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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第776回 2023.5/3

古文研究法130-1 十訓抄より:能因入道、伊予守実綱に伴ひて彼(か)の国に下りけるに、夏の初め日久しく照りて民の嘆き浅からざりけり。神は和歌に賞(め)で給ふものなり、試みに詠みて三島に奉るべき由(よし)を、国司(=実綱)しきりに勧めければ、(能因)「天の川苗代水(なはしろみず)に堰(せ)き下せ 天下(あまくだ)ります上(かみ)ならば神」と詠みてみてぐらに書きて社司して申し上げさせたりければ、、、、

能因法師が伊予守実綱にくっついて伊予国へ行ったところ、夏の初めに日照りが続いて人民の嘆きが深かった。「神様は和歌には大層感心なさるものだから、試しに歌を詠んで三島の神様へ奉納してみたまえ」と実綱が能因へ勧めた。そこで能因は「天の川の水を堰き止めて苗代用の水に落として下さい、上界から下界に降りてくるのが神様、それと同音の『雨下る』というシャレですが」と詠んで、(ぬさ)に書いて神官に命じてその歌を神様に奉納させた

N君能因法師百人一首No.69「嵐吹く三室の山のもみじ葉は」で有名な歌詠みです。歌枕の研究で有名な坊さんです。十訓抄は源氏物語に比べればはるかに読み易い文章でした。ここで僕が注目したのは、アーティスト(能因)がお金持ち(国司実綱)の庇護を受けて任国へ連れだって遊びに行った、という事実です。碁打ち・歌詠み・ミュージシャン・絵描き・役者・相撲取り・算術家、、、のような特殊才能を持った人々が居て、その人々を経済的にバックアップしようとするパトロンが居た、という構図です。日本史のみならず世界史は大昔から今現在でもこの構図で成り立っている、と僕は思います。「みてぐら」は「幣」の意。幣については第446回で詳しく取り上げたのでもう一度読み返してみて下さい。「AしてBさす」は漢文の使役構文の読み下しでよく出て来る言い方で「Aに命じてBさせる」の意。古文英訳をやっているつもりが、いつの間にか日本史や漢文ともつながりが出てきて、本シリーズの目的に叶った流れになっています。

Accompanied by Sanetsuna, the Governor of Iyo Prefecture, Priest Noin went there in summer.  He found that all farmers were suffering from a serious drought.  Sanetsuna said to Noin, "I hear that God will often admire a poem very much.  I would like you to try to compose a poem and dedicate it to God."  Noin made it : "Would you dam the stream of the Milky Way in heaven to use the water for a bed of rice seedings ?  It is God who falls down on the earth from the heaven.  The movement is the same as rain falls."  He wrote the poem on a piece of sacred cloth called Nusa, and told a Shinto priest to dedicate it to God.

S先生:第1文の Sanetsuna, the Governor of Iyo Prefecture という同格言い換え部分ですが、定冠詞を除外して下さい。同格の時はこの定冠詞は省略されるのが定番です。第2文の all farmers に違和感あり、です。一般に、all farmers と言う場合は「世界中の農民全員」という感じがあり、all the farmers と言った場合には「その地域に住んでいる農民全員」という感じがあります。ここでは伊予国の農民全員を指しているのですから all the farmers というふうに定冠詞を入れるのが良いでしょう。第4文に久し振りに try to do「頑張って~する」と try doing「試しに~してみる」の問題が出ました。この場面はどちらでも成立しますが、どちらかというと「試しに~してみる」のほうが適切だと考えられます。したがってここは try composing a poem and dedicating it to God としましょう。

When Priest Noin went to Iyo early in summer following Sanetsuna, Governor of Iyo, he was surprised to find that the district was dried up for a long time.  To their great grief, the farmers were at a loss as to what to do with the drought.  Sanetsuna said to Noin, "Since God loves a poem very much, why don't you compose it and dedicate it to Mishima Shrine ?"  This was his poem : "God, I pray that you will dam the stream of the Milky Way and let it flow down so that we can use it for the young rice plants.  As Gods descend from the heaven, so does the rain fall down."  He wrote this poem on a holy cloth and had a Shinto priest dedicate it to God.

N君:先生の第4文で「許可の let」、第6文で「依頼の have」が出ました。

S先生:これまで何度も言ってきたことですがもう一度簡潔にまとめておきます。同じ使役動詞とは言っても程度に差があって、「強制の make」は「命じて~させる」、「許可の let」は「~するのを許す」、「依頼の have」は「頼んで~してもらう」の意味になります。順に例文を挙げておきましょう。What made him stay home ?「あいつがどうしても家を出なかった訳は?」。My father let me drive his car.「父は自分の車の運転を僕に許可してくれた」。I must have him help me.「彼に援助してもらわないと」。