2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧
古文研究法64-2 枕草子:「あかねさす日に向かひても思ひ出でよ 都は晴れぬながめすらむと」と御手にて書かせ給へる。いみじうあはれなり。さる君を見置き奉りてこそえ行くまじけれ。 「そなたが日向国へ着いたら東から登ってくる太陽に向かってせめて思い出…
古文研究法64-1 枕草子:御乳母(めのと)の大輔(たいふ)のけふ日向へ下るに、賜はする扇どもの中に、片つ方は、日いとうららかに射(さ)したる田舎の館(たち)など多くして、いま片つ方は、京のさるべき所にて雨いみじう降りたるに、(以下次回へ続く) 定子様の…
古文研究法63-2 源氏物語須磨:いと見所ありてしなさせ給ふ。水深う遣(や)りなし植木などして、今は、としづまり給ふ心地、現(うつつ)ならず。かかる旅所ともなく、人さわがしけれども、はかばかしく物をも宣(のたま)ひあはす人しなければ、知らぬ国の心地し…
古文研究法63-1 源氏物語須磨:おはすべき所は、行平の中納言の藻汐(もしほ)垂れつつ詫びける家居(いえゐ)近きわたりなりけり。茅屋(かやや)ども芦(あし)葺(ふ)ける廊(らう)めく屋など、をかしうしつらひなしたり。所につけたる御すまひ、様(やう)変はりて、…
古文研究法62-2 徒然草:孫晨(そんしん)は冬の月に衾(ふすま)なくて藁一束(わらひとつかね)ありけるを、夕にはこれに臥し朝にはをさめけり。唐土(もろこし)の人はこれをいみじと思へばこそ記しとどめて世にも伝へけめ。これらの人は語り伝ふべからず。 孫晨…
古文研究法62-1 徒然草:人は己(おの)れをつづましやかにし奢(おご)りを退けて財(たから)を持たず、世を貪(むさぼ)らざらむこそいみじかるべき。昔より賢(かた)き人の富めるは稀なり。唐土(もろこし)に許由といいつる人は、さらに身にしたがへる蓄えもなくて…
古文研究法61-2 枕草子:よき人の御(おん)ことはさらなり。下衆(げす)などのほどにも親などの愛(かな)しうする子は目立て耳立てられていたはしうこそ覚ゆれ。見る甲斐あるは、ことはり、いかが思はざらむ、と覚ゆ。殊(こと)なることなきはまた、これをかなし…
古文研究法61-1 枕草子:世の中になほいと心憂きものは、人に憎まれむことこそあるべけれ。誰(たれ)てふ物狂ひか、われ人にさ思はれむ、と思はむ。されど自然(じねん)に宮仕え所にも親はらからの中にても、思はるる・思はれぬ、があるぞいとわびしきや。 世…
古文研究法60-2 源氏物語須磨:げにいかに思ふらむ、我が身より親はらから片時たち離れ難く、程につけつつ思ふらむ家を別れてかく惑ひあへる、と思(おぼ)すに、いみじくて、いとかく思ひ沈む様(さま)を心細しと思ふらむ、と思(おぼ)せば、昼はなにくれとたは…
古文研究法60-1 源氏物語須磨:枕を欹(そばだ)てて四方(よも)の嵐を聞き給ふに、浪ただここもとに立ち来る心地して涙落つともおぼえぬに、枕浮くばかりになりにけり。琴を少し掻き鳴らし給へるが、我ながらいとすごう聞こゆれば、弾きさして「恋ひわびて泣く…
古文研究法57-2 枕草子:まいて験者(げんざ)などはいと苦しげなめり。困(こう)じて睡(ねぶ)れば「睡りをのみして」などもどかる。いとところせく、いかにおぼゆらむ。 普通の坊さんでさえこれほど窮屈なのに、まして修験者などはたいそう苦しげに見える。く…
古文研究法57-1 枕草子:思はむ子を法師になしたらむこそ心苦しけれ。ただ木の端(は)などのやうに思ひたるこそ、いと愛(いと)ほしけれ。精進物(さうじもの)のいと悪(あ)しきをうち食ひ寝(い)ぬるをも。若きはものもゆかしからむ。女などのあるところをも、な…
