kn0617aaのブログ

文系科目ダメダメな中高生・浪人生のための英作文修行

オリジナル勉強風呂Gu 第277回 2021.12/20

帚木14:かたはしづつ見るに、(中将)「よくさまざまなるものどもこそ侍りけれ」とて、心あてに(中将)「それか、かれか」など問ふ中に言ひ当つるもあり、もてはなれたる事をも思ひ寄せて、疑ふもをかしとおぼせど、こと少なにてとかく紛らはしつつ取り隠し給ひつ。

中将はそれらの手紙をあれこれ取り上げてはちょっとずつ見てみる。「いやはやそれにしてもずいぶんいろんなのがありますねえ」、そんな事を言いながら、この手紙はなにがしからのだろうかな、そっちのは誰それに違いない、などと、あてずっぽうに尋ねてくるのを聞いていると、図星のこともありまるで的外れのこともありで、源氏は可笑しく思ったが、それでもほとんど口を開かず、なにやかやとごまかしてしまいにはとうとう取り隠してしまった。

N君百人一首No.29 凡河内躬恒(おほしこうちのみつね) :「心あてに折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる白菊の花」にも出て来る「心あてに」は「あてずっぽう」の意。英訳でどう料理するかが考え所です。

The General picked up and glanced at the letters one after another.  He said, "What various kinds of letters here are !" and guessed the sender of each letter.  Hearing his conjectures, which were true in some cases and wide of the mark in other cases, Genji accepted his earnest remarks favorably but hardly responded to them.  He evaded his serious questions and finally concealed the letters behind him.

S先生:だいたい良いのですが第2文の here are と the sender of each letter は不自然です。here are は you have のほうが自然だし、the sender of each letter は who had sent the letters のほうが自然です。第3文の be wide of the mark「的はずれで」はなかなか高級な言い方です。wide はこの場合は副詞です。辞書には The arrow fell wide of the mark.「的をそれて落ちた」が出ていました。第3文の evade は「避ける」ですね。今日は難し目の単語・熟語を使ってきましたね。

Reading this and that from among those letters, Chujo said, "Oh, you do have a variety of letters !"  And he hazarded a guess that this must be from a certain lady and that from Lady so and so.  Sometimes he guessed rightly and sometimes beside the point.  Though Genji was greatly amused, he hardly talked anything and would let out no secrets, evading Chujo's questions.

N君:第1文の from among のように前置詞が重なっている形には抵抗があったのですが最近慣れてきました。 do は一般動詞の前に置かれて強調を表しているのでしょうか、「なんとたくさん持ってるね! 」みたいな語感でしょう。 第2文の hazard a guess that ~「~という推測を一か八か言う」という言い方は感動的でした。 単に動詞の guess を使うよりも hazard a guess を使うほうが「あてずっぽう」の感じが出ますね。 第3文の beside the point は wide of the mark と同じような感じなのでしょう。 第4文の would は過去の強い意志を表していて「どうしても秘密を明かそうとはしなかった」の意と思います。

S先生:だいたい当たってます。 最近分かってきたね。 もう一つ追加しておくと、第1文の a certain lady「ある女性」があります。 筆者あるいは話者(ここでは中将)が「本当は名前を知っているけれどあえて伏せる場合」に certain を使います。 知らない場合は some でした。 この件については第269回でお話しました。

さて今日は久しぶりの英作談義をやりましょう。さっきN君が触れていた「二重前置詞」について少し考えてみましょう。from under the desk「机の下から」のような使い方を二重前置詞と呼んでいます。stand away from the desk「机から離れて立つ」は、副詞 away の後に前置詞 from が来たのであって二重前置詞ではありません。二重前置詞のほかの例を見てみましょう。since the war「戦時以来」に対して since before the war「戦前以来」。until evening「夕方まで」に対して until toward evening「夕つ方まで」。from these letters「これらの手紙全部から」に対して from among these letters「これらの手紙の中から(つまり残すものもあるの意)」。二重前置詞を使うことでより細やかな状況を表すことができるようになるでしょう。