kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第783回 2023.5/10

古文研究法132-4 大鏡より:(某の主の心中)「げにかばかりの祝ひの御事、また今日になりて停(と)まらむも忌々(いまいま)しきに。やをら引き隠してあるべかりける事を心肝なく申すかな」、いかに思(おぼ)しつらむ」と、後にぞかの殿(=某の主)もいみじう悔い給ひける。さる事なりかしな。さればなでう事かはおはします、良き事にこそありけれ。

「全くのところこれほど重大な祝典の儀がいまさら当日になって中止なんていうのは不吉千万なので、そっと内密に伏せておくべきだったのに思慮なく申し上げたものだ、兼家公は私のことをなんと腹の座らぬ奴よとお思いになったろう」と、某の主はひどく後悔した。誠に当然の処置でした。兼家公がこの件を無視したからといって、何も別段奇妙な事が起こったわけでもなく、万事めでたしめでたしでした。

N君:もっと面白い結末を期待していた僕でしたが、ちょっとガッカリしました。平安時代における高位高官の無責任体質をよく表したお話でした。「今日」は「当日」です。「いまいまし」は「不吉だ」の意味です。忌々しい、という漢字を充てると納得します。「やおら」は「意図的に」です。その次の「さればなでう事かはおはします、」という呼びかけ的な文章の解釈が難しい。「されば」は「もし兼家公がこの件を無視したならば」です。「なでう事」は「いったいどんな事が」です。「かは」は反語。「おはします」は「ある」を丁寧に言った言葉ですから、全体として「もし兼家公がこの件を無視したからといって、いったいどんな事があるというのか、何もない」という意味です。このあたりは僕の古文の実力でギリギリ理解できるラインです。

Leaving the room, the man said to himself with regret, "I should have hidden the affair because it is indeed ominous to suspend such a great ceremony on the very day.  I was thoughtless.  I guess the Lord thought I was a chicken-hearted man."  It was natural for the man to treat the happening in secret.  Nothing odd occurred especially because Lord Kaneie neglected that.  And they lived happily ever after.

S先生:主語や代名詞の使い方にやや硬さが残るものの、全体的な構成はとても良いと思います。「硬さ」は一面「正確さ」にも通じており、理系のN君らしい作文になっています。

On the way home, he said to himself again with great regret, "How ominous it is for such an impotant ceremony to be called off on the very day !  What a foolish man I was to thoughtlessly inform the Lord of the cancellation which should have been kept secret !  Lord Kaneie must have thought that I am a man with no guts.  How shameful !"  But I think it was dealt with properly.  Nothing strange seemed to have happened just because the Lord made light of the affair.  Everything went well and well !

N君:先生の第2文 What a foolish man I was to thoughtlessly inform the Lord of the cancellation「思慮もなく祝典延期の件を兼家様に伝えるなんて、私はなんて馬鹿な男なんだ」の to thoughtlessly inform はなんだか変な恰好をした不定詞ですね。

S先生:副詞が to do の間に割って入った形を分離不定詞 split infinitive と呼んでいます。これは昔から論争のある所で、「こんな形を認めるべきじゃない!」と文句を言っている学者さんも居るくらい。しかし実際には時々見受けられます。I wish to utterly forget my past.「過去をすべて忘れたい」。I wish to forget my past utterly. と言えば済むところをわざわざ分離不定詞にするのはアザトイ感じもありますね。副詞のみならず副詞句が割って入ることもあります。I do not intend to in any way object to your opinion.「あなたの意見に反対する気などサラサラありません」。分離不定詞は一種の強調のようにも感じられますね。

N君:先生の第6文に just because が出ました。

S先生:Nothing particularly strange happened just because Lord Kaneie made light of the matter.「兼家公がその件を軽視したからこそ特段変な事も起きなかった」では、単に because とするよりも just because とするほうが感じが出ます。「軽視したからこそ」というよりも「軽視したからといって」という譲歩構文的な意味も含むようになります。またこの文を強調構文にすると、It was because Lord Kaneie made light of the matter that nothing particularly strange happened.「特段変な事が起きなかったのは兼家公がその件を軽視したからだ」となって、微妙に意味が違ってきますね。