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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第269回 2021.12/12

帚木4:しのぶの乱れやと疑ひ聞こゆる事もありしかど、さしもあだめき目なれたるうちつけのすきずきしさなどは、好ましからぬ御本性にて、まれにはあながちにひきたがへ、心づくしなる事を御心におぼしとどむる癖なむあやにくにて、さるまじき御ふるまひもうちまじりける。

これを左大臣かたでは、もしやどこかにお心を乱される女でもできたのではないかと疑心暗鬼になっていたが、いやいや実際のところ、源氏はそういう浮ついたどこにでもあるような軽はずみな浮気沙汰などは好まない性分であった。それでもまれまれにはよせばいいのにと思われるような身分違いやら何やら、気苦労の種となるような恋ばかり一心に思い詰めるというところがあるのが、あいにくなところで、そのためあまり芳しからぬ行状もなくはなかった。

N君:「しのぶの乱れ」って何? とまず思ったので調べてみたところ「乱れ」=「心の乱れ」=「源氏の心をまどわす女」がまずあって、それにつきものの「しのぶ」があとから付いてきた、ということらしいです。「しのぶ」は忍草を指すこともあるのですが、ここでは福島県信夫地方で作られる乱れ模様の衣類の意味です。乱れ、といえば、しのぶ、という関係が当時あったのでしょう。百人一首No.14河原左大臣(源融光源氏のモデルと考えられている人物) : 「陸奥(みちのく)のしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに」の中にも「しのぶ」と「乱れ」が仲良く登場しています。

From his attitude like this, the Minister's family were wondering whether Genji might happen to see a tempting woman somewhere.  But he intrinsially disliked such silly and imprudent affairs which could be seen everywhere.  On the other hand, at times he was devoted to blind loves which included various kinds of problems like the difference in social rank.  Like this, he naturally tended to be easily obssesed by one thing, and people around him used to worry about the future of his affairs.  At any rate, it was true that his single-minded character led to some indecent behaviors.

S先生:今日のN君の作文は普通の先生から見たら、良くできている、と言われると思いますが、普通より厳し目の基準で直しを入れようと思います。まず第1文の wonder+whether節 「~かしらと思う」ですが、これ自体重要な言い方で、何も間違ったところはありません。しかしこの場面では左大臣家の人々は「~かしら」どころではなく、源氏の行動を完全に疑っているわけですから、wondering を doubting に変えましょう。次に第3文の be devoted to~「~にのめりこんで」は好ましい事に執心する時に使われますから、この場面ではちょっと違いますね。能動態で indulged in くらいに変えましょう。例文を挙げておきましょう。He devoted himself (was devoted) to studying.  とか、She devoted herself to her sick father.  等です。「悪い事にふける」のほうは、He indulges in a bad habit. のようになります。最後に第4文の use to ですが、第250回の英作談義を思い出して下さい。used to do は「昔~だったが今は違う」の意で、今と昔の対比に重点が置かれているのに対して would often do は「昔~だった」と回想する意でした。often はなくてもよいです。同じ昔の習慣的なことを言う場合でも両者は微妙に異なるので、今回の場合にどちらが適当か考えてみた時に、used to worry about ~ ではなくて would worry about ~ のほうがよいでしょう。今日の3か所はどれも微妙なことばかりでしたが、このあたりまで神経が行き届くと作文マスターになれるでしょう。ちなみに第250回を見ると、私が「used to do と would often do の違いは細かいので気にしないでください」と言っておりました。

Noticing this, the Minister doubted if Genji might have an affair with some lady.  But no, he was not of such a capricious and imprudent nature.  Nevertheless, he sometimes have an affair with a lady different in rank, which should have been avoided.  Unfortunately, we must say that his conduct was not so well.

N君:第1文末ですが、affairs with some ladies だと思います。

S先生:この some は「幾人かの」ではなくて「(誰かは知らないが)とある」の意です。よって an affair with some lady でよいのです。このように話者あるいは筆者が、その対象のことを知らないまま「ある~」と言いたい時には some を使い、逆にその対象のことを知ってはいるが何かの理由でその名を伏せて「ある~」と言いたい時には certain を使います。つまり、some lady「誰かは知らぬがとある女性」、a certain lady「(名は知っていてここでは伏せておくが)とある女性」ということです。