2023-05-01から1日間の記事一覧
古文研究法153-12 芭蕉:雲雀(ひばり)より上に安らふ峠かな 峠に登り着いて一休みしているとヒバリの声が聞こえる。いつもは頭の上に聞く声だが今は下から聞こえてくる。 N君:小西甚一先生の解説によると「微かな驚きと無心の喜びが感じられる一句」とのこ…
古文研究法153-11 芭蕉:春なれや名も無き山の朝霞 普段なら見過ごしてしまいそうな平凡な山に朝霞がたなびいて何となく心惹かれる、春だからだろうか。 N君:「春なれや」というのは「春だなあ」くらいの意味かと思っていたのですが、「~、春だからだろう…
古文研究法153-10 芭蕉:山路来て何やらゆかし菫(すみれ)草 独り山道をたどっていると何だかほのぼのと心惹かれることがあるのだが、それが何であるかは我ながら意識には登らない。ふと見ると道端に可憐なスミレが咲いている、私のほのぼのとした思いを迎え…
古文研究法153-9 芭蕉:しばらくは花の上なる月夜かな やがて西空に傾き去るであろう月ではあるが、しばらくは桜花の上にあり、映え合って夢のように美しい春の夜だ。 N君:小西甚一先生の解説によれば、「明るく美しい景物である月と花を採り上げながらもシ…
古文研究法153-8 西行:露しげく浅茅(あさじ)しげれる野になりて ありし都は見し心地せぬ 露がいっぱいで低いチガヤの繁っている野原になってしまい、以前の都とはすっかり見違えるほどの荒れようだ。 N君:西行が生きた平安末期~鎌倉初期の京は、暴風雨の…
古文研究法153-7 西行:いづくにか眠り眠りて倒れ伏さんと 思ふ悲しき道芝の露 このように夜毎の野宿を重ねていづれは道端の芝に置く露のように、私はどこかに倒れ伏すことだろう。 N君:野宿の旅とは辛いことですね。冬は無理でしょう。西行よりも少し前の…
古文研究法153-6 西行:かき分けて折れば露こそこぼれけれ 浅茅(あさじ)に混じる撫子(なでしこ)の花 低いチガヤ混じっているのをかき分けて撫子の花を折ると、露がハラハラとこぼれる。 N君:この歌は倒置法で詠まれているのですね、気付きませんでした。 Pu…
古文研究法153-5 西行:浅茅原(あさじはら)葉末の露の玉ごとに 光つらぬる秋の夜の月 低いチガヤの生えた野では、葉末の露の玉ひとつひとつに秋夜の月光が宿されている。 N君:百人一首No.37文屋朝康「白露に風の吹きしく秋の野は貫き止めぬ玉ぞ散りける」に…
古文研究法153-4 山部赤人:春の野にすみれ摘みにと来(こ)し吾(われ)ぞ 野をなつかしみ一夜宿(ね)にける 春の野にスミレを摘みに来た私は、この野があまりにも親しみ深い感じなので、思わず一晩泊まってしまった。 N君:古代のおおらかさがよく出た歌です。…
古文研究法153-3 山部赤人:明日よりは春菜摘まんと標(し)めし野に 昨日も今日も雪は降りつつ 明日から若菜を摘もうと思ってシメを張っておいた野に、昨日も今日も雪が降っていることだ。 N君:こんな「花見の場所取り」みたいなことを古代の人もやっていた…
古文研究法153-2 山部赤人:印南野(いなみの)の浅茅(あさじ)押しなべさ宿(ぬ)る夜の 日(け)長くあれば家ししのばゆ 印南野の低いチガヤを押し伏せて旅寝する夜が何日も重なったので、我が家が恋しくなったなあ。 N君:「宿(ぬ)」は「寝(ぬ)」のことでしょう…
古文研究法153-1 山部赤人:あしひきの山谷越えて野づかさに 今は鳴くらむ鶯の声 山や谷を越えて、野の小高い所で今頃は鳴いているだろうな、ウグイスが。 N君:山部赤人は百人一首No.4「田子の浦ゆ打ち出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける」を歌…
