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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第378回 2022.3/31

帚木233・234・235・236:人々渡殿より出でたる泉にのぞき居て酒飲む。あるじも肴求むと、こゆるぎのいそぎありくほど、君はのどやかに眺め給ひて、「かの中の品に取り出でて言ひし、このなみならむかし」とおぼしいづ。思ひあがれる景色に聞き置き給へる娘なれば、ゆかしくて耳とどめ給へるに、この西おもてにぞ人の気配する。きぬの音なひ、はらはらとして若き声ども憎からず。

源氏の供人たちは渡殿のところから湧き出た泉をのぞきながら座っていて酒を飲んでいる。紀伊守もまた酒肴の支度にせかせかと動き回っていたが、一方の源氏はこの庭の景色をのどかに眺めながら、あの左馬頭が言っていた中級の受領の家というのはたぶんこのあたりのことを指すのであろう、と思い出していた。さて紀伊守の妻という人については随分気位の高い女だという噂があったから、どんな女性だろうと興味をそそられていたのだが、どうやら邸の西側の部屋あたりに人の気配がする。衣擦れの音がサラサラとして、若い女房たちの声が可愛らし気に聞こえてくる。

N君相模国に「こゆるぎの磯」と呼ばれる景勝地があるらしくて、「いそぎありく」の”いそ”にひっかけて「こゆるぎの」をくっつけたのですが、これはいくらなんでも学生には解釈不能です。そういえば今でも落語などを聞いていると、「二十一日」と言う時に「さんしち二十一日」なんて言っている場面があって、”変な接頭語”による修辞法、とでも呼べるものです。「ゆかし」は、興味をそそられて「見たい聞きたい嗅ぎたい触りたい」という気持ちを表した形容詞です。山路来て なにやらゆかし すみれ草。受領といえば地方へ行けば県知事なのに、京都へ帰ればヘイコラしていてみじめなものです。朝廷から発表される除目(じもく)によって次年度の役職が決まり、それによって一族の生活も決まるのですから、光源氏のような政府高官には充分なもてなしをするのでしょう。

Taking a look into the fountain welling near the connecting passageway, Genji's subordinates were sipping alcohol.  Kii-no-kami was also busy in preparing side dishes for them.  On the other hand, Genji was appreciating the beautiful scene of the garden.  Recalling Samanokami's remarks about the appearance of the house middle-class aristocrat would live in, Genji was thinking that this house would be the very example of the one he had referred to.  By the way, there was a rumor about Kii-no-kami's wife.  Born in a high rank family, she was apparently proud of herself.   At any rate, Genji was sufficiently interested to hear that.  Picking up his ears, he could tell that some persons seemed to be in the room around the west side of the villa.  He could hear the charming voice of young ladies-in-waiting and the rustle of their dress.

S先生:構成は大体OKなのですが指摘すべきことが三つくらいあります。第2文の be busy in +動名詞 ですが、in は省略可、というより、最近ではほとんど省略されてしまっています。まあそれはよいでしょう。第6文の apparently は「あきらかに」ではなくて「見たところ聞いたところどうも~らしくて」という副詞で、ここではピッタリはまって上手に使えていたのに、第7文の副詞 sufficiently がいけません。sufficient というのは物質的・金銭的な意味での「充分」を表していて、I have sufficient money to buy a new car.  とか、I have eaten sufficiently.  のように使われます。今回の場合は、源氏がとても興味を持った、と言いたいのですから、sufficiently ではなくて entirely とかもっと簡潔に very でもよいと思います。第8文の that節の中にある seemed to be がいけません。ここはすでに主節にて could tell が使われているのでその that節の中は簡潔に were とすべきでしょう。could tell の後に再び seemed to be が来ると、屋上屋を重ねる、といった感じになってしまいます。重複的表現は避けましょう。日本語訳に惑わされないように気を付けましょう。最後に第9文では単数複数問題を指摘しておきます。voice はいかにも不可算名詞のように思うでしょうが可算の場合もあり、ここでは可算の方が良いので voices として下さい。また dress も dresses として下さい。 

Genji's men were drinking, looking into the fountain welling from near the passage.  The Governor was hurrying about to prepare something to eat with sake, while Genji was enjoying the scenery of the garden with a tranquil mind, thinking that this would be the very house of a middle class officer's which Sama-no-kami had mentioned.  By the way, there was a rumor that Kii-no-kami's wife born of a noble family, was a very proud lady.  Genji was just excited to hear that.  Straining his ears, he found a sign that there were some young ladies in the west room of the residence.  Rustling their clothes, they were talking sweetly.

N君:第2文の The Governor was hurrying about to do の about は around と同じだと考えてよいですか。また同じ第2文の終わりのほうに出てくる officer's は officer's house と考えてよいですか。

S先生:どちらもイエスです。about=around です。officer's は独立所有格です。