古文研究法108-1 大鏡より:天延二年、もがさのおこりたるわづらひにて、前少将は朝(あした)に失せ、後少将は夕(ゆふべ)にかくれたまひしぞかし。一日がうちに二人の子を失ひたまへりし母北の方の御心地はいかなりけむ、いとこそ悲しう承(うけたま)はりしか。
天延2年、天然痘が流行したのに感染して前少将(兄)は午前に、後少将(弟)は午後にお亡くなりになった。1日のうちに2人の子を失った母親の御心はどんなだったろうか、(その話を筆者は)誠に悲しく承った。
N君:「もがさ」は「天然痘」、「北の方」は「高貴な男の奥さんの総称」です。今回は分かり易い内容でホッとしました。
On the same day in the second year of Tenen, the elder brother general passed away before noon and the younger brother general died in the afternoon because they were infected with smallpox. How seriously did their mother feel sad ? It is rare to lose two sons simultaneously, isn't it. Hearing the news, I felt verry sorry for her.
S先生:今回はN君の悪い所が出ました。そう、重くて硬いのです。第1文末にある because 節は重いので、分詞構文にして主節の前に持って来るのが良いと思います。つまり、On the same day in the second year of Tenen, infected with smallpox, the elder brother general ~ としましょう。第2文 How seriously did their mother feel sad ? も硬いです。そもそも副詞 seriously の意味は How の中に含まれているのですから、疑問文ではなくてもっと簡潔に How sad their mother felt ! という具合に感嘆文で表現する手もありますね。
Smallpox prevailed in the second year of Tenen. The Upper General, who caught the disease, passed away on the morning of a certain day, and his younger brother, the Lower General, did on the afternoon of the same day. How sorrowful was their mother who lost her two sons in a day ! I felt verry sorry for her to hear the news.
N君:先生の第3文は感嘆文のようですが語順は疑問文です。
S先生:感嘆文なので普通なら How sorrowful their mother was ! とすべきなのですが、their mother に関係代名詞がくっついて重くなったため後置した結果、いかにも疑問文のような語順になってしまった、というのが真相です。それほどに軽前重後は重要視される、ということです。それからいつも言っていることですが、第2文の a certain day が some day ではないことに注意をしておいて欲しいです。