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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第363回 2022.3/16

帚木187・188・189:(式部の言葉続き)声もはやりかにて言ふやう、『月ごろふびやう重きに堪へかねて、極熱の草薬を服して、いと臭きによりなむ、対面たまはら。まのあたりならずとも、さるべからむ雑事らは、うけたまはらむ』と、いとあはれに、むべむべしく言ひ侍り。いらへになにとかは。

で、なにやらせわしない声でこんなことを申します。『私はここ数か月、風病がたいそう重症になりましたことに堪えかねて、ニンニクを服しましたにつき、まことに悪臭が致しますので対面することができません。まのあたりに拝眉致さずとも、雑々の御用は然るべき召使いどもが承ります』と、まことに殊勝にかつ四角張って申します。こうなると、私のような無学者はどう答えてよいものか、見当もつきません。

N君:頭の良い物知り女は、言い訳ひとつとっても一味違いますね。それと、平安時代からニンニクが薬として使われていたとは驚きです。

Then she said hurriedly, 'I have seriously suffered from neurosis since several months ago.   For the treatment I have taken some medicine made of garlic. I would like to avoid facing you directly because of my awful odor.  We don't have to face each other because my servants are in charge of trivial business.'  The way she said was praiseworthy but rigid.  Overwhelmed by her prim attitude, I was at a loss what to reply because I didn't have enough knowledge equal to her.  

S先生:全体的にまずまずですが、第1文の neurosis「神経症」は違うでしょう。なんの病気かはっきりしませんが、ここでは「風邪」くらいに考えておきましょう。ニンニクを服用するくらいですから、神経症ではなくて風邪のほうが話が通ります。それから第6文の prim は「女性が取り澄ました様子」を表す形容詞で、ここにはよく合っていると思います。prime とは違う単語ですね。

She said in a restless voice, 'I have been suffering from a heavy cold these few months and taking garlic to get rid of it.  I smell so bad that I must abstain from meeting you.  Even if I can't see you face to face, I will have my servants do necessary things for you.'  Her words were very polite but formal.  I, an uneducated man, did not know at all how to answer her.

N君:注目しておくべき言い方をピックアップしておきます。第1文 get rid of ~「~を取り除く」、第2文 abstain from ~「~をやめる、よす」、第3文の have+O+原形、は緩い使役動詞としてのhaveの用法であり「Oに~してもらう」の意ですね。

S先生:今日は少し早く終わったので knowledge という単語について英作談義をしてみましょう。誰でも「知識」という意味を知っているでしょうが、もう一歩進んで「認識、理解」という意味があることをここで確認しておきましょう。I crept out without the knowledge of my wife. あるいは without my wife's knowledge. でも良いですが、これは「女房に黙って抜け出してきた」の意です。knowledge を知識と思い込んでいると、このような英文に抵抗感があるでしょう。いろいろな英文にあたって、硬さや思い込みをほぐしていくことが大切です。研究社の辞書には He left for Europe without the knowledge of his friends.「友達にも知らせずにヨーロッパへ旅立った」という例文が出ていました。

ついでにもうひとつ、stop+不定詞 と、stop+動名詞 について触れておきます。これは大昔からあるポイントで、要するに stop が自動詞なのか他動詞なのかという問題です。He stopped to smoke.「立ち止まってたばこを吸った」は自動詞+結果の不定詞 で、He stopped smoking.「禁煙した」は他動詞+目的語の動名詞 です。ここまではよくある話です。では、He didn't stop to smoke. はどういう意味でしょうか。これは「立ち止まることなくたばこを吸った」つまり He smoked while walking. の意です。He didn't stop smoking. の場合は「吸い続けた」の意になりますから、「不定詞に比べて動名詞のほうが前に置かれた動詞との間の一体感がある」と考えることもできますね。