2021-04-01から1日間の記事一覧
桐壺17:またある時には、えさらぬ馬道(めだう)の戸をさしこめ、こなたかなた心をあはせて、はしたなめわずらはせ給ふ時も多かり。 そしてまたある時には、必ず通らねばならぬ中廊下を歩いている時に、その前後の戸を 閉めてしまってあっちとこっちでしめし…
桐壺16:まうのぼり給ふにも、あまりうちしきる折々は、打ち橋渡殿のここかしこの道にあやしきわざをしつつ、御送り迎えの人のきぬの裾たへがたく、まさなき事もあり。 また反対に、帝のお召しに応じて桐壺更衣のほうから参上することもあり、それがあまりに…
桐壺15:あまたの御かたがたを過ぎさせ給ひて、ひまなき御まへ渡りに、人の御こころを尽くし給ふも、げにことわりと見えたり。 だから帝が桐壺更衣のもとへお渡りになる時には、たくさんの女御更衣たちの前を素通りしていくことになり、おまけにひっきりなし…
桐壺14:御つぼねは桐壺なり。 彼女の部屋は桐壺で、帝の御寝所からは最も遠い東北の隅にある別棟にあった。 N君:Her room called Kiritsubo was in a separated ward which was located in the north-eastern corner of the Palace and was most distant f…
桐壺13:かしこき御かげをば頼み聞こえながら、おとしめきずを求め給ふ人は多く、わが身はかよわくものはかなきありさまにて、なかなかなるもの思ひをぞし給ふ。 桐壺更衣は帝のありがたい御加護におすがりしてはいるものの、ことさらにあれやこれやとあげつ…
桐壺12:人よりさきにまゐり給ひて、やむごとなき御思ひなべてならず、御子たちなどもおはしませば、この御かたの御いさめのみぞなほわずらはしう、心苦しう思い聞こえさせ給ひける。 弘徽殿女御は人に先駆けて真っ先に入内し、お家柄ゆえ帝が大切になさるこ…