kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第533回 2022.9/2

N君:S先生から頂いた「新約聖書の金言 Maxims from the New Testament 」を取り上げています。このテーマは今回で終わりです。

(21) Be swifter to hear, slow to speak, slow to wrath.

swift「速い」は quick や fast に比べて堅いが fleet に比べれば口語的な単語です。ちなみに fleet には「艦隊」の意味もあります。wrath は「怒り」ですがここでは動詞として使われているようです。「聞くに速やかに、語るに遅く、怒るに逸(はや)るなかれ」。

(22) The tongue can no man tame ; it is unruly evel, full of deadly poison.

tame「飼いならす」を後置して目的語の The tongue を前にもってきていますね。これは強調のためです。主語は no man でしょう。そのあとの it は the tongue を指していると考えられます。unruly「言うことをきかない、手に負えない」や deadly「命にかかわる」はいずれも語尾が -ly なので副詞のように見えますが、れっきとした形容詞です。同類としては lonely, kindly, friendly のような形容詞があります。「舌は御しがたく、手に負えぬ悪にして、死の毒に充つ」ですが、要するに「口は災いのもと」の意でしょう。

(23) Unto everyone that hath shall be given, and he shall have abundance ; but from him that hath not shall be taken away that which he hath.

hath = has,  that which = what です。冒頭の Unto everyone that hath shall be given には主語が欠落していますが、S先生によれば「時にはこんなこともある」とのことでした。「持てる者全てには与えられ豊かにならん、されど持たざる者はその持てる物をも取らるべし」とのことですが、資本主義社会における格差拡大を言い得て妙、です。

(24) No man can serve two masters.  Ye can not serve God and Mammon.

ye は thou=you の複数形です。mammon「強欲」は、悪や腐敗の根源としての富、という意味です。「人は二人の主に仕ふること能はず、汝ら神と強欲に仕ふること能はず」とは言うものの、神社仏閣を修理する時にお金を出すのはお金持ちですからね。

(25) Give not that which is holy unto dogs, neither cast ye your pearls before swine, lest they trample them under their feet and rend you.

that which = what,  ye =2人称複数主格 = you ,  swine「ブタ」、trample「~を踏みつける」、rend「~を引き裂く」。lest は古い接続詞で「~するといけないから」くらいの意味です。「聖なるものを犬に与ふるなかれ、真珠を豚の前に放るなかれ、それらを足元に踏みつけ汝らの心をかき乱す恐れあれば」です。日本語では「猫に小判、豚に真珠」でしょうか。豚 vs 真珠 という組み合わせが日英で共通しているのは面白い偶然です。Cast not your pearls before swine.

(26) What is a man profited, if he shall gain the whole world and lose his own soul ?

冒頭の What の前に By を補うと分かり易くなると思います。男は何によって利益を得るのか、もし彼が全世界を手に入れて自身の魂を失うならば。逐語訳ではそうなるのですがもっとくだいて訳すと「人もし天下を取るとも己が霊魂を失はば、何の利するところやあらん」となります。正しい精神の働きを失ってしまっては天下人となっても虚しいだけだ、という意味でしょう。プーチンに聞かせてあげたいですね。

(27) If I have not charity, I am nothing.

無冠詞の something には「たいそうな良い事、重要人物」のような意味があって大修館の辞書には It is something that nobody got hurt.「誰もケガしなかったのは良かった」という例文が出ていました。同様に無冠詞の nothing には「どうでもいい事、つまらない人物」の意があります。大修館の辞書には She gets angry over nothing.「つまらないことで怒る」という例文が出ていました。ゆえにこの格言の中に使われた nothing もその線で訳すべきで「我に慈悲の心なくば我は取るに足らぬ者なり」となります。