古文研究法148-2 藤原家隆:花をのみ待つらん人に山里の 雪間の草の春を見せばや
春になったら桜だ、というわけで、皆華やかな桜の花ばかりを待っているようだが、そういう人に、ひっそりとした山里に積んだ雪が解けてその雪と雪の間から緑色の草がチラリと見えて来るような微かな春の風情というものを、見せたいものだなあ。
N君:願望の終助詞「ばや」が出ました。前回は「侘茶の精神を表現した歌」として武野紹鷗が定家の歌を挙げていましたが、今回は同じ趣旨で千利休がこの家隆の歌を挙げています。「華やかではない閑寂の美」「枯淡の境地」ということなのでしょう。
Looking forward to viewing cherry blossoms in full bloom, most people wait for spring. However, I want to have them notice the faint air of spring by means of catching a brief glimpse of green sprouts which appear on a slushy road in a hillside village at the time of the thaw.
S先生:前回に続いて立派な作文です。
In spring all are looking forward to enjoying the cherry blossoms. But why shouldn't they know that there is a faint spring appearance in a quiet mountain village where green shoots begin to come out of the melting snow ?
N君:a slushy road「雪でぬかるんだ道」。shoot は「鉄砲を撃つ」の意ですが名詞として「新芽」の意味を持っています。sproutと同じような意味です。先生の第2文 why shouldn't they know ~? はどう訳せばいいですか。
S先生:should は「当然~のはずだ、~すべきだ」の意味ですから、その否定疑問は「何故知っていて当然のことを知らないのか」「知っているのが当然ではないか」もっと言えば「みんな当然分かってますよね」となります。反語疑問のような感じになります。疑問文の形はしていても、表す内容は強い肯定ですね。