桐壺47:野分だちてにはかに肌寒き夕暮れのほど、常よりもおぼし出づる事多くて、ゆげひの命婦といふを遣はす。
やがて秋の嵐が吹いて急に肌寒くなった夕暮れ、帝はいつにも増して桐壺更衣のことが思い出されて、靫負(ゆげひ)の命婦という女房を使者として桐壺更衣の里へ遣わした。
N君:Before long an autumn storm blew and it became cold suddenly. In such a dreary evening, the Emperor recalled the late Kiritsubo more keenly than usual, and sent a lady-in-waiting named Yugei-no-Myoubu to Kiritsubo's private house for condolence.
S先生:before long「やがて、すぐに」の意で soon に近く、比較的よく出てくるので慣れておきましょう。condolence 「お悔み」ですか、なるほど。桐壺更衣のお父さんは大納言だったので私の作文では house ではなくて residence にしてみました。
One autumn evening when a cold wind was blowing bleakly, the Emperor recalled Kiritsubo more keenly than usual, and sent off a lady-in- waiting called "Yugei no Myoubu" as a messenger to Kiritsubo's resudence.
今回は短く済んだのでいつものように少し英作談義をしてみましょう。丁寧な依頼を表す「 I wonder if節(whether節)」について考えます。
(1) I wonder if you can help me.「ちょっと手を貸してもらえませんでしょうか?」
(2) I wonder if you could help me.
(3) I wondered if you could help me.
(4) I was wondering if you could help me.
1 → 2 → 3 → 4 へと進むにつれてより丁寧な表現になります。3 と 4 の主節が過去形になったのは何故でしょうか。if節の中の仮定法過去につられて主節も過去形になったのかもしれないね。すると文が全体として長くなり丁寧な感じを醸し出しているのかもしれません。生徒の皆さんは 1 のみ分かっていれば充分で、2,3,4 が出てきたら「時制云々ではなく単に丁寧になっただけ」ととらえておくのが良いと思います。
N君:時制の問題は数学の公式のように思っていましたが、そうではない「曖昧な側面」があることに気付きました。