古文研究法56-2 枕草子:女房はすべて年の内うち晦日(つごもり)までもえあらじとのみ申すに、あまり遠くも申しつるかな、げにえしもやあらざらむ、一日(ついたち)などぞ言ふべかりける、と下(した)には思へど、さはれ、さまでなくとも言ひ初(そ)めてむことは…
古文研究法56-1 枕草子:(定子)「これ、いつまでありなむ」と人々にのたまはするに、(女房たち)「十日はありなむ」「十余日(とうよひ)はありなむ」など、ただこのころのほどをある限り申すに、(定子)「いかに」と問はせ給へば、(私=筆者=清少納言)「正月(…
古文研究法55-2 源氏物語若紫:「心はづかしき人住むなる所にこそあなれ。あやしうもあまりやつしけるかな。聞きもこそすれ」など宣(のたま)ふ。清げなる童(わらは)などあまた出で来て閼伽(あか)奉り花折りなどするもあらはに見ゆ。 源氏は「さぞかし素晴ら…
古文研究法55-1 源氏物語若紫:見渡し給へば高き所にて、ここかしこ僧坊どもあらはに見おろさる。「同じ小柴なれど麗(うるは)しうしわたして清げなる家(や)・廊(らう)など続けて木立(こだち)いと由(よし)あるは何人(なにびと)の住むにか」と問ひ給へば、御供…
古文研究法54-2 方丈記:恐ろしき山ならねどフクロウの声を憐れむにつけても、山中の景色、機(をり)につけて尽くることなし。況(いはん)や深く思ひ深く知れらむ人のためには、これにしも限るべからず。 恐ろしい山ではないが、フクロウの声にしみじみと心を…
古文研究法54-1 方丈記:もし夜静かなれば、窓の月に故人を偲び猿の声に袖をうるほす。くさむらの蛍は遠く真木の島の篝火(かがりび)にまがひ、暁(あかつき)の雨はおのづから木の葉吹く嵐に似たり。山鳥のホロホロと鳴くを聞きても父か母かと疑ひ、峯の鹿(か…
古文研究法53 枕草子:清水(きよみず)に籠(こも)りたりしにわざと御使ひして賜はせたりし唐(から)の紙の赤みたるに、草(そう)に「『山近きいりあひの鐘の声ごとに 恋ふる心の数は知るらむ』ものを、こよなの長居や」とぞ書かせ給へる。紙などのなめげならぬ…
古文研究法52-2 蜻蛉日記:ここちにはなほ苦しきあたりなど思ふほどに、人々「督(かう)の殿なりけり」と言ふに、いとあさましういみじ。我が家も築墻(ついひじ)ばかり隔てたれば、さわがしう若き人をもまどはしやしつらむ、いかでわたらむとまどふにしも、車…
古文研究法52-1 蜻蛉日記:清水(きよみず)へまうづる人に忍びて混じりたり。初夜(そや)果ててまかづれば時は子(ね)ばかりなり。ものなどものするほどに、ある者ども「この乾(いぬゐ)の方に火なむ見ゆる、門いでてみよ」など言ふなれば、「もろこしぞ」などぞ…
古文研究法51-2 枕草子:(帝は)馬の命婦(みゃうぶ)をもさいなみて「めのと替へてむ、いとうしろめたし」と仰せらるれば、かしこまりて御前にも出ず。犬は狩り出でて、滝口などして追ひつかはしつ。 帝は馬の命婦にも小言をおっしゃって「猫の世話係を変えよ…
古文研究法51-1 枕草子:朝餉(あさがれひ)の御間にうへおはしますに、御覧じていみじう驚かせ給ふ。猫を御ふところに入れさせ給ひて男(をのこ)どもを召せば、蔵人忠隆・なりなか参りたれば「この翁丸(=犬の名)うち調(てう)じて犬島へつかはせ、ただいま」と…
古文研究法49-2 宇津保物語:三人の人(父母と俊蔭)額をつどへて血の涙を落として、出で立ちてつひに船に乗りぬ。もろこしに至らむとする程に仇(あた)の風吹きて、三つある船、二つは損(そこ)なはれぬ。多くの人沈みぬる中に、俊蔭が船は波斯国(はしこく)に放…
古文研究法49-1 宇津保物語:俊蔭十六歳になる年、もろこし船出だし立てらる。此度(こたみ)は殊(こと)に才(ざえ)賢き人を選びて大使・副使と召すに、俊蔭召されぬ。父母悲しむこと、さらに譬(たと)ふべき方なし。一生に一人有る子なり。かたち、身の才(ざえ)…