2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧
帚木303・304・305・306:(源氏)「そのきはぎはをまだ知らぬ初事(うひごと)ぞや。なかなかおしなべたる列(つら)に思ひなし給へるなむ、うたてありける。おのづから聞き給ふやうもあらむ。あながちなる好き心はさらに慣らはぬを、さるべきにや、げにかくあば…
帚木301・302・303:障子を引きたてて、(源氏)「あかつきに御迎へにものせよ」とのたまへば、女はこの人の思ふらむ事さへ死ぬばかりわりなきに、流るるまで汗になりて、いとなやましげなる、いとほしけれど、例の、いづこよりとうで給ふ言の葉にかあらむ、あ…
帚木297・298・299・300:(源氏)「やや」とのたまふに、あやしくてさぐりよりたるにぞ、いみじくにほひ満ちて、顔にもくゆりかかるここちするに、思ひよりぬ。あさましう、こはいかなることにぞ、と思ひまどはるれど聞こえむかたなし。なみなみの人ならばこ…
帚木294・295・296:消えまどへる気色いと心苦しくらうたげなれば、「をかし」と見給ひて(源氏)「たがふべくもあらぬ心のしるべを、思はずにもおぼめい給ふかな。好きがましきさまには、よに見え奉らじ。思ふ事少し聞こゆべきぞ」とて、いと小さやかなれば、…
帚木291・292・293:(源氏)「うちつけに、深からぬ心のほど見給ふらむ、ことわりなれど、年ごろ思ひわたる心のうちも聞こえ知らせむとでなむ。かかる折りを待ちいでたるも『さらに浅くはあらじ』と思ひなし給へ」と、いとやはらかにのたまひて、鬼神も荒立つ…
帚木289・290:(源氏)「中将召しつればなむ。人知れぬ思ひのしるしある心地して」とのたまふを、ともかくも思ひ分かれず、ものにおそはるる心地して(女)「や」とおびゆれど、顔にきぬのさはりて音にも立てず。 「中将をお召しになりましたゆえ、わたくし近衛…
帚木286・287・288:皆しづまりたるけはひなれば、かけがねを試みに引きあけ給へれば、あなたよりは鎖(さ)さざりけり。几帳を障子くちには立てて、火はほのぐらきに見給へば、唐櫃(からびつ)だつ物どもを置きたれば、乱りがはしき中を分け入り給へれば、ただ…
帚木280・281・282・283・284・285:(子)「まろは端に寝侍らむ。あなくるし」とて火かかげなどすべし。をんな君はただこの障子口すぢかひたる程にぞ臥したるべき。(女)「中将の君はいづくにぞ。人げ遠きここちして物恐ろし」と言ふなれば、長押(なげし)のし…
帚木274・275・276・277・278・279:寝たりける声のしどけなき、いとよく似かよひたれば、いもうとと聞き給ひつ。(子)「廂(ひさし)にぞ大殿籠りぬる。音に聞きつる御ありさまを見奉りつる。げにこそめでたかりけれ」と、みそかに言ふ。(女)「昼ならましかば…
帚木268・269・270・271・272・273:君はとけても寝られ給はず。いたづらぶしとおぼさるるに御目さめて、この北の障子のあなたに人の気配するを、(源氏)「こなたやかくいふ人の隠れたる方ならむ。あはれや」と、御心とどめて、やをら起きて立ち聞き給へば、…
帚木265・266・267:(源氏)「さりとも、真人たちのつきづきしく今めきたらむに、おろしたてむやは。かの介は、いとよしありて気色ばめるをや」など物語りし給ひて、(源氏)「いづかたにぞ」。(紀伊守)「皆下屋におろし侍りめるを、えやまかりおりあへざらむ」…
帚木262・263・264:(源氏)「伊予介はかしづくや。君と思ふらむな」。(紀伊守)「いかがは。わたくしの主とこそは思ひて侍るめるを、すきずきし事と、なにがしより始めて、うちひき侍らずなむ」と申す。 源氏が「されば伊予介はその後妻を大切にしているのか?…
帚木259・260・261:(紀伊守)「不意にかくてものし侍るなり。世の中といふもの、さのみこそ、今も昔も定まりたる事侍らね。なかにつけても女の宿世は浮かびたるなむあはれに侍る」など聞こえさす。 「なにさま、思いもかけずこういうことになりました次第で…
帚木255・256・257・258:(源氏)「あはれの事や。この姉君や、真人の後の親」。(紀伊守)「さなむ侍る」と申すに、(源氏)「似げなき親をもまうけたりけるかな。うへにも聞こし召しおきて宮仕へにいだしたてむと漏らし奏せし、いかになりけむと、いつぞやのた…
帚木249・250・251・252・253・254:あるじの子供をかしげにてあり。わらはなる、殿上のほどに御覧じなれたるもあり。伊予の介の子もあり。あまたある中に、いとけはひあてはかにて、十二・三ばかりなるものあり。(源氏)「いづれいづれ」など問ひ給ふに、(紀…