古文研究法152-6 談林風:時鳥(ホトトギス)いかに鬼神もたしかに聴け いまかいまかと待ちかねるうちに、ようやくホトトギスが一声鳴いた。オイ鳴いたぞ、もう夏だな、皆よく聴け、鬼神もよく聴け。 N君:この句は何を言っているのか全く分かりませんでした。…
古文研究法152-5 蕉風:うづくまる薬のもとの寒さかな 芭蕉先生は死の床にあり、弟子たちは看病に一生懸命だ。疲れと不安で私は炉のほとりにうづくまった。ちょうどいま煎じている薬の匂いがプーンとして私の心をいっそう切実にした。その日は寒い夜で、その…
古文研究法152-4 貞門風:歌いくさ文武二道の蛙(かはづ)かな 紀貫之は「花に鳴く鶯・水に棲む蛙の声を聞けば、生きとし生ける者、いづれか歌を詠まざりける」と言ったから、蛙は歌詠みのはずで文の道に通じている。しかし今ゲロゲロとわめいているのは歌で合…
古文研究法152-3 月並調:雪の中の雪見つけたり一つ松 一面銀世界で見渡すところ雪のほかは何もないのだが、その中でひときわ目立つ雪がある。それは松に積もった雪で、松の雪こそ雪の中の雪。雪の王様だ。 N君:小西甚一先生の解説では「松に雪、という風流…
古文研究法152-2 天明調:狩衣(かりぎぬ)の袖の裏這ふ蛍かな 平安朝の貴公子が眼に浮かぶ。夏のことだから薄物を着ているわけだが、その狩衣の袖を通して蛍の光が美しく明滅する。蛍を袖に入れることは平安朝の歌にも多く見え、いかにも王朝らしい古典美の世…
古文研究法152-1 蕉風:下京(しもぎゃう)や雪積む上の夜の雨 下京のあたり、雪の積もった上に夜の雨がしんしんと降る。閑寂の中に冬の侘しさが籠っており、下京という場所(貴族が暮らす上京に対して庶民の暮らす下京)の感じと、しっくり溶け合った情景だ。 N…
古文研究法151-5 新古今集より:大空は梅のにほひに霞みつつ 曇りも果てぬ春の夜の月 大空は梅の香りを漂わせながら一面に霞んでおり、しかし曇りというほどでもない春の夜空には、朧月(おぼろづき)がかすかに見えている。 N君:部分否定を使った作文をすべ…
古文研究法151-4 金槐集(源実朝)より:時により過ぐれば民の嘆きなり 八大竜王雨やめ給へ 時と場合によっては有難いはずの雨だって度が過ぎると人民の悩みの種になりますから、八大竜王よ、どうか雨をおやめ下さい。 N君:ある気候学者の先生から伺った話で…
古文研究法151-3 万葉集より:桜田へ鶴(たづ)鳴き渡るあゆち潟 汐干(しほひ)にけらし鶴(たづ)鳴き渡る 桜田の方へ鶴が鳴きながら飛んで行く。あゆち潟は潮が引いたらしいな。餌を求めて鶴が鳴きながら飛んで行く。 N君:「けらし」は「けるらし」つまり「過…
古文研究法151-2 山家集(西行)より:花にそむ心はいかで残りけむ 捨て果ててきと思ふ我が身は 桜の花に憧れる心だけがどうして残ったのだろうか、あらゆる迷いや執着をすべて捨て切ったと信じている私なのに。 N君:「そむ」は漢字で書くと「染む」で、「深…
古文研究法151-1 古今集より:春霞立つを見捨ててゆく雁は 花なき里に住みやならへる 春霞が立つこの頃、もう桜が咲くのも近いのにそれを見もしないで雁は北へ帰って行く。彼らは花のない土地に住み慣れているからなのだろう。 N君:「住みならふ」に、係助…
古文研究法150-3 新古今集より:風通ふ寝覚めの袖の花の香に かをる枕の春の夜の夢 藤原俊成女(ふじわらしゅんぜいのむすめ) 風がほのかに吹き過ぎて夢から覚めた。枕代わりにしていた袖に花の香が残っているような気がする。それは春の夜の甘美な夢の名残り…
古文研究法150-2 古今集より:袖ひじてむすびし水の氷(こほ)れるを 春立つ今日の風やとくらむ 夏の頃、袖を濡らしながら手に掬(すく)ってその冷たさを楽しんだ水が、秋も過ぎて冬になって凍ってしまった。その氷を立春の風がどこかで溶かしているんだろうな…