kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第589回 2022.10/27

古文研究法36-2 源氏物語柏木:さるは、この世の別れ去り難きことはいと多く、おほかたの嘆きをばさるものにして、また心のうちに思ひ給へ乱るることのはべるを、かかる忌(いまわ)の際(みぎは)にて、何かはもらすべきと思ひはべれど、なほ忍び難きことを誰にかは憂へはべらむ。

とはいうものの、この世のあきらめきれぬ心残りは誠に多くございまして、この世を去るにあたっての一般的な悲しみはともかくとして、まだ私の心の中に思い乱れている事(女三宮との不義密通)がございますけれども、それをこんな臨終の際にどうして漏らすことなどできようか、と思っています。でも辛抱できません。この苦しみをいったい誰に訴えたらよいのでしょうか

N君:前回から続いて死の床にある柏木の述懐です。柏木が光源氏の妻(女三宮)と不義密通してしまったことを、光源氏は知っていて事を表面化させません。柏木から見て光源氏はどういうつもりなのかが気になるところなのですが、それを確かめる手段もなく、死にゆく我が身の心の苦しさを友達(夕霧)に訴えています。「さるは」は逆接の接続詞で英語の however みたいなものです。これは古文の重要単語で第543回にも出て来ました。「さるものにして」は「とりあえず横に置いて」のような意味なのでここでは「ともかくとして」と訳しています。あとは反語の「かは」が連続で出ました。反語は反語ですが疑問・詠嘆の味も少しあるようです。

To tell the truth, however, a number of impressive memories in this world linger on in my heart.  Setting aside the genral grief for passing away from this world, I am inwardly bewildered by various affairs.  Why on earth can I unburden them to others at the moment I am about to die ?  To disclose them is nothing but a guilt, which I can understand in terms of a ratinal aspect.  But emotionally, I can't bear the burden.  To whom can I confide my distress ?

S先生:まずは第3文冒頭は Why ではなくて How のほうが良いでしょう。前回も言いましたが、やはり全体的に理屈っぽくていけません。たとえば第4文・第5文・第6文を訳してみると、「そういう不倫の秘密をいまここで開陳してしまうことは将に罪であり、そのことを私は理性の上では分かっているのです、でも心が、その重荷に耐えきれず、一体誰に打ち明ければいいのでしょうか」となっていて、rational という形容詞と emotionally という副詞が、対句的に使われているのは分かります。でもそれが理屈っぽいと私は思います。忌の際にある柏木はもっと直接的な表現をしたのではないでしょうか。それと第6文の To whom can I confide my distress ? はかなり古風な言い方で、現代では Who can I confide my distress to ? と書くほうが普通でしょう。まあ、それを狙ってあえて古風に作文したのかもしれませんね。my distress は the distress of mine のほうが良さそうです。

Nevertheless, I have so many worldly things I can't resign myself to.  Apart from the sorrow ordinary people feel when they depart this world, I am torn by various sentiments.  I wonder how can I express them when I am on the deathbed ?  I can't bear my destiny.  Who on earth can I confide this agony of mine to ?

N君:理系の理屈っぽさは作文にも出てしまいます。今後気を付けたいですが「出るものは出てしまう」ような気が、、、。ところで resign [rizain]について教えて下さい。

S先生:resign は「人が仕事や地位を途中でやめてしまう、放る」の意味で leave に似ていますが leave よりも改まった感じの単語です。ちゃんと定年まで働いてやめるのは retire です。以上が基本です。この基本の上に立って resign oneself to ~「自身を放って~に任せる」「甘んじて~に従う」という応用的な言い方が多用されます。give up に似た意味です。He resigned himself to his fate.「運命に身を任せた」という例文が代表的なものです。これには受け身の形もあって He was resigned to his fate. という言い方もよく出てくるので注意しておきましょう。能動態の場合は「身を任せた」という動作が主体の言い方ですが、受け身の場合は be 動詞が前面に出るので「身を任せていた」という状態が主体の言い方になります。私の第1文は能動態で書かれていて「とはいえ、私には身を任すわけにはいかない世事が色々ある」という意味です。