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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第683回 2023.1/29

古文研究法87-1 徒然草104段より:「こなた」と言ふあれば、閉(た)て開(あ)ところせげなる遣戸(やりど)よりぞ入り給ひぬる。内の様(さま)はいたくすさましからず心憎く灯(ひ)はあなたにほのかなれど、ものの綺羅(きら)など見えて、にはかにしもあらぬ匂ひいとなつかしう住みなしたり。

「こちらへどうぞ」と言う人があるので、開け閉めの不自由そうな引き戸からお入りになった。家の中はそれほど殺風景でもなく奥ゆかしい様子。灯火はあちらのほうにボンヤリついているが調度の見事さなども見えて、今急に焚いたとも思われぬ香の匂いが漂って、本当に人の心を引き付けるように趣深く住まっている。

N君兼好法師のいつものユーモラスな書きぶりではなくて、王朝風の恋愛風景を優雅に描いています。高貴な男が愛人宅へ目立たぬようにそっと訪ねていきます。案内を乞うと取次の女房が出てきてアレコレと指図する様子がこの後次回に渡って描かれていきます。「所狭(ところせ)し」は「思い通りにならなくて不自由」「うっとおしい」の意味であり、今の若者言葉で言うところの「ウザイ」に通じます。「すさまし」は現代語とは意味が違ってしまっていて「興ざめだ」「殺風景だ」の意。「ものの綺羅」は「見た目のきれいさ」ですがここでは「調度の見事さ」を言っているのでしょう。「にはかにしもあらぬ匂い」は難しいです。まず「しも」は強意。「急ではない匂い」とは何か? 人が来るからといってあわてて香を焚いた、というわけではなくて、普段から習慣として香を焚きしめている、といった状況を表しているものと考えられます。「なつかし」も現代語とは意味が違っていて「人の心を惹きつけるような」の意味です。

Hearing the inviting call probably given by a lady-in-waiting, the noble man entered his mistress' house through a gate which is unlikely to open shut smoothly.  The mood in the house was slightly tasteful rather than dreary.  Illuminated by a dim light over there, some pieces of wonderful furniture could be seen.  A sweet incense, which seemed to be usually burnt around there, made him feel easy.  He was charmed by her way to lead an elegant life.

S先生:良い出来ですが何か所かおかしい所があります。第1文の主語 noble man は間違いで nobleman が正しい。同様に bed room は誤りで bedroom が正しい。そのすぐ後の through a gate which is unlikely to open and shut smoothly は間違いではないが which is を省略することができます。むしろ which is がないほうがスッキリします。第6文後半の her way to lead an elegant life「彼女が優雅な生活を送っているその様子」に違和感があります。ここは定型通り the way she was leading an elegant life とするのが良いと思います。ところで第1文に出てくる mistress は、普通は「女主人、おかみさん」のような意味ですが、「恋人」「愛人」のような意味もあるので、これでよいでしょう。

Hearing a lady-in-waiting say, "Please come in,"  the nobleman entered his love's house pulling hard a sliding door seeming difficult to open and shut.  The room looked elegant, not so bare.  A lamp was burning dimly over there.  Through the light the beautiful furniture was seen.  The fragrance of the incense which seemed to have been burnt for a long time was wafting through the air.  He was impressed with the way she was leading a decent, attractive life.