kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第336回 2022.2/17

帚木126・127:(左馬頭の言葉続き)ひとへにうち頼みたらむ方は、さばかりにてありぬべくなむ思う給へ出でらるる。はかなきあだごとをも、まことの大事をも、言ひ合はせたるに、かひなからず、竜田姫と言はむにもつきなからず、七夕の手にも劣るまじく、そのかたも具して、うるさくなむ侍りし」とて、いとあはれと思ひ出でたり。

日々の暮らしを共にして、なにかと頼りにする妻となれば、あの女あたりで充分よかった、、、と今でも時々思い出しますよ。彼女は、かりそめの風流事でもあるいは実質的な暮らしの大事でも、相談すれば必ずちゃんと意見を持っているやつだったしね。染物の手腕は、竜田姫が紅葉を染めるのにも劣らず、織物の腕前は、七夕の織姫にも匹敵するくらいに、細かい所に気が付いて優れていました、、、たいした女でした」などなど、今更ながら可哀そうなことをしたと、左馬頭は思い出していた。

N君:Even now I recall that she was really capable enough to serve as my legal wife whom I could live together with and rely on.  She was a reliable woman who never failed to return a decent answer to my question about from a trivial hobby's matter to a substantial issue in our life.  Her ability to dye was no less than that of Tatsuta-hime who was good at making maple leaves red and yellow.  Her skill to weave thread into cloth was equal to that of Tanabata's Ori-hime who was an expert for making a fabric , both in ancient tales.  She was a some woman."  A number of memories made Sama-no-Kami feel some pitty on her.

S先生:今日はいろいろあります。第1文の capable enough to serve as ~ は間違いではないが、この場面ではやや重いので、capable of serving as ~ くらいにする手もあると思います。第2文の my question に続く長い句は二つの点でいけません。まず、about from ~ to ~ という構成は二重前置詞の用法として不自然です。さらに、hobby's matter のような所有格は英語では考えられません。日本語の語感に従って安易に所有格を使ってはいけないのです。この論法で行くと第4文の Tanabata's Ori-hime も大いに問題でしょう。これらの間違いを払拭するために、まずは question の後にカンマを打って一旦文章を区切り、その後に whether it was a trivial entertainment or a substantial issue in our life.  という譲歩節を入れ込むというのはどうでしょうか。it は question を受けていて「問題が、小さな風流事に関するものであろうが実生活の問題に関するものであろうが」となります。第5文の she was a some woman. の some は「なかなかの、たいした、相当の」の意ですね。私も不勉強で確たることは言えないのですが、この意味で使う時は冠詞が付かないようです。つまり She was some woman. とするのが正しいようなのです。あいまいさが残るので、some を使うのはあきらめて She was an able woman. くらいにするのが無難かもしれませんね。それにしても some のこの意味を知っていたのは高校生としてはスゴイことで、似たものとして something「重要人物、結構な事」というのもあります。これも無冠詞で使われるようなので辞書で調べてみて下さい。some の話のついでに、第6文の A number of memories made Samanokami feel some pity on her. に使われた some に注目してみましょう。これは副詞ですが、「いくぶん」なのか「ひどく」なのか、訳すのに悩みます。N君は「いくぶん」の意味で使ったのかもしれないが、ここはやはり「ひどく」と訳したい所です。辞書には両方記載されています。話は変わるが、この第6文のように無生物主語を使うと文章が硬くなりますね。たまに使うのは良いですが、多用はいけません。

I still sometimes think that she was a wife reliable enough to live together with.  She had her own opinions when I consulted with her about anything, whether it was a temporary taste or a practical thing in our daily life.  As for dying, she was no less skillful than Princess Tatsuta, and as far as sewing is concerned, even Princess Tanabata was no match for her.  Indeed she was a great artist."  Thinking of her, Sama-no-Kami repented of his pitiless deed to her.

N君は daily と dairy の違いを意識したことがありますか?  daily「毎日の」、dairy「乳製品」ですが、私は若い頃この両者の区別を意識したことがなくて、ある時に気付いて愕然としたことがあります。思い込みというのは恐ろしくて、これに似た苦い経験が他にもあるので恥ずかしさを忍んで紹介しましょう。fast food のことを長いこと first food だと思い込んでいました。fast は breakfast の fast であって「飢餓」の意ですから、fast food というのは「凝ってなくてよいからとにかく短時間でおなかを満たしてくれる手軽な食べ物」くらいの意味なのでしょう。suite room のことを長いこと sweet room だと思い込んでいました。恋人同士が泊まって甘い囁きを交わすから sweet なんだろうと思い込んでいたのです。実際は suite「一揃いの」で表現されているように、「寝室・浴室・居間などがひと続きで揃っている大きな部屋」の意味だったのです。まだあります。これは以前どこかでお話したかもしれませんが、、、。大昔、シアトルを旅行中の私が日本に国際電話を掛けた時のこと。電話交換の女性が私に、”Hang up and wait a moment." みたいなことを言ってきたので、受話器を挙げたまま待っていたところ、彼女が狂ったように、”Hang up! Hang up!!” と叫ぶではありませんか。hang up「受話器を置く」の意なのです。置く、なら down でしょう、と思ったのですが、調べてみると意外なことが分かりました。電話が家庭に普及しはじめた19世紀おわりのころ、電話は大概は壁や柱にくっついて縦に装着されていたため、up が「受話器を置く」の意になってしまい、それが21世紀の今でもそのまま使われている、というわけです。思い込みは、その時は恥ずかしいのですが、深く心に刻まれるので、忘れにくいという利点もあります。どんどん恥をかく、というのも英語学習のひとつの方法です。