kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第678回 2023.1/24

古文研究法84 源氏物語若紫より:(よぎ)おはしましける由(よし)、ただ今なむ人申すに、驚きながらさぶらふべきなにがし、この寺に籠(こも)りはべるとは知(しろ)しめながら忍びさせ給へるを、うれはしく思ひ給へてなむ。草の御席(みむしろ)も、この坊にこそまうけはべるべけれ。いと本意(ほい)なきこと。

光源氏様がこちらへおいでになった理由をたった今誰かが申しておりましたので、拙僧はとりあえず参上せねばならぬわけですが、私がこの寺に籠っていることを源氏様は御存知のくせに、私には連絡もなくコッソリとおいでになったのを、私は遺憾に思いましてねえ。私が寝起きしているのはこの粗末な宿坊ですが、この宿坊にこそ源氏様をお泊めするのが良かったなあ。いやはやどうも残念なこと、、、。

N君光源氏と懇意であった僧が籠っている寺に光源氏が突然やって来て、僧が、事前の連絡がなかったことへの恨み言を、心の中で呟いている場面。この文章がノーヒントで出されたら、何を言っているのか皆目見当がつかない、という難文です。やはり「主語が書かれない」ことが解釈を難しくするので、敬語の理解が必須になります。動詞に尊敬語がくっついているのか・謙譲語がくっついているのか、を見極めなければなりませんし、補助動詞「給ふ」には尊敬だけでなく謙譲もあることをしっかり確認しておかなければなりません。「過る」は「こちらへやって来る」。「驚きながら」は「驚いたままの状態で」「とるものもとりあえず」「何はさておき」であり、その直後に「私は光源氏様のもとへ」が省略されています。その後の「を」は逆接。「なにがし」は「私め」「拙僧」です。籠りはべる、の行動主体は拙僧。「知ろしめながら」の「ながら」は先程の「~している状態で」ではなくて逆接「~なのに」ですから全体として「御存知のくせに」となります。その行動主体は源氏。「忍びさせ給へる」は「黙っておいでになった」であって、行動主体は源氏。ところが、うれはしく思ひ給へてなむ、には謙譲の「給ふ」が使われていて、ここの行動主体は拙僧。このように、書かれないまま主語が次々に変化します。「うれはし」は「残念だ」の意。「草の御席」は「粗末な宿坊」。「まうく」は「準備する」「こしらえる」で、ここでは「源氏様をここにお泊めする」くらいの意味になります。「本意なし」は「残念なことだ」で、英語なら It is a shame that ~. という構成になります。

Lord Genji came here without notice.  Someone informed me of his sudden arrival.  It is natural for me to call on him in order to pay my respects, but I had something on my mind.  Why didn't he let me know his schedule in advance though he had known my seclusion in this temple ?  Actually the cot in which I lead a quiet life is very mean, but I would have liked to invite him into this cot.  It is a shame that he didn't stay here.

S先生:今日のところは確かに難しいですね。第2文は It is natural for me to do ~, but ~. 「私が~するのが自然だが、でもちょっと不満だった」という構成で、悪くはないですが、もっと端的に分かるように前半を I should have called on him ~ とするほうが良いのではないかと思います。第4文冒頭の副詞は Actually よりも Indeed のほうが合っている気がします。同じく第4文後半の I would have liked to do は、もしかすると I would like to invite him を過去時制にしたかったのかもしれませんが分かり難いので、もっとハッキリと I wish I had invited him のように変えるほうが良いと思いました。第5文に It is a shame that ~ の形を使ってきましたね。普通 shame は「恥」の意味で使われることが多くてその場合は不可算名詞なのですが、「残念なこと」の意味の場合は可算名詞となります。そういうわけで不定冠詞が使われているのです。ここをウロ覚えの生徒が、It is the shame that ~ とやってしまうことがあって、それこそ「残念だなあ」と思ったことがあります。定冠詞ではなくて不定冠詞ですから注意して下さい。

Someone informrd me that Lord Genji had suddenly come here, and first of all, I thought I must go to see him.  No doubt he knew that I hid myself in this temple, and so I was disappointed that he had come here with no notice.  Though the cot where I live is a verry shabby one, I wish I had had him stay here.  I deeply regret that he did not let me know his schedule.