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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第687回 2023.2/2

古文研究法89-2 増鏡より:後鳥羽上皇が造営された水無瀬の院は)所がらも、はるばると川に臨める眺望いと面白くなむ。元久(げんきゅう)の頃、詩に歌を合はせられしにも、とりわきてこそは「見渡せば山もと霞む水無瀬川 夕べは秋となに思ひけむ」

水無瀬の院が造営されたその場所の有様も、はるばると川に臨んでたいそう趣深い。元久年間に藤原良経(よしつね)が主催して漢詩と和歌を合わせたコンクールをやった時その歌の中でも特に後鳥羽上皇はこの水無瀬の別荘で次のようにお詠みになった。「この景色を見渡すと山の麓まで霞んだ水無瀬川の春は何とも言えずキレイだ。夕方は秋に限る、などと思っていたがどうしてそんな見当違いをしていたのだろう、春の夕暮れも見事だなあ」。

N君:「詩に歌を合わせられし」というのは、藤原良経主催の漢詩・和歌ペアコンクールみたいな遊びでしょう。この良経は第513回に登場した、歌道における後鳥羽上皇の一の子分です。「キリギリス、さむしろ」の歌を百人一首に残しています。K先輩の解説によると、九条兼実の息子良経は、政治的には鎌倉執権北条氏の肩を持ったが、歌道の上では後鳥羽上皇に仕えようとした、ということでした。日本史の知識が奇妙に古文の知識に繋がってきました。「とりわきてこそは」の次に「かくぞ詠ませ給ひける」が省略されている、と小西先生が書いておられました。

The Minase villa has a tasteful view of a big river running down slowly from the remote mountains.  In the period of Genkyu when Fujiwara Yoshitsune held a contest of Japanese poems combined with Chinese ones, His majesty composed a marvelous poem as to the villa : "Looking over the grand landscape in spring, I have no words to describe the elegance of the Minase River whose vapor makes the foot of mountains hazy.  Untill recently I have been under a fixed impression that the evening scenery is best in autumn.  But why have I been beside the mark like that ?"

S先生:全体にやや冗長の感がありますが生徒の作文としては素晴らしく、試験ならほぼ満点をあげてもよいでしょう。

The view from there is worth looking at with a river far away.  In a certain year of the Genkyu Era Fujiwara Yoshitsune held a tanka party where they should compose a tanka combined with Chinese poem.  The ex-Emperor composed a poem about this villa in Minase : "The view here is beyond description.  The River Minase at the foot of the mountain is shrouded in a thick mist.  Though I have been convinced that the evening view from here is marvelous in autumn, I wonder why on earth I have made such a wrong guess."

N君:先生の第2文 where 節にある they は誰を指しているのですか?

S先生:歌会の参加者たち、を指しています。このように「文脈から推定できる指示代名詞」が断りもなく突然飛び出してくることがあります。

N君:shroud「覆い隠す」の用例を研究社の辞書で探しました。The airport was shrouded in a heavy mist.「空港は濃い霧におおわれていた」。

S先生:ちょっと脱線しますが、オーストラリア人の発音について気になっていることがあるのでここに記しておきます。today's paper をオーストラリアの人は「トダイズパイパー」と言っているように聞こえます。[ei] を [ai] と言っているように思います。先日TVを見ていたらオーストラリアの首相が the United Nations の Nations を [ナシャンズ] と発音していました。オーストラリアの俗語としてこのような発音をしているのかと思っていましたが、首相が [ナシャンズ] と言っているのを見て、教養とは無関係にこの発音をしているのだろう、と思いました。よく言われるのが often で、米国では [オフン] なのに英国では [オフトゥン] です。英語の発音は地域地域でかなり違っているのでしょう。日本でも鹿児島弁と津軽弁は全然違いますしね。