古文研究法24-1 大鏡:この殿(三蹟の一人藤原行成)は、こまつぶりに斑濃(むらご)の緒(を)をつけて奉り給へりければ、「あやしきもののさまや、こは何ぞ」と問はせ給ひければ、「しかじかとなむ申す。廻して御覧じおはしませ。興あるものに」など申されければ、、、、(次回に続く)
この殿(藤原行成)はコマに濃淡のぼかしが入った色の紐を添えて皇子に差し上げたところ、皇子が「へんてこな形だなあ、これは何か?」と行成にお尋ねになったので、行成が「これこれと申します、回してごらんなさいませ、面白いものでございます」などと申し上げたところ、、、、
N君:主語や目的語がバンバン省略されて話の筋が見えなくなるパターンです。登場人物は行成と皇子の二人だけですが、身分から言って行成よりも皇子が上です。その行成も筆者から見ればはるかに高位の貴族です。この「筆者<行成<皇子」の関係に気を配りながら敬語をチェックしていって解読する、という作業が必要になります。
This lord, Fujiwara Yukinari, handed the prince a top with a gradation-colored cord. The prince asked Yukinari, "What an odd shape it is ! What is this ?" Yukinari answered, "This is what is called as a top. Please try turning it. I'm sure you will be interested in it."
S先生:第1文・第2文では lord は Lord が正しく、prince は Prince が正しいです。細かいところですが気を付けて下さい。第4文の what is called as a top「コマと呼ばれているもの」の as を除外して下さい。call A B「AのことをBと呼ぶ」が正しく、call A as B は誤りです。第5文の try turning it「試しに回してごらん」はこれで正しいです。try to turn it「頑張って回せ」との違いをもう一度確認しておきましょう。以前にも出てきましたが「try や remember は次に動名詞が来るか不定詞が来るかで意味が違う」のです。
This Lord, Fujiwara Yukinari, gave the Prince a top with a dark and light colored string. The Prince asked Yukinari, "What is this odd-looking thing ?" Yukinari said, "This is what we call a top. Why don't you try spinning it ? It will please you very much."