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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第702回 2023.2/17

古文研究法97-1 源氏物語桐壺より:(病身となった桐壺更衣は)御子をば留(とど)め奉りて忍びてぞ出で給ふ。限りあれば、さのみも止めさせ給は、御覧じだに送らぬおぼつかなさを、言ふかたなく思(おぼ)さる。いと匂ひやかに美しげなる人の、いたう面痩(おもや)せていとあはれとものを思ひ沁みながら言(こと)に出でても聞こえやらず、あるかなきかに消え入りつつものし給ふを、御覧ずるに、来し方行く末思(おぼ)しめされず万(よろず)のことを泣く泣く契(ちぎ)り宣(のたま)はすれど、御答(おんいら)へも聞こえ給はず。

病身となった桐壺更衣は自分の産んだ皇子を宮中に残したまま、(療養のためというよりは死を覚悟して)こっそりと里下りした。宮中の規則もあることとて、帝は更衣の退出をやめさせることもできず、見送りさえできない不安な思いを深く心に刻むのであった。もともと匂うように美しかった更衣はたいそうやつれて、帝や皇子との今生の別れの悲しさを心に沁みて思いながらも、それを言葉に出して帝に申し上げることもできず、ただ朦朧として遠のく意識の中に居た。その様子を見た帝は前後不覚でオロオロして、色々な約束事を口に出すのだけれど、更衣は返答もできなかった。

N君:前々回・前回に続いて「書かれることなく変わっていく主語をどのように補っていくか?」の練習となる文章です。話の筋を見極めるうえで最も重要なところ。古文難民のキモです。今回は主語を判定する上で敬語が役に立ちます。登場人物の一人に帝がいますからね。帝の行為には二重の尊敬語などが使われているでしょうし、帝以外の人からの帝に対する行為には謙譲語が使われているでしょうから、ここらあたりが主語判別の key になると考えられます。では順を追って主語を考えていきましょう。(1)「出で給ふ」=「宮中から実家へ退出した」のは更衣。単発の尊敬語が使われているので更衣でよいし、その直前の「留め奉りて」=「皇子を宮中に残して」は謙譲語が使われていますが、更衣から見て皇子のほうが位が上なので、ここの主語も更衣でよい、と考えられます。(2)「さのみもえ止めさせ給はず」では「さす+給ふ」という二重の尊敬語があるので主語は帝。それに続く「~いふかたなく思さる」まで主語は帝です。(3)「いと匂ひやかに美しげなる人の」は、小西先生が言うところの「並びの修飾」+「主格の」でこれは更衣のことだから、その後「~ものし給ふ」までの主語は更衣。ところがその後突然、(4)「御覧ずるに~宣はすれど」まで主語は帝に変わります。この部分には二重敬語はなくて単発の敬語ばかりですが、文脈から主語は帝と考えられます。そうして最後の部分ですが、(5)「御答へも聞こえ給はず」では謙譲語+尊敬語 となっていて、ここの主語は帝ではないから更衣ということになります。古文特有の「書かれないまま主語が次々と入れ替わっていく」現象が見られ、解釈の練習にはもってこいの文章です。率直に言わせてもらえば「これほど主語を書かないのはもはや病的」と言わざるを得ません。そうしてこの書かれない主語を補っていく作業こそが古文解釈の最重要ポイントであり、ここをクリアすることが古文の点数アップに直結するであろうと考えられます。これは恐ろしい作業で、一歩間違えば奈落の底です。

Her health was undermined by a disease.  Kiritsubo-Koi was determined to leave the Palace, letting her son stay there.  She was to go back to her patients' home for death rather than recovery from the disease.  Of course, the Emperor was very anxious about her, but He could not order her to stay there and could not even send her off for official reasons.  She, who was once brilliantly beautiful, became emaciated.  Although she held a deep sadness of bidding a last farewell to Him and her son, she was so deeply in a clouded consciousness that she could not utter anything to Him.  Seeing her glazed eyes, He tried to make lots of promises with her in a faltering voice.  However, she could not return any answer.

S先生:全体的に良いです。腕をあげましたね。第5文冒頭の She, who ~ というような「関係代名詞の先行詞として代名詞を使う形」は現代の英語では使われず、古い英文で使われます。たとえば、(He) Whom the gods love dies young.「神に愛された人は夭折する」、Those who shut their eyes to the past are blind to the present.「過去に眼をつぶる者は今のことも分からない」などの格言で使われることが多いようです。本文の場合は She ではなくて The lady くらいにするのが無難でしょう。

Kiritsubo-Koi, who had fallen sick, went home to her parents to prepare for death rather than (to) have her disease cared, leaving her Prince in the Court.  According to the Imperial traditional customs, He could not stop her from leaving the Court nor see her off.  He was deeply seized with an uneasy feeling.  Kiritsubo-Koi, who used to be fragrantly beautiful, was now worn out.  Though she wanted to bid a last farewell to the Emperor and the Prince, she had no courage to express it.  She was far from conscious.  Seeing her so depressed with grief, the Emperor, who was beside himself with grief, made various promises to her, but she was unable to reply at all.