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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第396回 2022.4/18

帚木301・302・303:障子を引きたてて、(源氏)「あかつきに御迎へにものせよ」とのたまへば、女はこの人の思ふらむ事さへ死ぬばかりわりなきに、流るるまで汗になりて、いとなやましげなる、いとほしけれど、例の、いづこよりとうで給ふ言の葉にかあらむ、あはれ知るばかり情け情けしく宣(のたま)ひ尽くすべかめれど、なほいとあさましきに、(女)「うつつともおぼえずこそ。数ならぬ身ながらも、おぼしくたしける御心ばへの程も、いかが浅くは思う給えざらむ。いとかやうなるきはは、きはとこそ侍るなれ」とて、かく押し立ち給へるを、深く情けなく憂しと思ひたりけるさまも、げにいとほしく、心恥ずかしき気配なれば、(いったんここで切ります)

障子をピシャリと閉めるに際して「よいか、明け方になったら女君を迎えに参られよ」と中将の君に命じて、源氏はそのままとを閉めた。女君は、今、戸の外までついてきた中将の君がどう思うかと想像するだけでも堪え難い思いがしてびっしょりと汗をかいている。気分もひどく悪そうに見える。源氏は気の毒にも思うのだが、またいつものことながら、どこから取り出すのだか、口達者に、そして女心にもしみじみとひびくように、いかにも情け深い調子で語り続けるのであった。しかし女はそれでも、あんまりだと思って「とても現実とは思えません。こんな物の数でもないような賤しい身の上ながら、それでも私をこんなに侮る御心のほどを思いますと、随分と浅いお情けのかけようだと思わずにはいられません。どうぞもうおからかいにならないで、賤しい身分の者にはそれなりの仕方というものがございます」と、言葉を尽くして押し返しながら、源氏のこんな無法なやり方を、思いやりのないひどいことだと深く悲しんでいるように見える。さすがにその様子はいかにも可哀そうで、さしもの源氏も、気持ちの上で怯まざるを得ない雰囲気であった。

N君:「数ならぬ身」はときどき出てきます。自身の存在を謙遜して言う時に用いられる表現で「とるに足りない存在の私め」くらいの意です。悪事が露見しそうになっているのに、源氏のこの堂々とした態度には感動しました。また中将の君の理性的な判断にも注目です。

Slamming the paper screen, Genji ordered Chujo-no-kimi, "O.K., you must come for her when the day breaks."  The mere thought of how the Chujo-no-kimi, who had traced Genji to the outside of the door, was thinking about her gave her an unbearable shame.  She was drenched in sweat and and seemed to feel ill.  Pitiful as her bewildered figure was, he apparently went on whispering with a lovely tone so that women should be touched.  What a glib tongue !  It is true that this was his natural manner.  But where on earth did he bring out such sweet words from ?  Complaining inwardly that there was no excuse for his rudeness, she managed to say, "I can't take this thing real.  Although I am from a low rank, I can see you are kidding me.  I cannot help supposing that you are only putting a shallow love on meI am wondering if you would not tease me any moreThere is our own way we in a low rank make love."  Struggling to use all words against him, she was apparently possesed with the idea that his outrageous manner was terribly inconsiderate.  She seemed to fall into a deep grief.  He felt so sorry for her that his passion could not help shrinking away from taking an arrogant manner.

