2021-07-08から1日間の記事一覧
帚木4:しのぶの乱れやと疑ひ聞こゆる事もありしかど、さしもあだめき目なれたるうちつけのすきずきしさなどは、好ましからぬ御本性にて、まれにはあながちにひきたがへ、心づくしなる事を御心におぼしとどむる癖なむあやにくにて、さるまじき御ふるまひもう…
帚木3:まだ中将などにものし給ひし時は、うちにのみさぶらひようし給ひて、おほひとのにはたえだえまかで給ふ。 源氏がまだ近衛府の中将というような位にあった頃には、宮中に居るのだけを居心地の良いことに思って、妻の待つ左大臣邸には時々しか退出する…
帚木2:さるは、いといたく世をはばかり、まめだち給ひけるほど、なよびかにおかしき事はなくて、交野(かたの)の少将には笑はれ給ひけむかし。 とは申せ、源氏はたいそう世の評判を気にしてできるだけまじめぶって過ごしていたから、それほどなよやかに色め…
帚木1:光る源氏、名のみことごとしう、言い消たれ給ふとが多かなるに、いとどかかるすきごとどもを末の世にも聞き伝えて、かろびたる名をや流さむと、しのび給ひける隠ろへ事をさへ、語り伝えけむ人のものいひさがなさよ。 光源氏と名ばかり厳めしいのだが…