古文研究法47-1 竹取物語:(車持の皇子)「この枝を折りてしかばさらに心もとなくて、船に乗りて追風吹きて四百余日になむまうで来(き)にし。大願の力にや、難波より昨日なむ京にまうで来つる。さらに潮に濡れたる衣をだに脱ぎ替へでなむ、こちまうで来つる」と宣へば、、、
「この蓬莱の玉の枝を折ってしまったので一層気がせいて、船に乗り風が吹いて四百日余りで帰って参りました。神仏の御加護のお陰なのか、難波から昨日やっと帰京しました。潮に濡れた着衣を全く着替えることさえせずにこちらへ参上した次第です」と車持皇子がおっしゃったので、、、、
N君:車持の皇子がかぐや姫に依頼された蓬莱の玉の枝を持ち帰ったと称して、姫に航海中の苦労話をしている場面です。「さらに」は「よりいっそう」、「心もとなくて」は「気がせいて(早く京へ帰りたい)」という気持ちを表しています。「さらに~否定語」は not ~ at all「全く~でない」の意味です。
Prince Kurumamochi said in an exaggerated tone, "Snapping off this branch at last, I was impatient to return. I got on a ship. It took more than four hundred days to come back here in spite of a favorable wind. I was able to get back without accidents probably because I prayed to see you. Finally I came back to Kyoto via Naniwa yesterday. So I had no time to change my clothes wet with sea water. I visited here in a hurry."
S先生:文章の構成はスッキリしていて良いのですが細かいところで指摘があります。第1文の branch は一般に「大きな枝」なので、ここでは twig「小枝」が適切でしょう。第3文の pray to do はいけません。pray はこういう使い方をしないので pray+that 節 の形にするのが無難です。ここでは I prayed that I could see you. くらいが良いと思います。第6文の I visited here は訳文通りに英作したようですが不注意でした。今、現にここに帰ってきている、のですから、現在完了が適切です。I have come to see you in a hurry. くらいが良いでしょう。この感覚は英作文ではかなり大切なことなので今後注意しておいて下さい。
"After I had broken off this twig for you, I became very impatient to return to you. Sailing before the wind, I was able to return home in more than four hundred days. Thanks to my prayer for safe sailing, I managed to go back to Kyo by way of Naniwa yesterday. I have come to see you in a hurry without changing my clothes wet with saltwater," said Prince Kurumamochi proudly.
N君:先生の第1文にある for you や to you は必要なのですか?
S先生:無ければ無いでもよいですが、あったほうが車持皇子のはやる気持ちを表現できると思って書きました。特に for you はあるほうが良いでしょう。
N君:第2文の sail before the wind は「追い風を受けて航行する」の意ですか?
S先生:明確なイディオムではありませんが sail+前置詞 で締まった表現になると思ってこのように書きました。追い風を受けている感じが出ているでしょう? 英文を読む時に「自動詞+前置詞」の「動きのある締まった表現」に着目してみて下さい。きっと作文力向上に役立つと思いますよ。