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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第372回 2022.3/25

帚木211・212:おおかたの気色、人の気配も、けざやかに気高く、乱れたる所混じらず。(源氏)「なほこれこそは、かの人々の捨てがたく取り出でし、まめ人には頼まれぬべけれ」とおぼすものから、あまりうるはしき御ありさまの、とけがたく恥づかしげに思ひ静まり給へるを、さうざうしくて中納言の君、中務などやうの、おしなべたらぬ若人どもに、たはぶれごとなどのたまひつつ、暑さに乱れ給へる御ありさまを、(女房たち)「見る甲斐あり」と思ひ聞こえたり。

左大臣邸に着いてみると、その邸内のありさまといい、また妻の葵上の様子といい、まことに端然として気品に溢れ、どこにも乱雑な所がない。「ああ、やっぱりこの人こそは、あの左馬頭たちが、捨てがたい女として取り立てて論じていた実直な妻、頼りになる女というのにあたるのだろうなあ」とは思うものの、そうはいっても正直な気持ちは、あまりにも端正すぎて堅苦しく、相手をするほうが恥ずかしくなるほどおっとりと澄ましかえっているのを、源氏はどこか物足りなく受け取ってしまう。お付きの女房たち、たとえば中納言の君、中務などという美しく若い女房衆を相手に、源氏はなにくれと冗談などを言いつつ、自分は暑さのためもあって着物をゆるゆるとくつろげて着ている、その様子は、女房たちから見れば「いかにも見る甲斐があるなあ」と思わずにはいられない。

N君:「ものから」は接続助詞で、逆接を表します。「さうざうし」は、騒々しい、ではなくて、寒々しい、つまり「心が寂しい、何か物足りない」という感じです。

Arriving at the place, he could tell that the appearance in the premise as well as the attitude of his legal wife, Aoi-no-ue, were indeed elegant.  He could not find anything disordered there.  He said to himself, "She is definitely a woman who is steady and reliable as Samanokami et. al. discussed."  To tell the truth, however, he was fed up with her extremely ordered behavior.  Also he was unsatisfied with her dealing with everything in an indifferent way to the extent that he felt embarrassed about her affected manner.  Therefore he diverted his attention from her to young and beautiful ladies-in-waiting, for example, Chunagon-no-kimi or Nakatsukasa.  Exchanging suggestive jokes with them, he loosened his clothes and left himself disheveled out of the heat.  It will be fairly said that his seductive look was worth watching for the ladies-in-waiting.

S先生:今日は上出来です。第5文の終わりのほうに出てくる形容詞 affected は、もともと”何かに影響を受けた”の意なので「災害にやられた」「病気に冒された」「悲しみに心をうちひしがれた」のような場面で使われることが多いのですが、これは affect「影響する」という動詞から来ています。ところが affect にはもうひとつ、「人が~のふりをする」という悪い意味の動詞があって、その過去分詞~形容詞として affected「気取った、見せかけの」のような意があります。N君がここで使っている affected は後者の例と考えられますが、これはかなりレアな使い方というべきでしょう。間違いではないが、もう少し別の分かりやすい表現を考えてほしいところでした。第7文の Exchanging suggestive jokes with ~  の形容詞 suggestive はここでは大ヒットでした。日本語では「思わせぶりな」とでも訳すのでしょうか、次に出てくる seductive とまではいかないものの、男女間の妖しさをほんのちょっぴり匂わせていて秀逸でした。同じ第7文の終わりのほうに出てくる out of はここではいただけない。動機ではなく「暑さ」という理由を述べているのですから on account of the heat くらいで良いと思います。

When he arrived at the Minister's residence, he found it extremely neat and tidy.  His wife, Aoi-no-Ue, also looked noble and dignified.  Nowhere did he find a trace of disorder.  He thought she might be the very woman that Sama-no-Kami and his companion had said was an honest and reliable one.  But to tell the truth, she was too graceful and serious to deal with.  The way she put on airs made him feel rather embarrassed and dissatisfied.  Attended upon by young and beautiful ladies-in-waiting, he joked with them about this and that.  It was so hot that he wore his kimono loosely.  Seeing that he was in such a relaxed way, they could not but feel enchanted.

N君:第3文の語順について解説お願いします。

S先生:Nowhere did he find a trace of disorder.「乱れた痕跡が微塵もなかった」ですね。副詞 Nowhere を強調する目的で文頭に出したために、助動詞 did が引っ張られて出てきて、次に主語 he が来て、その後に found からさっきの did を差し引いた find が来た、という仕組みです。副詞を強調するための一つの定型です。しかしこの文で注目してほしいのはむしろ a trace of ~ の方です。否定詞+trace が出てきたら「跡形もない」「微塵もない」という感じになります。この trace のところが空欄になっていたらN君は trace を入れる自信がありますか? なんでもないように見えて実はこういう所が大切なのです。たくさん英文を読んでいるかどうかは、こういう所で一発で分かってしまいます。

N君:第4文の that 以下の構成がよく分かりません。

S先生:He thought she might be the very woman that (Samanokami and his companion had said) was an honest and reliable one. のように、Smanokami ~ said にカッコをかぶせてみてください。「葵上こそは、左馬頭たちが言っていたような、実直で頼りになる女性そのものだなあ、と源氏は思った」となります。カッコ部分を挿入句としてとらえましょう。