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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第390回 2022.4/12

帚木280・281・282・283・284・285:(子)「まろは端に寝侍らむ。あなくるし」とて火かかげなどすべし。をんな君はただこの障子口すぢかひたる程にぞ臥したるべき。(女)「中将の君はいづくにぞ。人げ遠きここちして物恐ろし」と言ふなれば、長押(なげし)のしもに人々臥していらへすなり(人々)「しもに湯におりて(中将の君)『ただ今まゐらむ』と侍り」と言ふ。

「僕はこの端のところに寝ます、ああくたびれた」と少年は言って、灯明台の灯を掻き揚げる様子である。ふーむ、なるほど、となるとどうやらこの姉君はすぐ近くの障子口から斜めに行ったあたりに寝ているらしい(と源氏は思った)。「ねえ、中将の君はどこへ行ったの。なんだかひとけがない気がして怖いわねえ」と姉の声が聞こえる。さては姉君は真ん中の母屋に寝て、その周囲の廂の間の長押の下あたりに、中将の君やらなにやらの女房たちが寝ているらしい。「はい、中将の君はただいま下屋のほうに下がりましてお風呂にまいっておりますが、すぐに戻って来るとのことで」と、答える女房の声が聞こえる

N君:助動詞「なり」には2種類あります。まずは断定「なり」で、こいつは連体形や体言に接続します。一方、伝聞・推定(略して伝推)の「なり」は終止形に接続します。今回の部分では伝推「なり」が2か所に出ました。はじめの「言ふなれば」では、四段活用動詞「言ふ」の終止形と連体形がともに「言ふ」なので、それに接続する「なり」が伝推なのか断定なのか分かりませんが、ここは周辺状況から伝推と考えられます。あとの「すなり」では、サ行変格活用動詞「す」の連体形「する」ではなくて終止形「す」に「なり」が接続しているので、この「なり」は間違いなく伝推「なり」です。伝推「なり」が出てきたら「~の声が聞こえる」というふうに訳すとよいです。このポイントは古文の試験でよく問われるところです。今日のところは、暗がりの中で源氏は聞き耳を立てている場面なので、伝推「なり」が活躍しそうですよね。その例を紀貫之土佐日記」の出だしの部分から取り上げてみます。"男もなる日記といふものを女もしてみんとてするなり” では、はじめの「なり」が伝推、あとの「なり」が断定です。西暦900年ころから平仮名が使われ始めて、伊勢物語(プレイボーイ在原業平の話)・竹取物語(かぐや姫の話)・大和物語(姥捨て山の話)が平仮名で書かれましたが、930年にこの土佐日記が書かれる頃になってもなお、「男が平仮名を使うなんて恥ずかしい、男は漢文だろ」みたいな空気が残っていて、男である紀貫之が女のふりをしてこの土佐日記を書きだしていることがわかります。ちなみに紫式部源氏物語を書いたのは西暦1000年くらいです。

”I'm going to lie near this edge.  Ah, I'm exhausted today."  The boy said and apparently stirred up a candle wick in a light stand.  Hearing their conversation, Genji assumed that his elder sister might lie somewhere at the oblique direction from the nearest doorway of a paper screen.  Again she said, "Where did Chujo-no-kimi go ?  I am scared of being apparently left alone."  Hearing her voice, Genji estimated that she woud lie in the room at the center of the main house surrounded by satellite rooms where Chujo-no-kimi and other ladies-in-waiting would be.  Someone in a satellite room answered, "Well, Chujo-no-kimi is now down in the lower house where she is having a bath, but I hear she will come back here soon."

S先生:全体的にいい線行ってますが、ほんの少し指摘しておきます。第4文の somewhere at the oblique direction from ~ は構成自体は問題ないのですが、前置詞は at ではなくて in にして下さい。以前にも言いましたが「direction が出たら前置詞は in」ということで覚えておいて下さい。たとえば「彼のほうを見ていた」と言いたい時、I was looking in his direction. が正しくて、この in を to や at にしてはいけません。第7文および第9文の satellite はちょっと違う気がします。satellite は、Mitaka is a sattelite city of Tokyo. のように使うのが普通なので、ここでは side くらいを使うのがよいでしょう。第8文の would be はこのままでも間違いではないが、もう一歩進めて were supposed to be としたらどうでしょうか。

”I will sleep at this corner.  I am so tired," said the boy, turning up the candle light.  Hum, she apparently lay somewhere in the diagonal direction from the sliding doors just before him.  Again the sister said, "Where is Lady Chujo ?  I feel a little scared to be left alone."  She seemed to lie in the main room, and Lady Chujo and other ladies-in-waiting under the timbers of the eaves room.  From the direction of the eaves room some lady's voice was heard : "Lady Chujo has gone to the lower room to take a bath.  She says she will soon come back."

N君:先生の作文の第3文は描出話法ということですね。

S先生:そうです。ここは源氏の心の中のつぶやきを、筆者が源氏に代わって吐露したという場面です。このような場面が、描出話法にはピッタリなのです。

N君:先生の第6文後半には動詞がないのですが、、、

S先生:前半部の動詞 seemed to lie の反復を避ける目的でわざと除外しています。主部と under ~ の間に、seemed to lie を補って考えてみて下さい。