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文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第710回 2023.2/25

古文研究法101-2 枕草子より:五月雨(さみだれ)の短か夜に寝覚(ねざ)めをして、いかで人より先に聞かむと待たて、夜深くうち出でたる声の、らうらうじう愛敬(あいぎゃう)づきたる、いみじう心あくがれ、せん方なし。六月(みなづき)になりぬれば、音もせずなりぬる。すべて言ふもおろかなり。夜鳴くもの、すべていづれいづれもめでたし。乳児(ちご)どものみぞ、さしもなき。

梅雨の短い夜にふと目を覚まして、ホトトギスの啼き声をなんとかして人より先に聞こうとして自然と待っているうちに、夜更けてから啼き出したホトトギスの声が可愛らしく情緒豊かなので、ひどく心が惹きつけられてどうしようもない。でも6月になるとパタッと啼きやんでしまう。これは昔から当然のことだ。夜鳴くものは皆どれも結構なものばかりだが、赤ん坊だけは例外だなあ。

N君清少納言さんのホトトギス話が続いています。僕は以前から「それの何が面白いの?」と感じています。古文の先生がとても興味深そうに音読したり解釈したりしているのを、キョトンとして眺めている僕が居るのです。僕と同じ感想を持っている生徒はきっとたくさん居ると思いますよ。受験に必要な科目なので一応やりますが、どうもいま一歩興味が持てないと言いますか、、、、。「待たれて」の「れ」は自発「る」連用形です。「る」「らる」は未然形接続で活用表の一番右にあって、尊敬・可能・受身・自発を表しますが、自発は珍しい気がします。「言ふもおろか」というのは、口に出して説明するのも意味がないくらいに当たり前で当然、というくらいの意味です。

When you happen to wake up at a short night in the rainy season, you will be inclined to stay awake for the first twittering of little cuckoos.  Intending to hear them chirp earlier than anyone else, you will sit on your bed as a matter of course.  They have an attribute to exchange greetings from late at night.  You will be very attracted by their cute and emotional voice.  But, hardly has June come when they stop singing all at once.  People have been accustomed to accepting this mysterious phenomenon since a long ago.  Any creatures which chirp and twitter at night whether they are birds or insects, make you happy except a baby.

S先生:ちょっと硬い所もありますが概ね良いでしょう。第5文では Hardly A when B.「AするやいなやBする」 の形がでました。Aの中では否定詞 Hardly に引っ張られて助動詞が前に飛び出してきていますが決して疑問文ではなく、強調された形の一つ、と認識しましょう。またBの中では stop to sing「立ち止まって歌う」ではなくて stop singing「歌うのをやめる」の形が使われました。ここは気を使うポイントです。第6文では be accustomed to doing 「~するのに慣れる」の形が出ました。この to は不定詞ではなくて前置詞なので、次に来るのは名詞と決まっています。だから動名詞 doing が使われていますね。stop singing も be accustomed to doing も正しく使うことができました。これらは受験の文法問題では頻出の項目です。

I sometimes wake up unexpectedly at a short time in the rainy season.  I would like to hear a cuckoo chirp earlier than anyone else.  It begins to sing before daybreak.  I feel very charmed with its sweet and elegant chirping.  But naturally, it stops singing in June.  It is pleasant to hear birds and insects singing at night, but the cries of babies are unbearable for me.

オリジナル勉強風呂Gu 第709回 2023.2/24

古文研究法101-1 枕草子より:祭のかへさ見るとて雲林院(うりんゐん)・知足院などの前に車を立てたれば、郭公(ほととぎす)忍ばぬにやあらむ(な)くに、いとようまねび似せて木高(こだか)き木どもの中に諸声(もろごゑ)に鳴きたるこそ、さすがにをかしけれ。郭公はまほ、さらに言ふべきかたなし。いつしかしたり顔にも聞こえたるに、卯の花・花橘などにやどりをして、はた隠れたるもねたげなる心映(こころば)へなり。

賀茂祭勅使の帰りの行列を見ようというわけで、雲林院・知足院などの前に車を停めていると、ホトトギス黙っておれないのか確かによく啼いているのだが、(ホトトギスではない他の鳥が)たいそうよく似せて高い木立ちの中で声を合わせて鳴いているのがとても趣深い。が、何といってもホトトギスのほうが言いようもなく素晴らしい。(ホトトギスは)早くも得意顔で啼いているように聞こえる。この鳥は卯や橘の花に宿って半分隠れて啼いているのも心にくい気使いだ。

