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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第267回 2021.12/10

帚木2:さるは、いといたく世をはばかり、まめだち給ひけるほど、なよびかにおかしき事はなくて、交野(かたの)の少将には笑はれ給ひけむかし。

とは申せ、源氏はたいそう世の評判を気にしてできるだけまじめぶって過ごしていたから、それほどなよやかに色めいた浮気話もなくて、もしこの時分の源氏のありさまをあの色好みで名高い「交野の少将」の物語の主人公に見られたら、さぞ嘲り笑われたことであろう。

N君:「交野の少将」って誰? ということでネットで調べたところ、枕草子源氏物語に逸話として登場する美男子、とのことでした。清少納言紫式部が生きた西暦1000年ころよりも少し前の時代の有名人だったようです。

However, Genji was very careful of his own reputation and looked sober in everyday life, so he did not necessarily have conspicuous affairs of unfaithfulness.  If the hero in "The story of General Katano," which is famous for its amorous texture, had seen Genji in these days, he would have snorted his trivial things.

S先生:今回もいろいろ指摘事項があります。第1文の not necessarily は部分否定の重要な言い方で、N君の作文を訳すと「源氏は必ずしも目立った不貞行為を働いたわけではなかった」となりますが、原文の意味は「この時期の源氏には不倫などなかった」ですから、部分否定を使う必要がないのです。よって necessarily を除外して単純な否定文にしましょう。第2文の texture は重要単語で「肌ざわり、舌ざわり、文脈」のようなホワーンとした和風の言葉です。それだけに使い方も難しい。N君はおそらく文脈の意で使ったとは思いますが、ここはたとえば content くらいのほうが適当でしょう。ホワーンとした和風の名詞で私が重宝している単語に demeanor「物腰」があります。attitude「態度」や behavior「ふるまい」と似ているけれどもどこかとらえどころのない単語です。そういう意味で texture と demeanor には私なりの秘かな共通点を感じているのです。同じく第3文の in these days に問題を感知しました。おそらくN君は、訳文中の「この時分」に引っ張られて these を使ったのでしょうが、these を使うと「今」を意味するようになってしまう。「この」は「その」なのです。つまり紫式部が執筆している今から見て「まだ源氏が若かったころ」の意なので those を使うべきだと思います。日本語に騙されないようにしましょう。最後に第3文主節を眺めた時に、始めの he は交野少将、あとの his は源氏であって、この一文だけ見れば判定が難しいので「これは悪文だ」という主張もあり得るのですが、文脈を見れば「はじめが交野少将、あとが源氏」と分かるので、人称代名詞についてあれこれ文句を言うのもどうか? となるのです。このことは第265回のN君の質問にも出て来たことなので、ここでもう1回指摘させてもらいました。

Worrying about how people were gossiping about him, Genji led his days as soberly as he could.  So there was no remarkably amorous story.  If the hero of "The Tale of General Katano," famous as a lustful man, had seen Genji's diffident attitude, he would have made fun of him.

N君:lustful「欲の強い」、diffident「自信なさげな、遠慮がちな」をほぼ反対語として認識しました。S先生がおっしゃった通り、人称代名詞の問題は度々出てきますね。僕の第3文主節と同様にS先生の作文の第3文主節においても「はじめの he は交野少将、あとの him は源氏」になっています。