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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第402回 2022.4/24

帚木324・325・326・327:(女君)「身の憂さを嘆くにあかで明くる夜は とり重ねてぞねも泣かれける」。ことと明かくなれば障子口まで送り給ふ。内も外も人騒がしければ、ひきたてて別れ給ふほど心細く、隔つる関、と見えたり。御直衣(なほし)など着給ひて南の高欄にしばしうちながめ給ふ。西面の格子そそきあげて人々のぞくべかめり。

女君は「我が身の辛さを嘆いても、嘆ききれないうちに明けてしまった夜は、鶏が何度も鳴くのに重ねて、私もついつい泣けてしまいます」と、そんな歌を返した。ますます明るくなってきたので源氏は女君を障子口のところまで送っていった。邸の内も外ももう人の気配で騒がしくなってきている。障子口のところで戸を閉めて別れるとき、源氏には心細い思いが募り、その締まっていく戸が二人を隔てる関所のように見えた。それから源氏は普段着の直衣などを着て、南の勾欄ひしばし寄りかかって物思いに耽っている。その様子を、西面の格子を引き開けて例の女房達が覗き見しているようだ。

N君:古語辞典を引いてみると「ながめる」には3種類あります。第1は「詠(なが)める」でこれは「声を出して謡う」の意。第2は「眺める」でこれは「遠くの景色を見る」の意。第3は同じく「眺める」ですがさっきと違って「物思いに耽る」の意であり、ここでは第3の意味で登場しています。「ながめる」で有名なのは百人一首No.9小野小町:「花の色は移りにけりないたづらに 我が身世にふるながめせしまに」です。降る長雨、経る眺め、が重層していて、「しとしと降る雨を眺めながら自分の人生をふりかえって物思いに沈んでいる様子」がありありと浮かびます。短い言葉の中に何通りもの意味を重ねて、歌に深みをもたらしているのが分かります。こういう技法を掛詞(かけことば)と呼ぶらしいです。

She returned him a poem : "The day has broken before I did not have enough time to lament for my misfortune.  I cannot help dropping tears with the cocks crowing repeatedly at dawn."  As the sky grew lighter, Genji sent her to the exit of his bedroom.  The sign of people going in and out has already set the place abuzz inside and outside of the villa.  When he had to bid farewell to her at the paper screen, he, feeling lonely and helpless, saw the door being closed as if it were a barrier to keep him away from her.  Then he changed from his pajama into a Noushi, an everyday dress.  Leaning slightly on the southern handrail, he was lost in a deep thought, which seemed to be a suitable scene the ladies-in-waiting peeped through the western latticed door.

S先生:今日はいくつか指摘があります。第2文後半の「付帯状況を示す with の句」はこれで良いと思います。ついでなので付帯状況の with についてまとめておきます。「with+O+※」で、※のところに現在分詞・過去分詞・形容詞・前置詞句などが入って付帯状況を表します。例文を見てみましょう。With night coming on, I started home.「夜になって家を出た」。He sat with his leg crossed.「足を組んで座った」。Don't speak with your mouth full.「口の中に食物がある状態でしゃべるな」。She talked with tears in her eyes.「涙を浮かべて話した」。作文するときにはこのような言い方がとても便利ですし、何よりも文章が締まるのでどんどん使っていきましょう。第4文は冗長で、前半の going in and out と後半の inside and outside が重なって読み辛い。この文は大幅な変更が必要です。The place had been abuzz with the people coming in and going out from the villa.  くらいでどうでしょうか。過去完了時制にするのが良いと思いました。第7文後半の a suitable scene the ladies-in-waiting peeped「女房どもが覗き見したのに好適な景色」というこの発想がいけません。ここは a scene suitable for the ladies-in-waiting to peep というふうに変更して下さい。英語らしさがグッとアップしますね。たとえば a good book children should read「子供が読むのに好適な本」は間違いではないがなんとなく硬くて重い感じがします。これを a book good for children to read とすればグッと軽くなります。a good book for children to read という意見もあるかもしれませんがそれはもう一歩なのです。はじめに a book という結論が来てその後に長い説明が付く、という形が好まれるのです。欧米人のこの発想に、我々は慣れていく必要があるのです。これはちょっとしたことなのですが、日本人にとってものすごく大きな発想の転換を必要とするポイントなのです。

She returned a verse to him : "The day has broken while I am crying over my unlucky life.  As the cocks are crowing over and over again, so am I begining to cry."  It was getting lighter and lighter.  Genji saw her to the door.  The residence had been noisy inside and outside.  When he shut the screen door to bid a farewell to her, he felt very lonely, for it looked like a barrier to separate him from her.  In a casual dress Genji was leaning against the south railing for a while, lost in thought.  The ladies-in-waiting seemed to be peeping at him through the west latticed door.

N君:先生の第3文で (Just) as A, so B「ちょうどAのように、Bした」の形を思い出しました。B部分では強調のために助動詞が飛び出してきた、と考えてよいですか。

S先生:その通りです。この Just as A, so B は作文で度々使いたくなる形なので、是非ともマスターして下さい。

N君:先生の第4文 see her to the door はどういう意味ですか。

S先生:「彼女をドアのところまで見送った」の意です。see にはこのような意味があるのです。大修館の辞書には see him to the bus「彼をバス停まで見送る」という例文が出ていました。

N君:今日の a book good for children to reed の話は心に刺さりました。英語ってこういう所が大切なんですね。

S先生:そうなんです。なんでもないことなのですが、なかなか気付かないのです。