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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第626回 2022.12/3

古文研究法63-2 源氏物語須磨:いと見所ありてしなさせ給ふ。水深う遣(や)りなし植木などして、今は、としづまり給ふ心地、現(うつつ)ならず。かかる旅所ともなく、人さわがしけれども、はかばかしく物をも宣(のたま)ひあはす人なければ、知らぬ国の心地して、いとうもれいたく、いかで年月を過ぐさまし、と思(おぼ)しやらる。

光源氏様はこの庭の手入れをたいそう立派にやらせなさる。遣水(やりみず)を深くたたえ木を植えたりなんかして「これでどうやら完成だ」と落ち着いた気持ちは夢みたいだ。こんな出先の家にもかかわらず人がゴタゴタと出たり入ったりする。しかし、ちゃんとした相談相手になる人なんか誰もいないので、外国に居るような気がして憂鬱となり、これからの年月をこの須磨の地でどうやって過ごしたものだろうか、と思うのである。

N君:今日の古文は難解です。「今は」は「さあ完成だ」くらいの意味ですが、これは教えてもらわないと何を言っているのか皆目分かりません。「かかる旅所ともなく」も難しい。「旅所」は「家ではない出先の宿」、「ともなく」は「~にもかかわらず」で英語の in spite of ~ に近い意味です。「人しなければ」の「し」は強意の副助詞です。形容詞「うもれいたし」は、気持ちが晴れ晴れとせずに内に籠っている様子、つまり「憂鬱」の意です。

He made craftsmen repair the garden so that it should look attractive.  Finishing to dig a waterway deep and plant some trees neatly, he felt easy about the final completion of his garden.  He felt relieved indeed as if to be in a dream.  Although this house was  to be used temporarily, it was crowded with people who came to see him indiscreetly.  Among those, however, there was nobody whom he could rely on as a good adviser.  Therefore, feeling lonely and melancholic as if he were in a foreign country, he could not but worry about how he should spend the time from now on in Suma.

S先生:全体的な構成はとても良いです。第5文末の adviser は advisor でもOKです。第6文末の he should spend the time from now on in Suma は色々な意味で変です。まずは過去の文なのに from now on はあり得ません。次に「時+場所」の並びに違和感があります。英語では基本的に「場所+時」の並びになるのが自然であり、He lived in Tokyo then. と書きます。He lived then in Tokyo. は特別に then を強調したい場合に使われるかもしれませんが、一般的ではないです。よってここでも he should spend his days in Suma thereafter くらいが無難でしょう。spend his days までで文章としては完結していて、それに副詞句としての 場所+時 の情報を付け加えるわけです。その時に in Suma を前に置いて thereafter を後に置きましょう、という話です。今回、私の作文の時制を原文通り「歴史的現在」にしてみました。その場合は from now on を使うのが適切なので、私の作文で確かめておいて下さい。

Genji makes his gardener keep the garden beautiful.  Satisfied to see the trees planted completely and the artificial brook in the garden filled with water, he feels composed as if he were dreaming a beautiful dream.  Though he lives there for the time being, he is troubled by lots of imprudent visitors.  Since there are none who(m) he can depend on as an advisor, he feels desolate as though he were living in a foreign country and is worried about how he should live here in Suma from now on.

N君:先生の第2文前半の分詞構文 Satisfied to see the trees planted completely and the artificial brook in the garden filled with water は「植木~遣水」の順番になっていて、原文とは逆になっていますが、これはどういう訳ですか?

S先生:the trees planted completely は軽く、the artificial brook in the garden filled with water は重い。英語では頭でっかちを嫌うので、前に軽いものを置き後ろに重いものを置こうとします。ここでは「原文の順序に背いてまで軽前重後を貫いた」ということですが、それが良いかどうかは別として、それほどまでに軽前重後にこだわるのが英語、ということを知っていただきたいと思ってこのように書きました。日本語ではこのようなことはありませんよね。

N君:先生がウッカリして順番を間違えたのかな、と思っていましたが、そんな深い意味があったとは驚きました。英語の軽前重後は大切なことなんですね。

S先生:軽前重後で思い出しましたが「名前動後」というのもあります。一つの単語に名詞と動詞がある場合、例えば record 「記録、~を記録する」では、発音する時の強勢(アクセント)が、名詞なら前・動詞なら後 に来ます。こういう例はいくらでもあって、たとえば digest「要約、消化する」、 conflict「諍い、衝突する」、 insult「侮辱、侮る」 などなどです。