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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第596回 2022.11/3

古文研究法44-1 堤中納言物語:女「ここに迎えてむとて言ふなめり、これは親などあればここに住まずともありなむかし、年ごろ行く方も無しと見る見るかく言ふよ」と、心憂しと思へどつれなくいらふ。「さるべきにこそ。はや渡し給へ。いづちもいづちもいなむ。今までかくてつれなく憂き世を知らぬけしきこそ」と言ふ。

妻は「夫はこの家へ例の女を呼び迎えようとして言うのだろう、あの女は親も居るのだからこの家に同棲しなくてもよいのに、夫はこれまで長い間私と一緒に居て私が行くあても無い事を承知していながらこのように言うのだわ」と情けなく思ったが、それを顔色には出さずに返答する。「ごもっともなことですわ。早く彼女を連れていらっしゃい。私はどこへなりとも出て行きましょう。これまでこのように気楽に世間のことも知らずに過ごさせて頂きありがたいことと思っています」と言った。

N君:夫の浮気に起因する夫婦間の揉め事です。「」が二つあって、前半は妻の心中、後半は妻が夫に対して実際に言った言葉、という構成になっています。まずはその構成を見破ることができるかどうか、が古文読解のキモとなります。「女」とはどこの女なのか、妻なのか新しい女なのか、「親」は誰の親なのか、一言も出て来ていない「夫」はこの話にどうからむのか、分からないことだらけです。訳文を読んで初めて「なーんや、そういうことかいな」と納得するしかありまへん。奥さんが居るのに浮気相手を自分の家に連れてきて同居させる、などということは、令和の現在ではありえない事ですが、明治くらいまでは案外普通に行われていたし、なんなら昭和の後半くらいまでは時々あった習俗だ、という認識を持っていなければ、この話は読解できません。「住む」はただ単に、住む、ではなくて「男女が同棲する」の意です。「としごろ」は「長年・数年来」の意味で頻出なので覚えておかなければなりません。形容詞「つれなし」は、「素知らぬ風で冷淡」「何事もなく平穏」のような意味です。今回は「つれなし」が2回出ています。結局「関わりが薄い」という基本の意味を押さえておけば2か所とも訳せるようです。「さるべきにこそ」は決まった言い方で「当然だ・ごもっとも」の意。

His wife said to herself, "Wanting to invite his lover to this house, he seems to make such an odd comment.  She does not have to live together in this house, for she has her own house to live with her parents.  He dare to make this unreasonable demand on me in spite of his awareness of my having no other place to live except in this house because he has spent a lot of time with me till now."  While feeling miserable, she replied cheerfully with the negative tone kept in her heart, "You are right.  Why don't you bring her here ?  I have a lot of places to go to.  I greatly appreciate what you have done for me.  Thanks to your support, I have lead an confortable life without seeing the harsh realities of this world.

S先生:今日は色々あります。まずは第3文冒頭の dare です。この単語は分かっているようでなかなか使い方が難しいので整理しておきたい。まずはじめに「dare には動詞と助動詞がある」という認識が必要です。今日の所では dare to do の形で使われていて、動詞として使われていますね。主語が He なので dare to do ではなくて dares to do にして下さい。He dared to jumo across the brook.「思い切って飛び越えた」、He did not dare to look back.「あえて振り向かなかった」、のような言い方が動詞の dare の代表的な言い方です。動詞の場合は肯定でも否定でも使いますが、助動詞の場合は原則として否定・疑問の文で使います。こっちは三単現でも dares ではなくて dare を使う、というのがややこしい。He dare not tell her so.「打ち明ける勇気がない」、How dare you speak to me like that ?「よくも言えるものだ」、などが代表的な助動詞 dare の言い方です。第5文の Why don't you bring her here ? ですが、bring という動詞は「物を持って来る」という意味で Bring your book to me. のように使うのが通例です。この場合は「人を連れて来る」の意味ですから bring ではなくて take を使いましょう。さて、語法的な注意はここまでですがこの後が大切です。第3文の make this unreasonable demand on me in spite of his awareness of my having no other place to live except this house「私がこの家以外行く所もないことを知っていながら夫は私に法外な要求をする」、第4文の with the negative tone kept in her heart「陰気な物言いを内にしまって」、第8文の without seeing the harsh realities of this world「社会の厳しい現実を目の当たりにすることもなく」、は全て硬過ぎていけません。どこをどうしろ、ということではないのですが、あえて言えば「発想が硬い」ということです。私の作文ではそこがどうなっているか、注目してみて下さい。

The wife said to herself, "He is intending to call his new lover to our house.  Since she is leading her life with her parents, I don't think she has to live together with my husband.  He has lived with me for a long time, so he knows well that I can't part from him.  How rude of him to say such a thing !"  Though she felt very sad, she said to her husband calmly, "You may well say so.  Why don't you hurry to take her here ?  I don't mind going anywhere.  Thanks to you, I have been able to live a carelfree life, not knowing anything of the world.  I appreciate your having treated me so kindly."