N君:挿入句を紹介するための一節です。「郭公も忍ばぬにやあらむ啼く」は本来「郭公も啼く」で充分なのに、筆者の感想「忍ばぬにやあらむ」が挿入されていて、これが古文特有の言い回し、というわけです。「かへさ」は「勅使の帰り行列」ですがこれは知っておく必要はありません。副詞「いつしか」は重要単語で「早く早く」とせかす感じ。

When I stayed in an ox carriage in front of Urin-in or Chisoku-in in order to see the return procession of the delegation from Palace to Kamo-shrine, I heard little cuckooes chirping eagerly.  I found it interesting that other birds were singing all together on high trees imitating the little cuckooes.  It is true that they might sing beautifully, but I think the cuckooes are much better singers.  These days they seem to chirp proudly.  In addition it is tasteful for them to sing concealing themselves slightly behind the flowers of deuzia or tachibana.

S先生:第1,2,3文に出てくる cuckoo の複数形は cuckooes ではなくて cuckoos です。第1文は主節に比べて When 節が重いので、when 節を後置するほうが良いでしょう。軽前重後はあらゆる場面で考慮に入れなければならない英語の法則みたいなものです。このほかは自然な流れで良い作文ができています。さて、以下に示した私の作文においては、ホトトギスを一羽にしてみました。そのほうが味があるような気がしたので。

I stopped my ox-drawn carriage in front of Urin-in or Chisoku-in to see a procession of the Imperial messengers coming back from the Kamo Festival, when I heard a little cuckoo chirp merrily as if it could not keep silent.  To my delight, other birds began to chirp to the cuckoo in the grove of high trees.  They seemed to imitate its singing, but they were much inferior.  The cuckoo seemed to sing proudly and rapturously.  How elegant it is that this bird has a habit of singing half hidden in deuzia or tachibana !

N君:カンマで区切って when 節を後置すると「~だった、そうしてその時~」と訳し下げる感じになる、と以前教えてもらいました。それが第1文で使われています。

S先生:そうです。N君に限らず生徒はだいたいそのことを知っています。なのに作文となるとなかなか使えていません。どんどん使って慣れていきましょう。

N君:先生の第2文に出た chirp to the cuckoo は「ホトトギスに合わせて啼く」でよいですよね。

S先生:そうです。この to も生徒はほぼ皆知っていますが、作文では使えていないことが多いです。どんどん使っていきましょう。sing to the piano「ピアノに合わせて歌う」の to です。

 

オリジナル勉強風呂Gu 第708回 2023.2/23

古文研究法100-2 宇津保物語より:(帝から中納言への御言葉)「この家、かく広き所なるまだ私の家なども無かんなり、これを文所(ふどころ)にして、かの始祖、殊(こと)に隠されたらむ手など習はれによかんべかんなる。かの御子(みこ)ともろともに琴など弾きつつ聞かせ給へ」とて賜(たま)ふ。

「この建物はこんなに広い所だが君はまだ若くて自分の家も持っていないだろうから、君にあげよう。この家を書物の貯蔵場所にすると、君の御先祖もし特別に隠しておいた曲でもあってそれを君が練習するようなことがあれば、この家はもってこいだろうよ。君のあの息子さんと一緒に琴など弾いて息子さんに聞かせてあげなさい」と帝はおっしゃった。

N君:「はさみこみ」というにはちょっと短めのものを「挿入句」と呼んでいて、今回はその挿入句の実例です。「かく広き所なるを」の「を」は逆接で「広い所だが」となります。次が挿入句でその末尾にある「なり」は断定ではなくて伝聞推定。「手」は「琴の曲」です。「かの始祖の」の「の」は主格。「隠されたら手など習はれに」に連続して出てきた「む」は仮定婉曲。「む」は主語によって「推量、意志、適当勧誘」のような意味になることが多い助動詞ですが、このように仮定婉曲の場合もあって、意味の広い助動詞です。

The Emperor said to Chunagon, "I will give you this large house because I suppose you, a young successor of Japanese harp, can't have your own house yet.  You can use this house as a store-place of music scores or their related books.  If you find a special score your ancestors left in secret, you will find this house ideal enough to play it.  You can let your son hear your play as much as you like."

