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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第654回 2022.12/31

古文研究法73-3 尾張説(石原正明注釈):「梅が香に」と直して梅の歌にはなるとも、「花の香に」として桜の歌にだになれば難にあらずより来るに随(したが)ふことなり。かやうの難は今時の人、常に言ふことなれど、褊(せば)き論なり。「桜にうとし」とある、香の無きものならばこそあらめいかでか桜にうとからむ。

「梅が香に」と言い直せば梅の歌になるとしても、元の通り「花の香に」という本文のままで桜の歌に解釈できさえすれば問題なし花と言えば桜、というような昔からのテクストに従っておけば良いのです。こういった批判はこのごろの人たちがいつもするのだけれど、融通の効かない論です。本居宣長さんは「桜ではない、梅だ」とおっしゃるが、桜に香がないというのなら話は別だけれど、桜にもちゃんと香がありますからね。どうして桜と解釈して不都合なところがあろうか、ありません

N君:前々回の新古今集の歌「風かよふ寝覚めの袖の花の香に 薫る枕の春の夜の夢」に対して、前回、本居宣長先生が「花、と言えば桜だが、この歌には早春の雰囲気があるから、桜より梅がよさそうだ」と論評したわけです。それに対して石原さんは「イヤイヤ桜でイイじゃん」と反論した、という話ですね。僕は梅でも桜でもどっちでもいいけど、こういうふうに江戸時代にも論争があったんだなあ、と興味が湧きました。僕もどちらかというと石原さんに賛成です。「だに」が出ました。これは本を読んでも分からないし、分かったつもりになっていてもすぐ忘れます。要するに、現代の「さえ」を、昔は場面によって「だに、すら、さへ」に使い分けていた、ということのようです。「難にあらず」は「問題ありません」の意。「より来る」は「昔からの理解・解釈」くらいの意味でしょう。「こそあらめ」は、係り結びがそこで終わらずに続いていく形、なので、逆接です。これはさすがに最近慣れてきました。「いかでか」は反語で「~であろうか、イヤ、そうじゃない」みたいな意味です。

It is true that if we change the third phrase as he did, this poem may be taken for a poem of Japanese plum.  But such a troublesome interpretation is needless.  There are no problems in the original text when we understand it as a poem of cherry blossom.  We should follow the classical transelation.  Although nowadays this kind of critical comments are often made by recently developed scholars like him, they are very often beside the mark.  He said that cherry blossom does not become the poem, but I think cherry blossom is O.K. because it also gives off a decent fragrance.  Why should it be wrong to interpret the aroma in the poem as that of cherry blossoms ?  No problem !

S先生:上手に書けました。第1~第2文の It is ture that ~.  But ~ . 「なるほどAではある、しかし実際はBなのだ」という言い方は英語の定番の一つです。ここでも上手に使うことができました。第5文主節の beside the mark「的外れで」、第6文の become「似合って」も正しく使えています。第5文の recently developed scholars like him という言い方はちょっとトゲがあるので、単に scholars like him でもよいと思います。さて以下の私の作文ですが、今回は調子が悪く、とてもN君に指導できるような代物ではありません。あくまでも、参考までに、ということでお願いします。

Naturally, the theme of this poem will be taken for plum blossoms if the fragrance of blossoms is put into that of plums.  But you can take the fragrance for that of cherry blossoms even if you read it as the original goes.  It is best to make much of the original.  Nowadays they interpret the original in their own way, but I think they should refrain from doing such a thing.  They say that cherry blossoms are unbecoming to spring because they have no fragrance.  But they do have.  Is there anything wrong if we take the blossoms in the original as those of cherries ?

N君:先生の第6文 But they do have. に出てくる do は何ですか?

S先生:But they have. で充分なのですが、強調のために助動詞 do を置いた、と理解して下さい。このように一言で「強調」と言っても色々な形があることを理解して下さい。強調構文、並べ替え、助動詞、などなどです。漢文にも色々なタイプの「強調」があります。講談社から出ている加地伸行先生著「漢文法基礎」には、この強調のことが懇切丁寧にしかも分かり易く面白く書かれています。単行本形式の小さな本なのでそれほど expensive でもないと思います。受験生諸君は是非とも一読してみることをお薦めします。その「まえがき」に度肝を抜かれるでしょう。加地先生はおっしゃいます、「私が今回この本を出版したのには訳がある、世の中に出回っている漢文の受験参考書を見てあきれたからである」と。どうですか、この自信、この男気。今後とも長く受験生に読まれることを願ってやみません。