kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第582回 2022.10/20

古文研究法33 徒然草:雪の面白う降りたる朝(あした)、人のがり言ふべき事ありて文(ふみ)やるとて、雪のこと何とも言はざりし返事(かへりごと)に、「この雪いかが見ると一筆のたまはせぬほどのひがひがしからむ人の仰せらるること、聴き入るべきかは。かへすがへす口惜しき御心なり」と言ひたりしこそ、をかしかりしか。

雪が見事に降っていた朝、ある人のところへ言ってやらなければならない用件があって手紙をやる際に、雪のことを何とも書かなかったその返事に、「この雪をどんなふうに見るかとちょっと言って下さらないほどの風流っ気のない方がおっしゃることなんか、相手にできるものですか。本当にまあ、あなたという人は物足りない御方です」と書いてあったのは、大変趣のあることだった。

N君:雪の朝に兼好がAさんに手紙を出したがその中で雪について触れていなかったので、Aさんが返書の中で「あんたは無粋な人だ」と兼好を非難した、というお話のようです。サラッと読むと、誰が誰に対して文句を言っているのか、分からなくなってしまいます。兼好さんには悪いですが、理系の僕からも兼好さんへ「こういう事実関係の分かり難い話は、理系の人は書きません」と言ってあげたいです。「~のがり」は時々見る言い方で「~のところへ」の意です。形容詞「ひがひがし」は、僻僻し、であり「ひねくれている、情趣がない」くらいの意味です。

In a morning beautiful with snow, I had to send a letter to a man, in which I carelessly made no reference to the snow.  Blaming me for my indifference to its elegance, he wrote to me as follows : "I cannot keep company with you, who is too inelegant to make any comments about the wonderful snowy scene this morning.  Indeed, you are so insensitive a person like a stone."  His tasteful remark touched me.

S先生:ちょっと硬い感じの作文ですが良く書けています。第3文の I cannot keep company with you は「絶交だ」という強い意味になってしまうので、もうちょっと柔らかく I cannot believe you くらいにしておきましょう。それに続く関係代名詞節 who is too inelegant to make any comments about ~ では「この any は no とすべきではないか?」とある生徒から質問されたことがあります。これは良い質問でした。文章の意味は「無粋過ぎて雪に関するコメントもない」です。通常の文章なら no を使うべきでしょう。しかしこの too ~ to 構文にはそこはかとなく「否定のにおい」が漂っていてそれが否定詞 not の役割を果たしていると考えれば 、any を使うこともO.K.なのではないか、という考えも成立します。実際ここは any で正解です。おそらくN君はそこまで深く考えることなく、感覚的に any を使ったものと予想されますが、それで良いのです。さて第4文の like a stone は「情趣を解さぬ木石のような」ということで日本人には馴染みのある語感なのですが、欧米人には理解されないと思います。like a stone を見て彼らは「え? 何?」となるでしょう。ここは like a stone を除外しておきましょう。

One morning, when the snow had lain beautifully, I had to send a letter to a certain person to inform him of something important.  I carelessly forget to write about the beautiful snowy scene.  He wrote back to me with no reserve : "Why don't you refer to the beauty of the snow ?  Are you so inelegant ?  Whatever you say, I can't believe you.  How insensitive a person you are !"  Though it sounded a little rude, he was quite right in saying so.  He is an elegant man, I should say.

N君:S先生の作文の最後のところに出て来た , I should say.  はどういう意味ですか?

S先生:「まあ~でしょうね」くらいの感じです。