S先生:ウン良いですね。自然な流れが出来ています。

The Emperor said to Chunagon, "Since you are not old enough to have your own house yet, I will present you with this large building.  If you use it as a library, you will find it the most suitable place to practice playing pieces of music your ancestors treasured secretly for you.  Why don't you play koto together with your son to let him know they have left you such beautiful pieces ?"

オリジナル勉強風呂Gu 第707回 2023.2/22

古文研究法100-1 宇津保物語より:かかることを内裏(うち)聞こしめして、後院(ごゐん)にとて年ごろ造らせ給ふ、大宮の大路よりは東(ひんがし)、二条大路よりは北に、広くおもしろき院あり、それを中納言召して賜(たま)ふとて宣(のたま)ふ。

このような事情をはお聞きになり、数年前から自分の別荘として造営させていた家を ー その家は大宮大路の東、二条大路の北、にあって、広くて興趣ある家なのだがー 中納言を召し出してこの家を与えようということで、次のようにおっしゃった。

N君:前回検討した「はさみこみ」の例を今回も見てみよう、という趣旨で選ばれた一節です。「帝が中納言に家を与えた」という簡潔な構成の中に、「これこれこういう家を」という説明が割って入った形になっています。平安時代の頃の文章というのはまだ未発達だったために、このような分かり難い構成が残っていた、ということなのでしょうか? それは謎ですが、現代の文章からすると「恐ろしく理解し難い文章」という感じがします。「内裏」はここでは「帝」の意、「後院」は「別荘」の意です。「年ごろ」は「数年来」「数年前から」の意味です。

Hearing these circumstances, the Emperor summoned Chunagon to give him the house which was just being built as His exclusive villa from several years ago.  Located along the eastern side of Omiya Main Street and along the northern side of Nijo Main Street, it was tastefully built in a wide lot.

S先生:第1文関係代名詞節の中身の時制が過去進行形になっていますが、ちょっと違和感があります。「数年前から造営が始まっていて、この話をしている時点ではすでに完成していた別荘」というふうに解釈して、時制が過去完了にするのが自然で、となると ago はダメで before になります。from も since に変えましょう。結局、which had been built as His exclusive villa since several years before. とするのが良いでしょう。第2文は前半の分詞構文がやや重たいので、主節を前に出して分詞構文を後置するのが良いかもしれませんね。また「~通り」は Wall Street「ウォール街」のように無冠詞です。「大宮大路」をついつい the major Omiya Street と書いてしまいそうですが、無冠詞の Omiya Main Street くらいのほうがよいでしょうね。今回の作文の構成にはこれといって問題となる所もないので、私もN君と同じ構成で作文してみました。

Hearing these circumstances, the Emperor summoned Chunagon to tell him that He would give him the villa which had been being built since a few years before.  It was large and elegant enough, located in the east of Omiya Main Street and in the north of Nijo Main Street.

オリジナル勉強風呂Gu 第706回 2023.2/21

古文研究法99 源氏物語若紫上より:皇子(みこ)たちは春宮(とうぐう)をおき奉りて、女宮たちなむ四所おはしましける。その中に藤壺と聞こえしは、先帝の源にぞおはしましける、まだと聞こえさせし時、参り給ひて、高き位にも定まり給ふべかりし人、とりたてたる御後見もおはせず、母方もその筋となく、ものはかなき更衣腹にてものし給ひければ、御交(まじ)らひのほども心細げにて、太后尚侍(ないしのかみ)を参らせ奉り給ひて、傍(かたはら)に並ぶ人無くもてなし聞こえなどせしほどに、気押(けお)されて、帝(みかど)も御心のうちに、いとほしきものには思ひ聞こえさせ給ひながら、(お)りゐさせ給ひにしかば、(かひ)なく口惜しくて、世の中を恨みたるやうにて亡(う)せ給ひにし、その御腹の女三の宮を、あまたの御なかに、すぐれて愛(かな)しきものに思ひかしづき聞こえ給ふ。

帝のお子様方は皇太子殿下を別にして皇女が4人おいでになった。その皇女の中で、藤壺という名の方 ー 先帝の皇子で源の名をもらって臣籍に降下した光源氏様の娘で、この方は帝がまだ皇太子でおられた時に、入内して皇后にもおなりになるはずだった御方なのだが、この方にはこれといって頼りになるバックもなく、この方の母方のほうもこの方が皇后となるほどの家格がない更衣程度の家柄だったので、交際の具合も心細そうで、皇太后自分の娘を尚侍に取り立ててそばに並ぶ者のないくらいに羽振りよく引き立てたものだから、この方は圧倒されてしまい、帝も心の中ではこの方のことを可愛らしい人だと思いながらも譲位なさってしまったので、この方は皇后に昇格するなどということもなく、つまらない結果となって、世の中を恨むような具合になったままお亡くなりになった方 ー この藤壺という方に生まれた第3皇女を、帝はたくさんあるお子たちの中でも特にお気に入りで、大切にお育てなさる。

