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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第635回 2022.12/12

古文研究法66-2 大鏡:げにそれは翁らさがな目にも、ただ人とは見えさせ給はざんめり。なほ権者(ごんざ)にこそおはすめれとなむあふぎ見奉る。

本当にこの道長様の御様子の素晴らしさは、爺さん共やぶにらみの眼から見ても、普通人とはお見えにならないようです。彼らは道長様のことを神様か仏様がこの世に現れておいでのようだと仰ぎ見ているのです。

N君:「それ」は「光り輝く道長様」を指しています。「翁らが」の「が」は所有格です。滝沢馬琴南総里見八犬伝」に出てくる「我こそは玉梓(たまづさ)怨霊」の「が」と同じですね。権者(ごんざ)は神仏です。400回台のK先輩歴史放談に、藤原伊周(これちか)の弟であり中宮定子の兄でもあった隆家を「さがな者」=乱暴者、口うるさい奴、と評した文章がありましたが、今回登場した「さがな目」は「意地の悪い見方」くらいの意味です。

Actually his brilliant appearance superior to that of ordinary people cannot be denied even from the critical eyes of the elderly.  All of them look up him as if God or Buddha were reborn in this world.

S先生:良いと思います。最近とみに表現力が付いてきたように思います。第1文の from the critical eyes は、これでもよいですが from を by に変えたほうが良いでしょう。第2文の look up him は look up to him という具合に to を入れるほうが良い。

Lord Michinaga's appearance is so beautiful that even old fellows who are lacking in judging think him quite different from an ordinary man.  They worship him as God or Buddha who has come into existence in this world.

N君:先生の第1文に old fellows who are lacking in judging「判断力を欠く老人たち」という表現がありますが、ここは squint eyed old fellows「やぶにらみの年寄たち」と書くべきではないでしょうか。

S先生:squint というのは、光が眩しくて目を細めた状態、を表しており、確かに直訳するならN君の言う通り squint eyed old fellows でよいでしょう。しかしもう一歩進めて意訳するとそれは sarcastic な意味かもしれないし、判断力の鈍った状態かもしれない。分かり易い文章にするために私は「判断力の鈍った老人たち」としてみました。このあたりは色々な考え方があるでしょうが、試験の時にはあまり飛躍しないように気を付けておきましょう。かといってガチガチに逐語的になるのもいけません。程よい距離感が必要でしょう。

N君:もうひとつ質問があります。be lacking in ~「~を欠く」だと思いますが、このように現在進行形になっていることに違和感があり、lack in ~ でよいのではないですか?

S先生:ごもっともな質問です。動作動詞ではなくほぼ状態動詞の lack が ing形になっていることへの違和感だと思います。I live in Tokyo. は分かりますが I am living in Tokyo. とはあまり言いませんよね。ただし主観的感情を込めて述べる場合や継続感を出す場合は living が好まれます。研究社の辞書には I am now living in a very pleasant flat.「今ゴキゲンなアパートに住んでいるんだ」という例文が出ていました。lack の話に戻りましょう。be lacking in ~ = lack in ~ ですあり、「彼は常識に欠ける」と言う時、He lacks in common sense.  でも He is lacking in common sense. でも良いですが、後者のほうが好まれます。この lacking を現在進行形として捉えるのではなくて「形容詞的な分詞形」と捉えてみてはどうでしょうか。さてここまでは自動詞 lack の話でしたが、lack には他動詞もあるので He lacks common sense. という言い方もあり得ることを確認しておきましょう。高校生としては、かなりハイレベルの細かい話をしています。

N君:そうですね、かなり込み入ってきました。

S先生:普通のレベルを越えてもう一歩先まで行くことで、手前の事がより鮮明に見えてくるものです。そういうつもりで勉強を進めていきましょう。