帚木178・179:(中将)「式部がところにぞ、気色ある事はあらむ、少しづつ語り申せ」と責めらる。(式部)「しもがしもの中には、なでふ事か聞こしめし所侍らむ」と言へど、頭の君(=頭中将=中将)まめやかに「おそし」と責め給へば、(式部)「なにごとをとり申さむ」と思ひめぐらすに、(式部)「まだ文章の生に侍りし時、かしこき女のためしをなむ見給へし。
「おっと、式部、君のところにも、さぞ、一風毛色の変わった恋の話があるだろう、それを少しずつ話してくれ」と、中将は黙っていた藤式部を責め立てた。式部は「いやいや、私のような下々の者の所には、お聞かせするような面白い話など、ろくにありませんよ」などと言ってしり込みするのだが、中将は許さない。「遅いぞ、サッサと話せよ」と催促するので、式部は、さて何を話そうかとしばし思案顔あったが、ようやく話し始めた。「あれはまだ私が文章道の学生だった頃のことなのですが、えらく利発な女がいましてね。
N君:左馬頭の指食い女・見せびらかしの琴女、中将の失踪女、に続いて、式部の利発女の話が始まりました。
"Well, Shikibu, why don't you tell us one or two interesting tales about your lovers ? You had better present them one after another." Chujo urged Tou-Shikibu to speak because he had kept silent for a long while. Shikibu replied hesitatingly, "Oh,no. There are few interesting stories for a low rank officer like me." But Chujo didn't forgive him. "Hurry up. You must make a confession." Being sored by Chujo's encouragement, Shikibu was barely inclined to speak something. He was casting about for an appropriate story. "O.K. I will tell you a story about an extremely wise woman whom I met in my school days. I was so called a Monjosei at a Monjo-school.
S先生:第2文の present them に違和感ありです。present は「提出する、提示する」の意であり、ここにはそぐわない気がします。はっきりと confide your secrets とするほうが良いと思います。それに続く副詞句 one after another「順々に」もここではちょっと違うでしょう。You had better confide your secrets. で一旦ピリオドを打って、Only a few will do.「少しでいいから」としてみてはどうでしょうか。第10文は、受け身の分詞構文から始まっていますが、冒頭の Being は通常省略されるので、ここでも除外しましょう。Being を除外した後に、Sored を持ってくるより、Instigated 「非難にそそのかされて」を使ったほうが良いでしょう。とすると、その次の by Chujo's encouragement の encouragement はそぐわなくなるので、by Chujo となります。このほうが簡潔で良いです。第11文は、Shikibu was barely inclined to speak something.「式部はかろうじて何か話す気になった」との作文ですが、原文の伝える意とは違うと思います。Shikibu was too perplexed to know what to talk about.「狼狽して何を話してよいか分からなかった」としてみてはどうでしょうか。第15文の不定冠詞に異議あり、です。文章生Monjosei という日本語には、単数であっても a や an を付けないし、複数であっても s や es を付けません。だからここは I was so called Monjosei でよいのです。たとえば、畳Tatami という日本語には不定冠詞は付かないし、複数形にもなりません。ただし、tatami mat になると話は別で、a tatami mat とか tatami mats とかになります。最後の at a Monjo-school ですが、学校名に冠詞は不要です。今回は大きなミスはなかったものの、細かいことが色々ありましたね。少しづつ改善して、英語らしい英語を書くようにしていきましょう。
”Well, Shikibu, you must have strange love stories. Why don't you tell us about them ?" Chujo urged Shikibu, a man of few words, to express himself. ”Oh, no, a lower man like me has no interesting story to tell you about," said Shikibu hegitatingly. But Chujo obstinatedly demanded, "Hurry up ! Answer Quickly !" Shikibu was at a loss what to talk about. After pondering for a while, he said, "Now let me talk about my affair. It was when I was a student that I met a very smart lady.
N君:先生の作文の最後のところに出て来る a smart lady は「スタイルの良い女性」かと思ったら、「頭の良い女性」という意味でした。スマホもそういう意味なんですね。日本語英語の怖いところです。
S先生:wise「賢明な、思慮分別のある」、intelligent「知能が高くて物分かりの良い」、clever「器用かつ利口な」。この clever をもう少し口語的にして、いくぶん foxy な要素を加えたのが smart です。スマホのみならず、たとえば建設業界には smart building という言葉があります。ただのビルではなく、Wifi・照明・空調・エレベーター・水回り・清掃などの情報が一括管理されて手間のかからない「おりこうさんビル」というところでしょうか。