N君:これは恐ろしい文です。結局この文は「帝は藤壺との間に生まれた第3皇女=女三の宮 を特に可愛がった」という簡潔な内容なのですが、藤壺という女性に対する長々しい説明【~】が文の途中に挟み込まれている、という構造になっているのです。これを「はさみこみ」と呼んでおり、英語で言えば「関係代名詞の非制限用法」みたいなものです。ただしこの文では、その挟み込みが異様に長くて手に負えません。その上、古文では定番の「書かれないまま主語が移り変わる」という現象がバンバン起きているので、解釈が困難です。はっきり言ってこの文を正しく解釈することは今の僕には全く無理なので、今回は鑑賞にとどめさせて頂きます。「春宮」「坊」は「皇太子」の意で、英語では Crown Prince です。「参り給ひて」が大問題です。「参る」というのは基本的に「卑所から貴所へ移る」の意なので、ここでは「入内(じゅだい)なさって」くらいの意味。ちなみに「参る」の反対が「まかる」になります。「高き位にも定まり給ふべかりし人の」の「の」は逆接で、「皇后にもなってしかるべき人だったのだが」という意味になります。次の「太后の~」の「の」は主格。「降りゐさせ給ふ」は「譲位なさる」。「効なく」は「皇后の位に昇ることもなく」です。「かしづく」は「養育する」で英語なら cherish です。

The incumbent Emperor has four daughters except the Crown Prince.  Among the four He favored the third lady whose mother was known as Fujitsubo.  She was a daughter of Hikaru-Genji, who left the Palace and descended to a subject.  Although he was a son of the ex-Emperor, he was given a name of Minamoto and deprived of a membership of the Imperial Family.  His daughter Fujitsubo was loved at first sight by the incumbent Emperor and was expected to become an empress.  But she did not have any dependable patron.  Furthermore, her mother was from a relatively low rank family, a status of Koi.  Therefore she seemed to have no confidence in herself when she associated with the members of aristocracy.  Just then the mother of the Emperor promoted her own daughter to the post of Naishinokami and supported her as if no one could compare with her.  This is another reason why Fujitsubo was overwhelmed.  In addition, the Emperor abdicated the throne, while He loved Fujitsubo inwardly.  As a result of these unlucky events, she was never raised to the rank of Empress.  Finally, not bathing in brilliant honor at all, she passed away as if she seemed to have a grudge against her own fate.

S先生:全体的に、可もなく不可もなし、といった感じで、淡々と説明されています。今回は本文があまりにも常軌を逸しているため、英語表現どうこう、ということではなくて、情報を整理して過不足ないように伝える、ということでよいと思います。第4文には deprive A of B「AからBを奪う」が出ました。これはもともと They deprived him of his freedom. という能動態の文章だったのが、受動態になると He was deprived of his freedom. になります。本文でも he was deprived of a membership of the Imperial Family.  となっていて受動態の文章になっています。さて以下の私の作文では、できるだけ簡潔に表現するように心がけてやってみました。

The Emperor had four Princesses except the Crown Prince.  Among them Princess Fujitsubo was a daughter of HikaruGenji, Prince of ex-Emperor, who was lowered to the rank of a subject with the name of Minamoto.  She was to become Empress when the Emperor was still a Prince.  But she had no particular supporter.  Moreover, her mother's lineage was not so high as to make her become Empress.  The rank Kohi was the highest she could get, and so she didn't have so many close companions to associate with.  What was worse, the Empress Dowager promoted her daughter to the post of Naishinokami and treated her carefully as if she were a valuable treasure.  Fujitsubo was completely overwhelmed.  Loving Fujitsubo in His heart, the Emperor zbdicated, so that she was  destined not to become Empress and passed away holding a grudge against the world.  It was the third Prince among the four that the Emperor loved most.  He raised her with the greatest affection.

N君:第7文冒頭の What was worse は「もっと悪いことに」みたいな意味ですか?

