2021-04-14から1日間の記事一覧
桐壺82:このごろ明け暮れ御覧ずる長恨歌の御絵、亭子院のかかせ給ひて伊勢貫之によませ給へるやまと言の葉をも、もろこしのうたをも、ただそのすぢをぞまくらごとにせさせ給ふ。 このごろ明け暮れに御覧になる長恨歌の絵巻物があって、その絵は宇多天皇のご…
桐壺81:おまへのつぼ前栽(せんざい)のいとおもしろき盛りなるを、御覧ずるやうにて、しのびやかに心にくき限りの女房四五人さぶらはせ給ひて、帝物語りせさせ給ふなりけり。 御殿の御前の坪庭には秋の草花がたいそう美しく咲き誇っている。帝はそれを御覧に…
桐壺80:命婦は、まだ大殿籠らせ給はざりけるとあはれに見奉る。 命婦が帰参すると、帝はまだおやすみになっておられず、ああまどおやすみになることもできないんだわ、と帝のお姿にしみじみ感じ入った。 N君:When Myoubu came back to Court, the Emperor …
桐壺79:若き人々、悲しき事はさらにも言はず、うちわたりを朝夕に慣らひていとさうざうしく、うへの御ありさまなど思い出で聞こゆれば、とく参り給はむ事をそそのかし聞こゆれど、かくいまいましき身の添ひ奉らむもいと人聞き憂かるべし、また見奉らでしば…
桐壺78:をかしき御おくりものなどあるべき折りにもあらねば、ただかの御かたみにとてかかる用もやと残し給ひける御さうぞくひとくだり、御ぐしあげの調度めくもの添へ給ふ。 こんな折も折だから、とりたてて趣深い土産などあるわけもなかったが、ただ、亡き…
桐壺77:(母君)「いとどしく虫の音しげき浅芽生(あさじふ)に 露おきそふる雲のうへ人。かごとも聞こへつべくなむ」と言はせ給ふ。 「『こんなにおびただしく虫も鳴き私も泣いている草深い宿に、なおもまた新しく涙の露を添えて下さる雲の上の人ですこと』。…