2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧
帚木245・246・247・248:守出で来て燈籠かけそへ、火あかくかかげなどして、御果物ばかり参れり。(源氏)「とばり帳もいかにぞは。さるかたの心もとなくては、めざましきあるじならむ」とのたまへば、(守)「なによけむ、とも、え承らず」と、かしこまりてさ…
帚木241・242・243・244:ことなる事なければ聞きさし給ひつ。式部卿の宮の姫君に、あさがほ奉り給ひし歌などを、少し頬ゆがめて語るも聞こゆ。(源氏)「くつろぎがましく歌誦(ずん)じがちにもあるかな。なほ見劣りはしなむかし」とおぼす。 しかしこの若い女…
帚木239・240:(女房達)「いたうまめだちて、まだきにやむごとなきよすが、定まり給へるこそ、さうざうしかめれ。されど、さるべきくまにはよくこそ隠れあり給ふなれ」など言ふにも、おぼす事のみ心にかかり給へば、まづ胸つぶれて、かやうのついでにも、人…
帚木237・238:さすがにしのびて笑ひなどする気配、ことさらびたり。格子を上げたりけれど、守「心なし」と、むづかりて降ろしつれば、火灯したるすきかげ、障子の上よりもりたるに、やをら寄り給ひて「見ゆや」とおぼせど、ひまもなければ、しばし聞き給ふ…
帚木233・234・235・236:人々渡殿より出でたる泉にのぞき居て酒飲む。あるじも肴求むと、こゆるぎのいそぎありくほど、君はのどやかに眺め給ひて、「かの中の品に取り出でて言ひし、このなみならむかし」とおぼしいづ。思ひあがれる景色に聞き置き給へる娘…
帚木228・229・230・231・232:守、「にはかに」とわぶれど、人も聞き入れず。寝殿のひんがしおもて払ひあけさせて、かりそめの御しつらひしたり。水の心映えなど、さるかたにをかしくしなしたり。ゐなか家だつ柴垣して前栽など心とめて植ゑたり。風涼しくて…
帚木225・226・227:紀の守に仰せ言たまへば、うけたまはりながらしりぞきて、(紀伊守)「伊予の守の朝臣の家に、つつしむこと侍りて、女房なむまかり移れる頃にて、せばき所に侍れば、なめげなる事や侍らむ」と、下に嘆くを聞き給ひて、(源氏)「その人ぢかか…
帚木222・223・224:(源氏)「いとよかなり。なやましきに牛ながら引き入れつべからむ所を」とのたまふ。しのびしのびの御かたたがえどころは、あまたありぬべけれど、久しく程へて渡り給へるに、かたふたげて、ひきたがへ、ほかざまへとおぼさむは、いとほし…
帚木216・217・218・219・220・221:暗くなるほどに、(女房)「今宵なか神うちよりは塞がりて侍りけり」と聞こゆ。(源氏)「さかし。例は忌み給ふかたなり。二条の院にも同じすぢにて、いづくにかたたがえむ、いとなやましきに」とて、おほとのごもれり。いと…
帚木213・214・215:おとども渡り給ひて、うちとけ給へれば、御几帳へだてておはしまして、御物語り聞こえ給ふを、(源氏)「あつきに」と苦み給へば、人々笑ふ。(源氏)「あなかま」とて、脇息に寄りおはす。いと安らかなる御ふるまひなりや。 やがて舅の左大…
帚木211・212:おおかたの気色、人の気配も、けざやかに気高く、乱れたる所混じらず。(源氏)「なほこれこそは、かの人々の捨てがたく取り出でし、まめ人には頼まれぬべけれ」とおぼすものから、あまりうるはしき御ありさまの、とけがたく恥づかしげに思ひ静…
帚木207・208・209・210:(源氏)「これに、たらず、また、さしすぎたることなく、ものし給ひけるかな」と、ありがたきにも、いとど胸ふたがる。いづかたよりはつともなく、はてはてはあやしきことどもになりて、明かし給ひつ。からうじて今日は日の景色もな…
帚木205・206:(左馬頭の言葉続き)よろづの事に、などかはさても、とおぼゆる折りから時々、思ひ分かぬばかりの心にては、よしばみ情だだざらむなむ、めやすかるべき。すべて心に知れらむ事をも知らず顔にもてなし、言はまほしからむ事をも、ひとつふたつの…
帚木204:(左馬頭の言葉続き)さるべき節会など、さつきの節に急ぎ参るあした、なにのあやめも思ひしづめられぬに、えならぬ根をひきかけ、九日の宴に、まづ難き詩の心を思ひめぐらして、いとまなき折りに、菊の露をかこち寄せなどやうの、つきなきいとなみに…
帚木201・202・203:(左馬頭の言葉続き)歌詠むと思へる人の、やがて歌にまつはれ、をかしき故事をも初めよりとりこみつつ、すさまじきをりをり、よもかけたるこそ、ものしき事なれ。返しせねば情なし。えせざらむ人は、はしたなからむ。 そうかと思うと和歌…
帚木198・199・200:(左馬頭の言葉続き)さるままには、まんなを走り書きて、さるまじきどちの女ぶみに、なかばすぎて書きすすめたる、あなうたて、この人のたをやかならましかば、と見えたり。ここちにはさしも思はざらめど、おのづから、こはごはしき声に読…
帚木194・195・196・197:(左馬頭)「すべて男も女もわろ者はわづかに知れる方のことを残りなく見せ尽くさむ、と思へるこそ、いとほしけれ。三史五経の道々しき方をあきらかにさとりあかさむこそ愛敬なからめ。などかは女と言はむからに、世にあることの、お…
帚木191・192・193:(頭中将・左馬頭・光源氏)「いづこの、さる女あるべき。おいらかに鬼とこそむかひ居たらめ。むくつけきこと」と、つまはじきをして、いはむかたなし、と式部をあはめ憎みて、「すこしよろしからむことを申せ」と責め給へど、(式部)「これ…
帚木190:(式部の言葉続き)ただ、(式部)『承りぬ』とて立ち出で侍るに、さうざうしくやおぼえけむ、(女)『この香うせなむ時、立ち寄り給へ』と高やかに言ふを、聞き過ぐさむもいとほし、しばらく休らふべきにはた侍らねば、げにそのにほひさへはなやかに立ち…
帚木187・188・189:(式部の言葉続き)声もはやりかにて言ふやう、『月ごろふびやう重きに堪へかねて、極熱の草薬を服して、いと臭きによりなむ、え対面たまはらぬ。まのあたりならずとも、さるべからむ雑事らは、うけたまはらむ』と、いとあはれに、むべむべ…