S先生:その通り。In addition to ~ の negative 版みたいなものですね。

オリジナル勉強風呂Gu 第705回 2023.2/20

古文研究法98-2 建礼門院右京大夫集より:我ならで誰(たれ)かあはれと水茎(みずぐき)の 跡末の世に残るとも

この書き物がもし後世まで残って他人が見ることがあったとしても、いったい誰が興趣を感じてくれるだろうか、本当にしみじみと見る者は私以外にはおそらくあるまい。

N君建礼門院右京大夫の難しい歌です。「水茎」は「筆」の意味なので、「水茎の跡」は「書物」ひいては「今自分が執筆しているこの建礼門院右京大夫集」を指しています。水茎の「み」に「見」を掛けていて「見ず」となります。ここに反語の気分が漂っていますがそれを見抜くのは至難の技です、少なくとも僕には全く分かりません。「し」は強意の副助詞。全体を通すと「私以外にはこの書物をしみじみと見る者は居ない、もしこの書物が後世に残っても」となります。掛詞や反語や譲歩節を含む難しい歌で英作文するとなるとどういう構成がよいのか悩みます。

Who on earth will be able to sympathize with my sentences and poems, no matter how long they will remain in the future to be read by others ?  It will be no one but me who can be for them inwardly.

S先生:構成はこれでOKですが少しだけ気になる部分がありました。第1文の in the future は不要でしょう。その意味は既に how long の中に含まれているからです。また第2文の be for them「私の書いたものに賛成で」という言い方はちょっとずれている気がするので、appreciate them 「私の書いたものをちゃんと味わう」としてみてはいかがでしょうか、こっちの方が原文に近いと思います。

Who in the world will read this writing of mine in future years and find it interesting and significant ?  Whoever but me will appreciate this with deep emotion ?

オリジナル勉強風呂Gu 第704回 2023.2/19

古文研究法98-1 建礼門院右京大夫集より:家の集など言ひて歌詠む人こそ書き留どむことなれ、これはゆめゆめさにはあらず。ただあはれにも悲しくも何となく忘れ難くおぼゆる事どもの、その折々ふと心におぼえしを、思ひ出でらるるままに、我が目ひとつに止(や)とて書き置くなり。

private な歌集などと称して歌人たちは歌を記録するのであるが、私のこの文章は決してそういうたぐいのものではありません。ただしみじみと、あるいは悲しく、あるいは何となしに忘れ難く感じる事で、その折々に心にふと感じた事を、自然に思い出されるに従って自分独りが見ようというので(他人に読んでもらいたいわけではなくて)書き置くのです。

N君:係り結びがそこで終わらずに文が続いていく場合は「逆接」で、これは今まで何回も出てきました。「並びの修飾」がここでも出ました。(1)あはれにも、(2)悲しくも、(3)何となく忘れ難く、の3者が「おぼゆる事ども」に掛かっています。「我が目一つにて止むとて」は、「他人に読んで貰いたい訳ではなくて自分独りであとから読み返したいという目的で」の意味。

A number of poet compile private anthologies to record their own poems.  This book, however, is never equal to such kinds of works.  I am only writing at random what comes home to me according to the order in which I recall various memories spontaneously.  It contains sad and unforgettable things.  I write down these things in order to read again by myself, not to have others read.

S先生:もはや英文の構成自体について言うことはないので、今日はちょっと細かい指摘をします。第4文 It contains sad and unforgettable things.  は何の変哲もない普通の正しい文章なのですが、sad and unforgettable things の修飾部分が重くてうっとおしい、という感覚を持ってもらいたい。ここは It contains things sad and unforgettable. というふうに形容詞を後置することを考えて欲しい。軽前重後ですね。第5文の 主節+in order to do, not to do. という文章はこれで正しいのですが、後半の not to do と対比するためには in order を除外して単に to do, not to do. とするほうが良いです。この辺はかなり細かいことなので、あまり気にする必要もありませんが、少しでも上を目指すなら知っていてもよいことです。

There are many poets who compile their own anthology.  These documents of mine are quite different from theirs.  I am going to record what I have felt sad and unforgettable, what I have happened to think deeply in my heart, and so on as they come to my mind I will record them again some day in the future.

N君:先生の第3文末にある as they come to my mind はどういう意味ですか?

S先生:as は「~のままに」くらいの意味で、すぐ次の they は前出の what 節二つを指しています。したがって「悲しく忘れ難くたまたま心に深く刻まれた事柄たちが、私の心に去来するままに」くらいの意味になります。