kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第673回 2023.1/19

古文研究法81-2 竹取物語より:今は帰るべきになりにければ、この月の十五日にかのもとの国より迎へに人々まうで来むずさらずまかりぬべければ、おぼし嘆かむが悲しきことを、この春より思ひ嘆きはべるなり。

もう帰らなくてはならない時期になってしまいましたので、今月の十五日に故郷の月の世界から迎えの人々がやって来る手筈になっています避けるわけにはいかず行かねばなりませんので、翁がお嘆きになるだろうとそれが悲しくて、そのことを今年の春から嘆いているのでございます。

N君かぐや姫が自分の正体をおじいさん・おばあさんに打ち明ける場面が続いています。「来むず」は「来むとす」の短縮形で清少納言が嫌った形です。枕草子186段「ふと心劣りとかするものは」の中でそう書いています。「さらずまかりぬべければ」は難しい。まず「さらず」は「避けるわけにはいかず」「どうしても」くらいの意味。次の「ぬべし」は must とほぼ同じ。したがって「まかりぬべければ」は「必ず行かなければならないので」となります。ここまでの主語はかぐや姫なのに、次の「おぼし嘆かむ」の主語は突然おじいさん・おばあさんになり、その後再び主語はかぐや姫に戻ります。予告なくこのように主語が変換することは古文アルアルで、もはや僕も驚かなくなりましたが、「おぼす」が「思う」の尊敬語になっていることが主語解読のカギになっていました。話者であるかぐや姫が自分の動作に尊敬語を使う訳がないので、変だな、と感じるところから始めなければなりません。すると、聞き手であるおじいさん・おばあさんが主語ではないか? と見当がつきます。ところでここで小西先生が面白いお話を書いていました。「思ひ嘆く」という複合動詞を尊敬態にしようとする時、(1)前半のみを尊敬語にして「おぼし嘆く」とする、(2)後半のみを尊敬語にして「思ひ嘆き給ふ」とする、(3)前半も後半も尊敬語にして「おぼし嘆き給ふ」とする、の3種類が考えられるけれども、何故か(1)のみが採用されて、(2)(3)は用例が全くない、とのことでした。そうなのです、理系の僕としてはこういう話を聞きたいのです。

It is about time for me to go back to the moon.  Some people living in the moon are to come here for me on the 15th day in this month.  I cannot help parting from you and going ahead with them.  Grandfather, you will grieve at my departure.  I have been feeling sad about your discouragement since this spring.

S先生:だいたい良いのですが、まだまだ舌足らずな部分や言い過ぎの部分が散見されます。第1文の It is about time to do の構文はここにはピッタリでしたね。It is about time for you to go to bed.「もう寝る時間だよ」で何も問題ないのですが、これとよく似た言い方として It is about time you went to bed. というのがあります。あえて仮定法過去を使っていて「もう寝る時間なのにまだ寝ていないの?」というニュアンスを醸し出しています。第2文の be to do は「予定」を表しています。N君は are to come here for me「月世界の人々が私のためにここに来る予定だ」と作文しましたが、もっと踏み込んで「私を連れに来る」と考えるべきで、are to come to take me back there「ここへきて私を月世界へ連れ帰る予定」と作文するほうが良いでしょう。この文の主部 Some people living in the moon ですが、living は不要でしょう。同じくこの文の後半の on the 15th day in this month の day は不要ですし、in は of のほうが良いでしょう。第3文の go ahead は「ポジティブな気持ちを抱いて前へ進む、ずんずん行く」みたいな意味ですが、ここではかぐや姫は「後ろ髪を引かれながら泣く泣く月世界へ帰っていく」わけですから、決して go ahead ではないと思います。ここは普通に go back together with them で良いでしょう。それとこの第3文は I cannot help parting from you and going back together with them. ということで、「別れざるを得ない、帰らざるをえない」という構文になっていて何の問題もないのですが、もっと締めて I cannot help parting from you to go back together with them. という具合に結果の不定詞を使う方が好感度がアップするでしょう。第4文でかぐや姫が翁に「おじいさん」と呼びかける場面ですが、よく考えてみれば Grandfather は変です。血のつながった祖父ではありませんからね。そのうえ今はもう赤の他人となって別れようとしているのですから、もっと冷たく Old man にしてはどうですか、そのほうが臨場感が出ると私は思います。

Now, it is time for me to go back to the moon.  Some people are coming to bring me back there on the fifteenth of this month.  I cannot but go back.  I feel very sad that I will have to leave you behind.  I have been thinking since this spring how painful it will be for us to part from each other.

N君:S先生第4文の since this spring は文末に置いてもよいですか?

S先生:本来は文末に来ますが、ここでは how 節が長いので前置しました。「軽前後重」です。この原則は英語のあらゆる場面に登場します。