kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第531回 2022.8/31

N君:前回までの旧約聖書に続いて、今回からは「新約聖書の金言 Maxims from the New Testament 」を3回程度やります。

(1) Love your enemies, bless them that curse you.

ここに登場した your や you は共に複数です。もし単数なら、所有格は thy、目的格は thee となります。「汝らの敵を愛し、汝らを呪ふ者たちを祝福せよ」ですが、なかなかこのような行動は取れないと思います。

(2) When thou doest alms, let not thy left hand know what thy right hand doeth.

thou は2人称単数主格、thy は2人称単数所有格です。do の語尾に2人称単数の時の(e)st  がくっついて doest になっています。この点は兄弟言語のドイツ語と同じで、You learn German. をドイツ語では Du lernst Deutsch. と表現します。また do の三単現が doeth です。alms は「貧民救済のための施し物」の意。「汝施しをなす時、右手のなすことを左手に知らしむなかれ」ですが、これは「善行は人知れず行ってこそ価値がある」の意でしょう。

(3) Consider the lilies of the field, how they grow ; they toil not, neither they spin.

toil「骨折ってせっせと働く」、spin「紡(つむ)ぐ」。「野のユリのいかにして育つかその様を思へ、労せずまた紡がざるなり」ですが、これは「外見を飾ることに思い煩うな」の意味です。女性にとっては、そういわれてもねえ、という感じでしょう。

(4) Enter ye in at the strait gte : for wide is the gate, and broad is the way, that leadeth to destruction, and many there be which go in thereat.

ye は thou=you の複数形、関係代名詞that の先行詞は the gate および the way、there be は there are です。lead の三単現が leadeth です。関係代名詞の who を使うべきところで which が使われていますね。thereat は from there の意です。最後のところは there are many people who go in from there. という感じでしょう。「狭き門より入れ、滅びに至る門は大きくその道は広くこれより入る者多し」ですが、この格言はは聞いたことがあります。

(5) Strait is the gate, and narrow is the way, which leadeth unto life, and few there be that find it.

格言では強調のためなのか主語ではなくて述部が前に出ているものが多い気がします。which の先行詞は the gate および the way です。最後のところの few there be that find it. は there are few that find it. のことでしょう。昔の英文は単語の並び方が独特ですね。「命に至る門は狭くその道は狭く、これを見出す者は少なし」で、(4)と似たような意味なのでしょう。ちなみに straight「まっすぐの」に対して発音全く同じの strait は海峡の意味であり the Straits of Doverドーバー海峡」のように使いますが、ここでは形容詞「狭い」として使われているようです。

(6) Blessed are the poor in spirit.

blessed を[blest]と発音している人が多いですが正しくは[ble'sid]です。この文は The poor in spirit should be blessed. の意であって、心の貧しい者は祝福されるべきだ、から転じて「幸いなるかな心貧しき者」と訳されています。浄土真宗親鸞上人の悪人正機説「善人猶(なお)もて往生を遂ぐ、況(いは)んや悪人をや」に通じている気がします。

(7) The tree is known by its fruit.

「木はその果実によって知られる」ですが、これは「枝ぶり・大きさのような外見に迷わされるな、果実をもって価値を決めよ」みたいな意味なのでしょう。

(8) Not that which goeth into the mouth defileth a man ; but that which cometh out of the mouth, this defileth a man.

2回出てくる that which は what のことです。defile「汚(けが)す」。defile の三単現が defileth であり、come の三単現が cometh です。最後のところに出てくる this は直前の名詞節を受けています。「口に入るものは人を汚すに非ずして、口より出づるもの人を汚す」ですが、食中毒・大酒飲み・脂肪太り・糖尿病なんかはこの格言に当てはまらないと思います。

(9) If the blind lead the blind, both shall fall into the ditch.

盲目者が盲目者を誘導すると二人とも穴に落ちるだろう、という意味でしょうが「無知なる者が無知なる者の手を引けば二人ながら穴に落ちん」となります。ditch は穴というよりは用水路とか溝とかの意味です。似たような単語に gutter がありますが、gutter は ditch よりは小さな溝で、道路沿いにある小溝は gutter です。

(10) If thou wilt be perfect, go and sell that thou hast, and give to the poor, and thou shalt have treasure in heaven.

thou は2人称単数主格、主語が2人称単数なら will は wilt となり shall は shalt となります。hast=has であり、またここでは that=what です。「汝全たからんと欲せば行きて汝の持てる物を売り貧しき者に与えよ、されば汝財宝を天にて得ん」という訳文になるわけですが、こんなことは現実には難しいですよね。