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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第380回 2022.4/2

帚木239・240:(女房達)「いたうまめだちて、まだきにやむごとなきよすが定まり給へるこそ、さうざうしかめれ。されど、さるべきくまにはよくこそ隠れあり給ふなれ」など言ふにも、おぼす事のみ心にかかり給へば、まづ胸つぶれて、かやうのついでにも、人の言ひもらさむを聞きつけたらむ時、など、おぼえ給ふ。

「ねえねえ、なんだかすごく真面目ぶってね、まだお若いのにもう奥様がいらっしゃるんですってよ、つまんないわねえ。だけどほかにもあちこちに隠れてお通いになってるって噂よ、ふふふ」などと埒もないことを言い合っているのを聞くにつけても、源氏はドキッとしてしまう。もしや藤壺のことが噂になっているのではないかと気にかかるからである。万一こんな調子で自分と藤壺の隠し事の噂が、ほかならぬ藤壺の耳にでも入ったらいったいどう思われるだろうか、などと思ってもみる。

N君:いろんな意味で”壁に耳あり障子に目あり”ですね。

”Say, he apparently pretends to be somewhat serious.  I hear he has already married in spite of his youth.  How discouraging !  But it is said that he takes to visiting here and there secretly in order to meet different women."  Ladies-in-waiting were talking about this kind of groundless gossip with each other.  Genji was startled to hear that, because  he was afraid lest the relation between him and Lady Fujitsubo should come to light.  "If the rumor about our secret love, exaggerated in their vulgar way, should reach the ears of Fujitsubo herself, she would be at a loss what to do.  It's a mess."  Genji felt uneasy.

S先生:全体的に良い出来です。第1~4文の女房達の噂話は、確かにしっかり作文できているのですが、会話文としては硬すぎる印象なので、もっとくだけた言い方を研究すべきでしょう。第4文の take to+動名詞「~にふける、~を習慣にしている」は良い選択でした。第6文の be afraid lest ~ は難しい言い方を持ってきました。普通 lest は「~するといけないから」を表す古風な接続詞で、大修館の辞書には I took my umbrella lest it (should) rain. とか、Make a note of it lest you (should) forget. というような例文が出ています。ここまで知っていればだいたいOKなのですが、今回のN君の作文はこれを越えてくる用法でした。be afraid, be worried, fear, be anxious のような心配を表す語のあとに lest節がくっついて「~しはすまいかと」という具合に、より一層懸念を強める言い方となります。that節よりもビクビク度が上がる、と考えてもらって結構です。「気が気ではない」といったニュアンスとなります。ここでも源氏の心境はまさに「気が気ではない」わけで、be afraid lest ~ を使ったことで生き生きとした作文になりました。ちなみに ~ の部分には仮定法現在が使われます。should を持ってくれば何も問題ないですが、should を省略する場合、たとえ三単現の文でも動詞は原形です。

"He pretends to be dreadfully serious, doesn't he ?  Still so young, he has a wife, they say.  How disappointing !  But I hear he is visiting one lady after another secretly."  Genji was startled to hear them talking about such silly things with one another.  He was worried that they were gossiping about the relation between him and Lady FujitsuboWhat if she should hear the rumor that they were making love secretly ?

N君:最後の第7文は「二人が愛し合っているという噂を、もしも藤壺様当人が聞いてしまったとしたら、いったいどうなるの !?」という意味だと思うのですが、なんだか変な感じです。

S先生:直接話法や間接話法はいづれも客観的で、N君もよくわかっていると思いますが、この文は描出話法 Represented Speech といって、直接と間接の中間的な言い方 です。いわば作者が作中人物(この場合は源氏)と一体化した話法であって、文学作品に時々見られますので、これからも出会うでしょう。例文を挙げてみましょう。He said to himself, "What if she should hear the rumor that we are making 、、、?" は直接話法ですが、これに対して He wondered what if she should hear the rumor that they were making 、、、" は間接話法です。これらに対して描出話法では「伝達部を取り除き、文の構造は直接話法のままで、人称と時制を間接話法のように作り変える」ということになります。その結果私の第7文のように What if she should hear the rumor that they were making 、、、? となります。このようにすると、直接・間接話法に比べてどこか余韻が感じられるようになりますね。もっと簡潔な例を示します。

直接:He said to her, "What are you thinking of ?"

間接:He asked her what she was thinking of.

描出:What was she thinking of ?       感じが出ているでしょう? もう一ついきます。

直接:He said, "May God pardon me !"

間接:He prayed that God might pardon him.

描出:Might God pardon him !

結局「思い余って筆者が言っている」と考えてもらえればよいでしょう。

N君:今日はなんだか世界が広がった気がします。