2022-03-04から1日間の記事一覧
帚木294・295・296:消えまどへる気色いと心苦しくらうたげなれば、「をかし」と見給ひて(源氏)「たがふべくもあらぬ心のしるべを、思はずにもおぼめい給ふかな。好きがましきさまには、よに見え奉らじ。思ふ事少し聞こゆべきぞ」とて、いと小さやかなれば、…
帚木291・292・293:(源氏)「うちつけに、深からぬ心のほど見給ふらむ、ことわりなれど、年ごろ思ひわたる心のうちも聞こえ知らせむとでなむ。かかる折りを待ちいでたるも『さらに浅くはあらじ』と思ひなし給へ」と、いとやはらかにのたまひて、鬼神も荒立つ…
帚木289・290:(源氏)「中将召しつればなむ。人知れぬ思ひのしるしある心地して」とのたまふを、ともかくも思ひ分かれず、ものにおそはるる心地して(女)「や」とおびゆれど、顔にきぬのさはりて音にも立てず。 「中将をお召しになりましたゆえ、わたくし近衛…
帚木286・287・288:皆しづまりたるけはひなれば、かけがねを試みに引きあけ給へれば、あなたよりは鎖(さ)さざりけり。几帳を障子くちには立てて、火はほのぐらきに見給へば、唐櫃(からびつ)だつ物どもを置きたれば、乱りがはしき中を分け入り給へれば、ただ…