kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第335回 2022.2/16

帚木124・125:(左馬頭の言葉続き)の中の(左馬頭の心中)『さりとも、たえて思ひ放つやうはあらじ』と思う給へて、とかく言ひ侍りしを、そむきもせず、たづねまどはさむとも隠れしのびず、かがやかしからず、いらへつつ、ただ(女)『ありしながらは、えなむ見過ぐすまじき。あらためてのどかに思ひならばなむ、あひ見るべき』など言ひしを、さりともえ思ひ離れじと思ひ給へしかば、しばしこらさむの心にて、しかあらためむとも言はず、いたく綱引きて見せしあひだに、いといたく思ひ嘆きて、はかなくなり侍りにしかば、たはぶれにくくなむ覚え侍りし。

『だから彼女は私のことを全く見捨ててしまおうというようなつもりもないのだろう』と、こう愚考いたしまして、あれこれとかき口説いてはみましたが、完全に別れようとも言わないし、私を惑わすつもりで隠れてしまったりもしない、私が恥をかかぬ程度に生返事などしつつ、『どんなにおっしゃっても、今までのように移り気なお心のままではとても見過ごすことはできません。心根を改めて、私と落ち着いたお心でおつきあい下さるなら、お目にかかります』などと言う。そうは言っても、最終的に仲が途切れるというようなことはあるまいと高をくくっていましたので、なおしばし懲らしめようと思って、心を改めるとも言いやらず、強情を張って綱引きしている間に、女はひどく思い嘆いてとうとう死んでしまいました。ああ、こんなこともあるから、いい加減なことを口にすべきではないと、つくづく思いましたがねえ。

N君:彼女にとって可哀そうな結末になってしまいました。左馬頭はこの始末をどうつけるのでしょうか。今後の展開が気になります。

Therefore I held that she did not mean to part from me completely, and tried to do everything I could think of to win her love.  But she was noncommittal about my enticement.  She did not say good-bye nor conceal herself deliberately from me.  She only gave me a vague answer which barely served as a gesture useful for not irritating me.  She said, 'No matter how much you say, I cannot overlook your persistent capriciousness.  If you withdraw your unstable heart to associate calmly with me, I will see you again.'  But I did not seriously take the possibility of our connection being spoiled. Therefore I meant to give her some punishments.  The insolence excluded warmth from me.  While I remained obstinate without mending my ways, she lamented to death at last.  I felt a deep regret about having slipped out irresponsible remarks to her.

S先生:今日は色々と注文があります。第1文の try+不定詞 はここ最近話題にのぼっている言い方で「~しようとして頑張る」の意ですね。「試しに~する」は try+動名詞 でしたね。この場面の原文から考えて、どちらの場合もあるでしょうが、try+不定詞 を選択したN君の判断に私も賛成です。第4文の後半にある関係代名詞節は「私をいらだたせないようにするためのふるまいとしてはほとんど役立たない生返事」という意味のようですが、何をいっているのか意味を取りにくい。考えすぎです。もっと気楽に作文しましょう。肩の力を抜きましょう。ここは which以下を、so that she might not embarrass me くらいに変えて「彼女は、私に恥をかかせない程度に生返事をした」でよいと思います。第7文の take the possibility of our connection being spoiled 「我々の関係が壊れる可能性を考慮にいれる」は、おそらく、同格の of + 主語付きの受け身動名詞 ということで作文しているのでしょうが、なんとなく硬くて不自然な感じがします。もし take を生かすとしたら、ここは take it that our relationship would be spoiled「我々の関係が壊れると考える」というふうにするのが良いと思います。「~と思う、~ととる」を take it that ~ で表します。it はなくてもよさそうに見えるのですが、なぜかこの場合は形式目的語it を必要とするのです。たとえば、I take it that we should not judge people by their looks.「人を見た目で判断してはいけないと思う」という具合です。think よりも重々しい感じがしますね。第9文の The insolence excluded warmth from me.「その横柄な考えが、私の中から人間的な温かみを追い出した」ですが、この文は硬すぎるし、さらに、不必要です。思い切って除外しましょう。第11文の I felt a deep regret about ~ の前置詞は about でもよいですが for もありえますね。その後の having slipped out irresponsible remarks to her ですがこれはいけません。slip out は自動詞であって The secret just slipped out.「うっかり漏れた」のように使います。したがって本文では slipped out の所を made くらいに変えましょう。

And so convinced that she did not mean to leave me at all, I solicited her to make it up with me.  But she neither said that she would part from me, nor hid herself to annoy me.  She would give evasive answers.  'Whatever pleasant words you may utter, I won't forgive you so long as you remain capricious.  I don't mind seeing you if you will change your mind and associate with me kindly,'  said she.  Making light of her words, I never dreamed that I would become  estranged from her.  In order to give her a lesson I went on quarreling with her without changing my way of life.  Grieved at my insincerity, she passed away at last.   Oh, how deeply I regretted my thoughtless words.

第5文の if節の中に will があることに注目してほしい。第333回で解説したように、普通の仮定文ならたとえ未来のことでも if節の中味は現在形で表すというルールがありましたが、ここではそのルールに沿っていませんね。これは時制の問題ではなくて、will が意志を表しているからであって「もしあなたに、改心して私に優しく寄り添うつもりがあるなら」という意味になるのです。will の代わりに be to do の形を用いても良いです。be to do には多くの意味があるので、いつかまとめておく必要があるのですが、今は「if節の中に be to do を見たらそれは意志を表す」と意識しておいてください。すなわち、if you will change your mind and assosiate with me kindly を if you are to change ~ としても、両者はほぼ同じで「~するつもりなら」という意味になります。

N君:知らなかった単語・熟語を整理しておきます。make it up with ~「~と仲直りする」⇔ be estranged from ~「~と仲違いする、疎遠になる」。evasive answers「ごまかしの答え、言い逃れ」。make light of ~「~を軽視する」。