kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第383回 2022.4/5

帚木249・250・251・252・253・254:あるじの子供をかしげにてあり。わらはなる、殿上のほどに御覧じなれたるもあり。伊予の介の子もあり。あまたある中に、いとけはひあてはかにて、十二・三ばかりなるものあり。(源氏)いづれいづれ」など問ひ給ふに、(紀伊守)「これは故衛門の督の末の子にて、いとかなしく侍りけるを、をさなき程におくれ侍りて、姉なる人のよすがにかくて侍るなり。(ざえ)なども付き侍りぬべく、けしうは侍らぬを、殿上なども思う給えかけながら、すがすがしうは、交らひ侍らざらめる」と申す。

紀伊守の子供たちは可愛い年頃である。少年で、彼がちょうど殿上童のお勤めに上がった折に源氏も見知っている者もいた。紀伊守の父伊予介の子もいる。そのたくさんの子供らの中に、様子にたいそう気品があって、年は十二・三ほどの少年がいた。この子らは誰が誰の子か、などと源氏が尋ねると、紀伊守は、「ははっ、あの子は亡き衛門督の末っ子で、督もたいそう可愛がっておりました者ですが、あいにくと幼いうちに父に先立たれまして、ほかにはかばかしい後見人もございませぬもので、姉のを頼ってこの邸に参っております。学問などもできそうな子で、好ましくないこともない(見込みもある)ので、いずれ殿上童にでもと思ってはいますが、後見人の関係で、なかなかすっきりとは上がることができませんで、、、」と答えた。

N君:知らない古語がたくさん出ました。形容動詞あてはかなり=貴はかなり=あてやかなり は「上品だ」の意。「はか」は接尾語で、語幹の「あて=貴」が大切。形容詞かなし=愛し は「いとおしい」の意。おくる=遅る=後る は「死に遅れる」つまり「先立たれる」の意で古文にはよく出てくるので要注意です。よすが=縁、才(ざえ)=学問。形容詞けし=奇し=異し は「異様で好ましくない」の意なので、「けしうはあらぬ」といえば「好感が持てる、見込みがある」の意になります。え+否定語=不可能=~できない、の意。それから、父が伊予介=愛媛県副知事、子が紀伊守=和歌山県知事、ということですかね。中級貴族は毎年の除目(じもく)=人事考証 で、ちゃんと受領に任命してもらわないといけないので、源氏のような政府高官への気遣いは半端ないものがあります。見ていて可哀そうですね。

The children of Kii-no-Kami were in the midst of their pretty ageAmong them was a boy Genji had seen when the boy attended a ceremony held in the Palace as one of the Court Boys.  He, probably 12 or 13, looked so graceful.  Genji asked the names of fathers paired with the children.  Kii-no-Kami explained about the good-looking boy Genji was interested in, "He is the youngest child of the late Emon-no-kami.  Although raised with much affection, he was left alone as a little child.  After his father passed away, he could not find a reliable patron.  Since my elder sister was related to his father, I adopted him as one of my children.  Apparently capable of studying literature, he may have a good chance to ride on a career track.  I want him to be a competent youngster and attend the ceremony as a Court Boy.  However, the political power of his patron, me, is too weak to realize his wish beyond obstacles.

S先生:大きな間違いはありません。私の好みの問題かもしれませんが、いくつか指摘しておきたい所があります。第1文の in the midst of their pretty age「可愛い真っ盛りで」ですが少し硬いというか大仰な気がします。in the prime of their cuteness くらいでどうでしょうか。第2文は Among them を文頭に出して、be動詞+S+接触節+when節 という無駄のない構文にしましたね。これは締まっていて見事です。この感じを今後も出していって欲しい。第3文の the names of fathers paired with the children に違和感ありです。paired with というのはたとえば I was paired with him in the table tennis match. のように人為的なことに使います。父と子のペアは運命的なことですから paired with は馴染まないと思います。そこで the name of each boy's father くらいに変更しましょう。第6文の he was left alone as a little child. に使われた as は前置詞の as で「子供として → 子供のころ」の意です。N君がこの as を使ったのは本シリーズで初だと思います。中原道喜先生は聖文社「新英文読解法」のなかで、「as には前置詞・関係代名詞・接続詞の3種があり、小兵ながら英単語随一の技の使い手で、英語のプロをも惑わす曲者ぶりを示す」と述べておられます。前置詞as の例文を見てみましょう。(1) They regarded him as a child.「子供とみなした」の意でこれは我々もよく使います。(2) He used to cry at a mere trifle as a child.「子供のころ何でもないことでよく泣いた」の意で今回N君が使った as ですね。基本的には「子供として」の意でありそれが「子供のころ」の意に転用されたのでしょう。He used to cry at a mere trifle as a child does.「子供のように」の as は接続詞であって、意味的には like a child とほぼ同じです。(3) She thought of him, not as dead, but as living with angels.「死んだのではなくて、天使と一緒に暮らしているのだと考えた」では、前置詞as の目的語が名詞以外もあり得ることを示しています。A as B の B がたとえ名詞でなくても A is B というNexus関係(主語述語関係)を保持していることが大切です。その意味で(4) He stressed the concept of the human race as one family.「人類はひとつの家族だという考えを力説した」= ~ the concept that the human race is one family.  と考えられます。ここに示した例文は前置詞のみであり、関係代名詞や接続詞にはもっとややこしいものがたくさんあります。将来N君もぜひ中原先生の本で研究してみるとよいでしょう。ワンランク上の景色が見えると思いますよ。前置詞as の話が長くなってしまいましたが、今回ここでN君が He was left alone as a child. という英文を書いたという事実は、N君の英作文修行の行程において、大きな一里塚であった、ということです。さて話は変わって第7文の Since my elder sister was related to his father, I adopted him as one of my childre.  の内容を整理すると「紀伊守の姉が亡き衛門督と懇意だったので、紀伊守が衛門督の息子を養子にもらった」となりますが、私の解釈は違います。私は「亡き衛門督の姉が、紀伊守の父伊予介の後妻に入った縁で、紀伊守が衛門督の息子を、養子として迎え入れた」と取りました。

The Governor's sons were of an adorable age.  Genji had known them by sight when they came to Palace to serve the Emperor as Court Boys.  There was a son of Iyo-no-suke's.  Among many of the children, he found one particularly refined boy of twelve or thirteen years.  Genji asked who were the sons of whom.  "Oh, he is the youngest son of the late Emon-no-kami.  He loved the boy very much, but unluckily he died while his child was still young.  Having no guardian to depend on, he has come to this residence to count on his aunt (Emon-no-kami's elder sister) who got married to my father, Iyo-no-suke.  He seems to have some talent for learning.  We want him to be a Court Boy in the near future, but since he has no backing, it won't be easy for him to be one," answered the Governor.

N君:He was left alone as a child. がそんな大きなマイルストーンだったとは驚きました。今後 as には気を付けておきたいです。