず、竜田姫と言はむにもつきなからず、七夕の手にも劣るまじく、その…
帚木124・125:(左馬頭の言葉続き)の中の(左馬頭の心中)『さりとも、たえて思ひ放つやうはあらじ』と思う給へて、とかく言ひ侍りしを、そむきもせず、たづねまどはさむとも隠れしのびず、かがやかしからず、いらへつつ、ただ(女)『ありしながらは、えなむ見…
帚木123:(左馬頭の言葉続き)艶なる歌をも詠まず、気色ばめる消息(せうそこ)もせで、いとひたやごもりになさけなかりしかば、あへなき心地して、さがなく許しなかりしも、(女の心中)『我をうとみね』と思ふかたの心やありけむと、さしも見給へざりし事なれど…
帚木121・122:(左馬頭の言葉続き)さればよと心おごりするに、さうじみはなし。さるべき女房ばかり泊まりて、(女房)『親の家にこのよさりなむわたりぬる』と答え侍り。 ああやっぱりなあ、とその気になって入ってみると、なんのことはない、本人はいやしない…
帚木120:(左馬頭の言葉続き)の中で(左馬頭の心中)『うちわたりの旅寝すさましかるべく、気色ばめるあたりは、そぞろ寒くや』と思う給へしかば、いかが思へると、気色も見がてら、雪をうちはらひつつ、なま人わろく、爪食はるれど、(左馬頭の心中)『さりとも…
帚木119:(左馬頭の言葉続き)の中で(左馬頭から女への歌)『手を折りてあひみしことを数ふれば これひとつやは君がうきふし、、、え恨みじ』など言ひ侍れば、さすがにうち泣きて、(女から左馬頭への返歌)『うきふしを心ひとつに数え来て こや君が手を別るべき…
帚木116続き・117・118:(左馬頭の言葉続き)腹立たしくなりて、にくげなることどもを言ひはげまし侍るに、女もえおさめぬすぢにて、指(および)ひとつを引き寄せて食ひて侍りしを、おどろおどろしくかこちて、(左馬頭から女への文句)『かかる疵さへつきぬれば…
帚木114・115・116:(左馬頭から女への文句続き)行く先長く見えむと思はば、辛きことありとも念じて、なのめに思ひなりて、かかる心だに失せなば、いとあはれとなむ思ふべき。人なみなみにもなり少しおとなびむにそへて、また並ぶ人なくあるべきやう』など、…
帚木111・112・113:(左馬頭の言葉続き)そのかみ思ひ侍りしやう、(左馬頭の心中)『かうあながちに従ひおぢたる人なめり。いかで、こるばかりのわざしておどしてこの方も少しよろしくなりさがなさもやめむ』と思ひて、(再び左馬頭の心中)『まことに憂しなども…
帚木110:(左馬頭の言葉続き)この女のあるやう、もとよりもとより思ひいたらざりける事にも、いかでこの人のためにはと無き手をいだし、おくれたるすぢの心をも、なほくちをしくは見えじと思ひはげみつつ、とにかくにつけて物まめやかにつゆにても心にたがふ…
帚木108・109:(左馬頭)「はやう、まだいと下﨟に侍りし時、あはれと思ふ人侍りき。聞こえさせつるやうに、かたちなどいとまほにも侍らざりしかば、若きほどのすき心には、この人をとまりにもとも思ひとどめ侍らず、よるべとは思ひながら、さうざうしくて、…