古文研究法95-1 徒然草137段より:望月のくまなきを千里の外(ほか)まで眺めたるよりも暁近くなりて待ち出でたるが、いと心深う青みたるやうにて、深き山の杉の梢に見えたる木(こ)の間(ま)の影、うちしぐれたるむら雲がくれのほど、またなくあはれなり。
満月が千里の向こうの方まで明るく照らしているのを眺めるよりも、明け方近くになって待ちに待っているうちにやっと出た月がたいそう趣き深く青白い感じで深山の杉の梢にかかっている木の間ごしに光を放っていたり、あるいはさっとひとしきり降ってゆく時雨の雲に姿を隠したりなんかする景色の方が、とりわけ趣き深い。
N君:「望月の~たる」というのは古文でよくある言い方で「満月で~した状態の月」の意。このような連体形には注意が必要です。「~のほど」というのは「月が(1)青白い感じで(2)木の間から光を放っていて(3)雲にかくれたりする、そういう状態」の意味です。訳文では「月が(1)(2)(3)している景色」と訳しています。「またなく」は「とりわけ」。
You will like to see the fullmoon shining brilliantly through the land a thousand miles away from here. But more tasteful is the pale moon which emerges finally before daybreak after you have been waiting for its rising. More elegant is the moon which glitters through the branches of cedar trees growing on a high mountain. More attractive is the moon which disappears behind clouds flowing away after a temporary dizzle.
S先生:第1,2,3,4文すべてに言えることですが moon の定冠詞がどうなのか? と思いました。月の色々な状態のひとつひとつについて述べているので、定冠詞よりも不定冠詞にしたい、と思いました。第2,3,4文では、主部が長いので後置して述部を前に持って来たのは大変良かったです。さてでは各論に入りましょう。第1文の through はちょっと違うと思います。普通の感覚ではここは on でよいのでしょうが、onto の方が動きが感じられてより良いと思います。文末の from here はクドイ感じがするので思い切って除外しましょう。第3文の growing on もちょっと大仰なので簡潔に in にしてしまいましょう。同じ理由で第4文の flowing away も除外したいと思いました。
It makes you happy to see a fullmoon shining brightly to the end of the land. But you will feel more attracted when you watch it before dawn after you have been waiting for long. Above all, you will be more fascinated when it shines palely through the tops of the cedar trees in a deep moutain, or when it hides itself into the clouds after a short drizzle.