2023-03-07から1日間の記事一覧
古文研究119-2 源氏物語須磨:白き綾(あや)のなよよかなる、紫苑色など奉りて、こまやかなる御直衣(なほし)・帯しどけなくうち乱れ給へる御さまにて「釈迦牟尼仏弟子」と名乗りてゆるるかに読み給へる、また世に知らず聞こゆ。 光源氏様は、白い綾の柔らかな…
古文研究法119-1 源氏物語須磨より:前栽(せんざい)の花咲き乱れ面白き夕暮れに、海見やらるる廊(らう)に出で給ひて佇(たたず)み給ふ御様(おんさま)の、ゆゆしう清らなること、所柄(ところがら)は増して、この世のものとも見え給はず。 植え込みの花が咲き乱…
古文研究法118-2 徒然草115段より:世俗の事にたづさはりて生涯を暮らすは下衆(げす)の人なり。ゆかしくおぼえむことは学び聞くとも、そのおもむきを知りなば、覚束(おぼつか)なからずしてやむべし。もとより望むことなくしてやまむは第一の事なり。」 世間…
古文研究法118-1 徒然草151段より:ある人のいはく「歳五十になるまで上手に至らざらむ芸をば捨つべきなり。励み習ふべき行く末もなし、老人の事をば人もえ笑はず、衆に交はりたるもあいなく見苦し。おほかた、よろづの仕業(しはざ)はやめて暇(いとま)あるこ…
古文研究法117-4 芦刈(谷崎潤一郎)より:だが本当の優美といふものは嗜(たしな)みの深い都会人でなければ理解できないものであるから、平凡のうちに趣(おもむ)きのある此処(ここ)の風致も昔の大宮人(おほみやびと)の雅懐がなければつまらない、といふのが当…
古文研究法117-3 芦刈(谷崎潤一郎)より:それにつけても「ゆふべは秋と何思ひけむ」と後鳥羽院がおっしゃったように、もしこの夕暮れが春であって、あのおっとりとした山の麓に紅の霞がたなびき、川の両岸・峯や谷の所々に桜の花が咲いてゐたら、どんなにか…
古文研究法117-2 芦刈(谷崎潤一郎)より:かういふ景色は眼を驚かせたり魂を奪ったりしないかはりに、人懐っこいほほゑみを浮かべて旅人を迎へ入れようとする。ちょっと見ただけでは何でもないが、長く立ち止まってゐると暖かい慈母の懐に抱かれたやうな優し…
古文研究法117-1 芦刈(谷崎潤一郎)より:なべて自然の風物といふものは見る人の心々(こころごころ)であるから、こんな所は一顧の値打ちも無いやうに感ずる者もあるであらう。けれども私は、雄大でも奇抜でもないかういう凡山凡水に対するほうが、かへって甘…