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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第666回 2023.1/12

古文研究法79-1 土佐日記:かくて京へ行くに、島坂にて人あるじしたり。必ずしもあるまじきわざなり。発(た)ちて行きし時よりは来る時ぞ人はとかくありける。これにもかへりごとす。夜になして京には入らむと思へば、急ぎもせぬ程に月出でぬ。桂川、月のあかきにぞ渡る。人々の曰く「この川、飛鳥川にあらねば、淵瀬さらに変わらざりけり」と言ひて、ある人の詠める歌、、、、

こうして土佐から京へ向かって行くと、途中の島坂である人が我々一行をもてなしてくれた。これはいつもあることではない(珍しいことだ、ありがたい)。京を出て土佐へ下って行った時よりは、京へ帰って来た時のほうが、人はこのように何やかやとしてくれるものだ。この人にもちゃんと返礼をした。夜になるのを待って京へ入ろうと思っていたので、さして急ぎもしなかったが、そうこうしているうちに月が出た。月光の明るい桂川を渡る。皆が言うには、「この川は飛鳥川ではないので、淵瀬が昔といっこうに変わっていないなあ」とのこと。そんな中で一行の一人が詠んだ歌、、、、

N君紀貫之が任国土佐から京へ帰って来たところの描写です。「主(あるじ)す」は「もてなす、接待のための宴会を開く」のような意味です。「必ずしもあるまじきわざなり」をそのまま訳すと「あまりないことだ」ですが、ここはもう一歩踏み込んで「こんなことまでしてもらってありがたいことだ」の意を含んでいることに気付きたい。少なくとも僕は気付きませんでしたが、小西先生はそう書いていました。「とかくありける」は、ここでは「このように色々としてくれるものである」という、人の習性を述べているのでしょう。「かへりごと」は「返礼」。「夜になして」は「夜になるのを待ってから」の意でしょう。月の桂川を堪能したかったのでしょうか。「桂川、月のあかきにぞ渡る」は「月光の明るい桂川を渡った」で、連体修飾語が名詞の後に来ている形であろうと思われます。こういう例を時々見かけるような気がします。この時代、桂川には橋が架かっていたのか気になったのでネットで調べたら、「836年に今の渡月橋より上流に橋が架けられたが水害で度々流された」とのことだったので、貫之一行は橋を渡ったのか、それとも、浅瀬を歩いて渡ったのか、何とも言えません。「さらに+否定語」の組み合わせは、いわゆる「副詞の呼応」というやつで、たとえば「そんなこととはつゆ知ら」のように、現代語でも生きて使われています。したがって「さらに変わらざりけり」は「いっこうに変化していなかった」となります。ここの「この川(桂川)、飛鳥川にあらねば、淵瀬さらに変わらざりけり」はどういう意味なのか? おそらく古歌に「飛鳥川の淵瀬が変化した」と詠まれていたのでしょう。飛鳥川なら淵瀬の深さは変化するが、この桂川では淵瀬の深さは変わらない、と言いたかったのであろうと推察されます。色々な教養がないと古文にはついていけない、ということなのでしょう。

Then a certain man gave us a feast at Shimasaka, on our way to Kyoto from Tosa.  We accepted it with great thanks.  A person is prone to give a greater care to people when they are coming back to Kyoto than when they are going out from Kyoto.  I didn't forget to hand him a return gift.  We are not in a hurry.  Intending to enter the capital after sunset, we saw a big and beautiful moon.  Thinking about how grateful we were to come back here, we went across the Katsura River in a bright moonlight.  Some men in our party said, "Contrary to the Asuka River, there are no differences in this river from what it used to be."  One of them composed a poem :

S先生:まずまずではありますが細かい所の言い回しについて指摘しておきたきこと が複数個所あります。第1文の a certain man「ある人」はこれで正しい。話者は知っているが聞き手は知る必要がないので敢えて具体的に言わない場合の「ある人」が a certain man です。話者も聞き手も共にボンヤリとした「ある人」なら a some man とか someone を使うことになるでしょう。第3文の give a greater care to people がいけません。care は不可算名詞なので不定冠詞をつけるべきではありません。care を使うなら give+care+to ~ よりも take +care+of ~ のほうがしっくり来ると思いますので、take better care of people に変えてみてはどうでしょうか。第7文主節の went across ですが、橋を渡ったのであればOKです。しかし、川の浅瀬を歩いて渡ったのであれば waded across にするほうが良いかもしれません。第8文主語 Some men は、話者も聞き手も誰だったのか具体的には分からないから some が使われていますね。それに続く発言内容の Contrary to ~「~に反して、~とは逆に」はここでは不適切です。この熟語は She acted contrary to the rules. のように強い意味で使われます。したがってここでは Unlike the Asuka River くらいでちょうど良いでしょう。それに続く there are no differences in this river from what it used to be は英文として間違ってはいませんが、何となく冗長な感じがします。this river is just as what it used to be「昔とちっとも変っていない」としましょう。

While we were going up to Kyo, a certain man was kind enough to treat us at Shimasaka.  How thankful we were to him !  People are more considerate to you whe you are coming back to Kyo than when you are going down to Tosa.  Needless to say, we gave him a present in return for his kind act.  Since we were going into Kyo after sunset, we did not have to make haste.  Meanwhile, the moon began to rise.  We crossed the bridge over the Katsura River while the moon was still shining.  Some men in our party said, "Since this is not the Asuka River, it is deep and rapid as it used to be."  One of them composed the following poem.

N君:S先生の第3文に出てくる you の使い方が分かりません。

S先生:このように突然出てくる you には面食らいますよね。この you は「一般の人」を表します。You can't judge a book by its cover.「人はうわべでは分からない」。話者や筆者が何かの具体的な話をしていて、突然それに関係した一般論を挟みたくなることがありますが、そういう時にこの you が登場するのです。