S先生:うーん今日はあまり良い出来ではありません。私の好みの問題も含めていろいろと指摘したいと思います。第1文頭の分子構文 Slamming the paper screen, ですが、Banging the paper screen shut, というふうにすると、よりぴしゃっと感が出るでしょう。shut は過去分詞です。第2文頭の The mere thought of ~「~と考えただけでも」という言い方は高級で良かったのですが、後半の gave her an unbearable shame はちょっと硬い。より簡潔に made her unbearable とするほうが私は好きです。第3文の sweat に違和感を覚えました。同じ汗でも sweat はどちらかというと汚い汗で、キラキラした汗は perspiration です。よってここでは perspiration のほうが良いと思います。自販機の飲み物で「Poccari Sweat」なるものがありますが、欧米人は飲む気にならないと思います。同じような例では、最近やたらと「はーとふる動物病院」だとか「ハートフルなおもてなしを、、、※※老人ホーム」などという謳い文句が目につきますが、そもそも heartful などという単語は存在しないし、欧米人に言っても「へっ?」と思われるでしょう。もし言うなら warm でしょう。第4文の Pitiful as her bewildered figure was,「彼女がとまどっている様子があんまり可哀そうだったが」という譲歩節の主語が、主節の主語he と一致していないのがいけません。主語はできるだけ揃えて下さい。したがってここの場合 Pitiful as he felt for her, くらいにしましょう。同じく第4文後半部の so that women should be touched は一般的な女性の話として作文されていますが、ここでは一般論ではなく、今現在源氏の腕に抱かれている女君の話をしているのですから、so that she would be touched とすべきでしょう。第6・7文の It is true that ~ . But ~ という呼応は良しとして、第6文はもっと簡潔に True, this was his usual manner. とすることもできます。第9文の you are kidding me はいけません。kid は自動詞なのでこのように使ってはいけません。ここは you are making fun of me くらいにしましょう。第10文の you are only putting a shallow love on me は冗長。you love me sufficiently で充分です。第11文の I am wondering if you would not tease me any more. も丁寧な言い方をしたつもりでしょうが、やはり冗長。Please don't tease me any more. で充分です。第12文 There is our own way we in a low rank make love. は直接的過ぎて、女性の言葉としては品がないように思います。Every women in a low rank have their own way of loving. みたいな言い方のほうが奥ゆかしいと思います。第13文の she was possesed with the idea that ~「~という考えに取りつかれている」は高級な言い方で、生徒がこういう作文を見せてくれると、こちらも嬉しくなります。第14文の She seemed to fall into a deep grief. ですが、fall into という動作動詞がいけません。ここは動作ではなく「そのような状態にある」ということを述べたいのですから、She seemed to be in a deep grief. にして下さい。第15文も再び主語一致の問題です。主節の主語が he なのに、that節の中味の主語が his passion になっています。決して間違いではないのですが今後は「できるだけ主語を揃える」ことに気を配って下さい。ここの場合、that節内部の主語をあえて his passion にしなくても he のままで充分ですね。N君の思いがほとばしってついつい his passion にしてしまったのでしょうが、こういうところでは冷静になって違和感がないかどうか見直すようにして下さい。

Banging the sliding paper door shut, he said to Lady Chujo, "Come for your Mistress without fail in the morning."  The Mistress was wet with perspiration and quite upset at the thought of what Chujo, who had followed Genji as far as outside the door, was thinking of.  She seemed to feel unwell.  Genji felt sorry for her.  But as usual, he went on talking eloquently and compassionately to make her composed.  Still, she was not to be soothed.  She said, "Can it be true ?  Though I am of a low rank, I cannot but think you are treating me as mercilessly as if you are making fun of me.  Please don't.  Even a woman of a low rank should know her own way.  Protesting severely against Genji's rude way, she still seemed to be deeply depressed.  He could not help but feel disheartened to see her in such a sad plight.

N君:S先生の第8文 I am of a low rank の前置詞of は from の意味ですか。

S先生:そうです。of にはいろいろな意味がありますが「~の生まれで」と言う時は from よりも of のほうが好まれるようです。from でもOKです。

N君:同じく第8文 as if 節の中の動詞の形ですが、were ではなくて are が使われているのは何故か、ということについて、第392回の解説をじっくり読んで僕なりの答えを言いますのでチェックして下さい。「as if だからといって必ずしも仮定法とは限らない。節の中味がありえない仮定なら仮定法となるから動詞の形が変になるけれども、普通の仮定ならただの条件節だから動詞の形も普通でよい。ここでは、源氏が実際に女君を make fun of しているのだから、これは仮定法ではなくて普通の条件節である。よって were ではなくて are になっている」

S先生:その通りです。

N君:第12文末の plight「苦境」