kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第275回 2021.12/18

帚木10,11,12,:近き御厨子(みづし)なる色々の紙なる文どもを引きいでて、中将わりなくゆかしがれば、(源氏)「さりぬべき少しは見せむ。かたはなるべきもこそ」と許し給はねば、(中将)「そのうちとけてかたはらいたとおぼされむこそゆかしけれ。おしなべたるおほかたのは、数ならねどほどほどにつけて書き交わしつつも見侍りなむ。

頭中将が来ている。中将は、戸棚にしまってある源氏宛の色とりどりの手紙をあれこれひっぱり出してはその中身を読みたがる。源氏は「そんなに言うならとくに差しさわりのないやつだったらちょっとは見せてあげてもいいですよ。だけど中には見せると不都合なものもありますからね」と、中将が勝手に見るのを許さない。(中将)「いやいや、そういう差しさわりのあるような親密な人からの手紙、見られて気恥ずかしいもののほうをを見たいんですけどねえ。そこらのありふれた手紙だったら、僕のようなつまらない男だってまあそこそこに遣り取りして見ていますからね。

N君:今回は見慣れない古語がたくさん出て来たので、英訳のまえに調べておきたいと思います。やはり古語のちゃんとした意味が分かってないと英訳してもしっくり来ませんからね。「厨子」は「両開き型の戸棚」とのことでした。そういえばこの前、法隆寺だったかその隣の中宮寺だったかに行った時「玉虫厨子(たまむしのづし)」を見ました。国宝でした。たしかに両開きの戸棚でした。「ゆかし」は「見たい聞きたい触りたい」つまり「興味があるので触れ合いたい」みたいな感覚の形容詞です。松尾芭蕉の句に「山路来て何やらゆかしすみれ草」というのがありました。形容動詞「かたはなり」は「不都合な、きまりの悪い」という意味、形容詞「かたはらいたし」も「気恥ずかしい」の意なので、似ていますね。語幹が同じなので意味も似ているのでしょうか。

The General was also in the room with Genji, eagar to draw out lots of letters addressed to Genji from women and anxious to read them.  Genji was reluctant to let him read them and said, "O.K., If you insist that, I can let you see some letters which seem to pose no troubles.  But I would like to conceal other ones which may create a stir."  The General returned reproachfully, "Oh,no, all I want to see are the letters from your intimate lovers which you think are awkward with other's eye.  Sorts of common letters are usually dealt even by me, an ordinary man. 

S先生:第1文の滑り出しはとても良かったのですが、第2文から怪しくなってきます。まず第2文の insist that ですがこれはいけません。insist は直接的な形で目的語を取らない。He insisted on my paying the money. = He insisted that I should pay the money. とか、If you insist, I will lnd you some money.  のように、通常のSVOの形にはなりません。第2・3・4文の関係代名詞節に共通して言えることは「表現が硬すぎる」ということ。文法的には正しいのですが、欧米人はたぶんそういうふうには言わないだろう、と思います。たとえば第4文の which you think are awkward with other's eye は挿入句も入って凝った造りになっていますが, which you want to fide from others のほうが明らかに素直で分かり易い表現ですよね。その「理系的な硬さや理屈っぽさの鎧を脱いでこちら側へ来てごらんよ」と言ってあげたい。第5文も硬すぎる。Though I am an ordinary man, I am exchanging letters with my lovers in some way or other. くらいの平易な文のほうがよいと思います。数学や物理がよくできるN君が、国語や英語で必要なことはただひとつ「気楽にやる、難しく考えない」ということであろうと私は思います。英作文に限って言えば「簡潔に書く」ことを心がけてほしい。

Chujo was in the room.  Pulling out this letter and that laid beside Genji, he was very anxious to read them.  "If you want to read them so eagarly, I don’t mind your reading some of unimportant letters.  But there are some I can't let you read," said Genji.  He would not permit Chujo to read them as he liked.  Chujo answered back in a reproachful way, "Oh, the letters from your intimate lady which you want to hide is just what I would like to read.  Even I, a good-for-naught, am exchanging letters with my lovers. 

N君:「気楽にやる、難しく考えない」「簡潔に書く」を肝に銘じてやりたいです。naught は「ゼロ」、good-for-naught は「ぐうたら、役立たず」。

S先生:肝に銘じるとまた硬くなるので、あくまでも気楽に、ね。